ある日の風景

立ちくらみが起こると館ひろしを思い出すdapandaです。

ある日こういったお問い合わせをいただきました、
その内容は「ウエディングドレスを着て、写真を撮ってもらいたいのですが可能ですか?」
という内容でした。
俗に言う結婚式前に撮影する「前撮り」かなと思い打ち合わせに望みました、
その打ち合わせの日にいらしたのは、お問い合わせをいただいたTさんとお母様。
とても優しそうなお二人です。
色々とお話しをしていていくにつれ「ご新郎とはどちらで出会われたんですか?」とか、
「結婚式はどちらでされるんですか?」
と質問をしてみますが、
そういった質問にはなぜかTさんとお母様は答えてはくれません。
そして会話の中には新郎の姿がないのです。

そんな僕の気持ちを察していただいたのか、Tさんが口を開いてくれました。
「花嫁には憧れるんですけど、一緒になる人には迷惑をかけるので…」
「…結婚式ではないんです…ただドレスで写真が撮りたくて…」
そして横にいらしたお母様がその理由を話してくださいました。

Tさんは小さい頃から重い心臓の病を抱えていて、
つい先日、医師からもってあと数年と宣告をされたそうです。
落ち込むTさんに、そしてお母様は娘に何かをしてあげたい一心で、
色々と聞いたそうなのですが、しばらく口を開いてはくれなかったそうです。
しかしある日お母様に「ウエディングドレスが着たい」と言ったのだとか。
でもそれは結婚式でではありません。

心臓の病を抱えるTさん、お付き合いしている男性はいるそうなのですが、
結婚をしても相手が悲しい思いをするだけだから、
と結婚はしないと心に決めていたそうです。
「もう誰も悲しませたくないんです」
そして「でも憧れだったウエディングドレスを着て、その姿を父と母に見てもらいたい」
お打ち合わせが終わったあとにいただいたメールに書いてありました。

Tさんが楽しく撮影できるように、そしてみんなの想い出に残る写真が撮れるように、
僕に出来る精一杯のことをしよう、そう心に決めました。
そんな、撮影の前々日にお母様から連絡がありました。
「突然Tさんの具合が悪くなったので、撮影を延期してほしい」とのことでした、
色々なことが頭の中を巡り、あたふたと心配になっている僕にお母様は、
「あの子は大丈夫ですよ、そんなに弱い子じゃないですから」と。
Tさんはその言葉通り、数週間後には元気になりました。
改めて撮影日をいつにしようかとお見舞いを兼ねてご相談に行くと、
「もう自分一人でドレスを着て、写真を撮るのはやめることにしました」
と言われました。

彼女なりの何かの決心がついたのでしょう、
残念だけどその決心を受け入れようと僕が思った時、Tさんは言葉を続けました。
「その代わり大好きな彼との写真を結婚式でたくさん撮って下さいね」

Tさんが撮影日の前の突然の体調不良でダウンしたときに、
真っ先に駆けつけてくれたのはお付き合いしている彼だったそうです。
つらくてうなされている中ずっと一緒にいてくれた彼、Kさん。
そんな様子を見ていたお母様は口止めされていたのですが、
そのひたむきな様子に心を打たれ「ドレスを着て写真を撮る」
ことをKさんに話したそうです。
Kさんはその話を聞いて「Tの気持ちを察してあげられなかった」と悔やまれたそうです。
そしてもうTさんに寂しい思いはさせたくないとプロポーズすると決心したそうです。
その思いにTさんもうなずいたのだとか。

僕はまるで芸能記者のように、
TさんにKさんはなんてプロポーズされたんですか? って聞いたところ、
「道が続く限り、これからも一緒に手を繋いで歩いていこうね」
と言われたそうですヽ(´ー`)ノ 男の僕でも惚れてしまいそう('A`)

今ではTさんは奇跡的に心臓の病が改善に向かい、
調子が悪くなることも無くなったそうです。
きっとこれも愛の力なんでしょうね。

KさんとTさんは春に結婚式を迎えられます。
小さい頃から通いなれた小さな教会で執り行うそうです。
きっと春の風もお祝いしてくれることでしょうね。