「パ、色彩元珠(パステルオーブ)を、返すのれす! 誰なのれすか!?」

 色彩層(パステルワールド)の使者、ぱれっとがバッグから勢い良く飛び出した。

 色彩元珠(パステルオーブ)が奪われたのだ。ただごとではない。

「ウフフ。私は、ダークネスグリーン」

 そういうと、彼女は黒い宝石のような、暗黒元珠(ダークネスオーブ)を掲げた。
 一瞬黒いもやが広がると、彼女は暗黒元珠精(ダークネスガーディアン)の形態に変身した。
 胸元にGREENとロゴの入ったTシャツは消え、黒いレオタードのような姿になり、頭や背中から、大きな大根のような葉がバサっと一気に生える。

「ダークネスグリーン!」

 ぱれっとは叫ぶようにそう言うと、一歩後ろに退いた。一気に緊張が走る。

「これは頂いたわ、悪く思わないことね、パステルチェリー」

 桜色の色彩元珠(パステルオーブ)を握りしめ、ダークネスグリーンは冷たく笑った。

「ちょいちょーい! そうはイカのブルスケッタ!」

 そして、あらぬ方向から、変なことを言う声がそこにいる全員の耳に入って来る。

「かあらたちの言う通りだったわね」

 瀬々良木るりかが変身したパステルラピスは、瑠璃色大剣(ラピスブレイド)を両手で構え、そう言った。

「だましたな、ダークネスグリーン」

 続いて、穂ノ尾あかねが変身したパステルバーミリアンは、両の手に朱色鴛鴦鉞(バーミリアンナックル)を握り、メラメラと炎を巻き上がらせ、拳をダークネスグリーンへ向ける。

「許さない!」

 最後に分部みつばことパステルハニーが、一歩前へ出た。

「公園に戻って来て正解でしたわね。ちえり様には指一本触れさせませんわ! ちなみにブルスケッタとはイタリア中部の郷土料理で、いわゆる一口サイズのパンに具を『ちょい乗せ』したもの」

 パステルハニーは、ラピスの責任感がなく駄々漏れしたセリフを回収しつつ、蜂蜜流星鎚(ハニースター)をぶんぶんと手元で振り回しながらいった。ぶんぶんだけに。

「ラピス!」

「バーミリアン!」

「ハニー!」

「「「ウィーアーパステルガァル!ズ!」」」

「アーンド、かあら!」

「ふん。さようなら、パステルガァル!たち。あなたたちに、用はないわ」

 滞りなく進行するストーリーと、夏のわりにひんやりと漂った空気を肌で感じて、全員、今回の登場シーンは滑ったんだな、と自覚した。

 急に。ごう、という火が燃えるような音がした。そして、ダークネスグリーンの背後から、どす黒い炎が渦巻き、中心から長身の男が姿を現した。

 外気温度が急上昇した。夕方なのに、真昼の炎天下の暑さに逆行したように辺りは暑くなった。目の前に現れた男は、ちえり以外全員知っていた。

 赤い髪の男、四天王の1人、ダークネスレッドだ。

「ダークネスグリーン。ショーは終わったのか?」

 彼はそう彼女に問いかけた。

「ダークネスレッド! お、終わりよ。色彩元珠(パステルオーブ)が、1つでも手に入ればパワーバランスは一気に崩れてゆくわ。パステルガァル!3人では、私たち四天王(ダークネスフォー)に太刀打ちできないわ」

「そうか。次は俺の番だな。レッドピアス」

 そう赤い男はつぶやくと、右手辺りに赤くて長い二股の槍が出現した。彼はそれをぐっと掴(つか)む。これから戦いを始める気マンマンといった、表情だった。

「何を言ってるの!? これでパステルガァル!たちとの戦いは終わりよ!」

 ダークネスグリーンの顔に、なぜか焦りが見えた。とにかく、この場はこれで終わりにしたい。そういう表情だった。

「何を言っている、だと? それはこちらのセリフだ。初めにパステルガァル!の力は未知数だと言ったのは、貴様ではないか」

 ダークネスレッドは、振り返ってダークネスグリーンを睨(にら)むと、彼女にそう、言い返した。

「色彩元珠(パステルオーブ)を1つ奪ったくらいで、安心はできまい。特にパステルラピス。貴様の口車には、いいようにされた」

 赤い男は今度はパステルラピスを、鋭い眼差しで睨む。

「ばーか、ばーか!」

 パステルラピスは舌をだしてダークネスレッドを威嚇した。かあらも真似して口をイーッとした。

「いいえ、今日はお開きよ。日を改めるわ。こんなヤツら、いつでも倒せるわ!」

 ダークネスグリーンは明らかにパステルガァル!との戦いを拒んでいる。

 なぜ、拒んでい」るのか、ダークネスレッドは解せない。

 が、突然、彼はハッとした表情になる。真っ暗闇の中、電灯をつけようと思って、手探りでスイッチを探して、それが見つかったような表情だ。

「なるほど、ダークネスグリーン。そういうことか。パステルガァル!どもに情が移ったな! 暗黒王(ダークネスキング)様を裏切る気だな!」

 赤い長身の槍を、ダークネスグリーンの方へ向けた。

「ラピねーどういうことだ? 仲間割れ?」

 バーミリアンがラピスに聞いた。ちなみに平常時、るりかはあかねに「るりねー」と呼ばせているので、「じゃあ、変身したら、ラピねーだからね」と、どうでも良い細部のディティールまで注文した。

「なお、実は使者かあらも平常時は『るりちゃんと読んでいて、変身したあとは『ラピちゃんと呼んでいる。これ豆な」

 バーミリアンの質問には答えず、ぼそぼそとなにか独り言をつぶやくパステルラピス。

「ゴホンっ。うん、多分まあ、仲間割れね。なんでかわからないけど、展開的にダークネスグリーンは、あたしたちと戦うことを嫌がってるみたいね」

「バカなこと言わないで! 私は暗黒王(ダークネスキング様)を裏切ったりしないわ!」

「本当にか!? だったら証拠を見せてみろ。この場でチェリーを倒せ!」

「……!」

 ダークネスグリーンは驚愕するかのように、大きく目を広げた。

「どうした? 早くパステルチェリーを倒してみせろ。裏切者じゃないという、証拠を見せろ、ダークネスグリーン」 

 ダークネスグリーンは、歯噛みをしながら自分のダークネスウェポンを出す。

 左手のひら辺りから緑色のオーラがのような光が集束する。光は、徐々にイバラのような鞭(むち)の形状になって行った。

「グリーンウィップ」

 ダークネスグリーンはまるで息が詰まったような表情で、その鞭(むち)を目の前のちえりに対して構えた。