2026年3月23日(月)くもり
春が来る。
いや、すでに始まっている気もするが、
正直なところ、まだ寒い。
ママは暖房を入れ、息子は窓を開ける。
季節の認識に統一性はない。
むしろ、対立している。
川沿いの桜はまだ固い顔をしている。
ピンクになる気配だけチラつかせて。
膨らんではいる。
だが、咲かない。
なるほど。
焦らしてくるタイプか。
嫌いじゃない。
その姿、実に共感できる。
人間はすぐに咲きたがる。
結果を出したがる。
ホットヨガから帰って来ると体重計にのる。
数値はまだ沈黙を守っている。
だが、私は知っている。
この、今にも開きそうで開かない時期こそが
いちばん濃厚で、いちばん自由だということを。
蕾は、閉じているのではない。
内側に向かって、世界を準備している。
一方で、気の早い桜もいる。
まだ寒いというのに、勢いだけで咲いている。
心配にすらなる。
急ぐことが正解とは限らないのだ。
咲いた瞬間から、
すべては終わりに向かうのだから。
ーー なお、私はもう禿げてはいない。
ただし、フサフサでもない。
この曖昧な密度、
いわば蕾。
可能性の塊と言ってもいい。
なお、異論は受け付けない。
3月24日(火)晴れ
人間は、よく物を買う。
やる気と一緒に。
そして、モノを開封後、やる気はどこかへ行く。
ウォーキングシューズのインソールらしい。
「歩く」ための装備だ。
衝撃吸収とは肉球のようなものか。
なお、私は課金していない。
なるほど。
理屈は完璧である。
だがーー
使われた形跡がない。
私はただ、
ここに置かれていたのを見つけ、
思い出させてあげただけである。
ママはホットヨガに通い始めた。
体重計にのる回数も増えた。
意識は高い。
道具もそろっている。
覚悟だけが、
行方不明である。
しかし、私は急がない。
――継続という概念を、
人間より理解している自負がある。
なお、異論は受け付けない。




