今回も、当日、急遽予約を入れた歯科医院。

いわゆる割り込みなわけで、予約の5時から結構待たなければならないことは覚悟していた。

 

待っている間、診察室の中がちらちら見え、先生はじめスタッフがいるのが見える。

今日は院長の娘先生が治療に当たっていることが分かった。

 

ところが、だ。

名前を呼ばれ、診察台に座り、口中のうがい薬を渡されてブクブクしていると、背後で念入りに手を洗っている人がいるのが分かった。

あれ? 娘先生は今、隣の診療台で治療に当たっているのに。

ということは、手を洗っているのは……

近づいてくる足音で確信した。院長が今、診療室に登場したのだ。私の治療のために。

 

この歯科医院は、今や娘先生とその婿先生が治療に当たっているが、時々、本当に時々、院長がお出ましになる。


私は幼いころから本当に歯が弱かった。都合で何度も引っ越しし、そのたび違う歯科医院に通ったが、当時はどこにいっても歯科治療はとても痛く、嫌で嫌で仕方がなかった。

私は小学4年生のとき、今の家に移り住み、しばらくして家の近くにこの歯科医院が開院したため通うようになったのだが、ここで初めて「痛くない治療」に巡り合った。今でこそ、歯科の治療はどこに行っても痛くないのかもしれないが、当時の私は本当に救われた思いだった。

院長自身、歯科大を出てどこかで修業され、独立して建てた医院。若い頃から不愛想で口数の少ない先生だったが、痛みのない治療をしてくれさえすれば、そんなことどうでもよかった。

 

だから、院長にはとても感謝している。ただ、院長の「年齢」が気になるだけなのだ。


歯科治療という精密で集中力が不可欠な仕事、院長のお年からしたら、相当きついのではないか。それでもときどきお出ましになるのは、もしかしたら院長自身の「老化防止」のためなのではないか。そのために、おとなしそうな古手の患者を選んでる???

 

なあんて考えすぎか?

でもなあ、いつぞや急遽予約を入れたとき「院長でもいいですか?」と問われたことが引っかかる。あのとき「構いません」と言ってしまったことが、私を「選ばれし患者」にしてしまったのではないか。

 

ってくどいようだけど、院長には本当に感謝している。

 

 

 

 

 

 

あの人も 私も年を経 今となる

鞠子

 

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