さすが筒井の康隆先生です
【残像に口紅を】
筒井康隆 著
中公文庫
"あ"が使えなくなると、"愛"も"あなた"も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。主人公の小説家は、言語が消滅していくなかで、残された限りある言葉で物語は-世界をどう表現していくのか。
著者の究極の実験的長篇小説とのことです。
章毎に、一文字ずつ消えていくのだけれど
初めのうちは、消えた文字が何であったかを都度確認するほど全く自然に物語は進んでいくところが、さすが筒井康隆氏。消える文字の順は規則性を持っておらず、次は何が消えていくのか見当もつかず、期待と不安が交錯する。タイトルの意味が理解できた瞬間は、なんとも美しく切ない想いが胸をいっぱいにさせた。使えなくなった言葉を、他の言葉で表すことは、その言葉の柔らかさや情感が薄れていくことでもあり、また時には可笑しくもある。文字数が極限られたものになっていく終盤は、詩的にもなっていく。主人公の小説家が幼少時代の独白を始めるところで、言葉足らずの方がかえって言いたいことを表現できるのではないか、という発想に、小学生の頃、作文や詩を提出した時に添削してくれた先生の、言葉や文章を減らすことでよりよい表現が出来ると教えてくれたことを思い出す。
最後に残るものは何なのか。
私の最後に残るものは何だろう。そう、ちょっと恐ろしくもなるところは同じ筒井康隆著の【敵】と似た感想をもった。
兎にも角にも
作者の日本語表現の多様さには驚嘆するばかりです。
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