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「ハッピーセットを下さい」

 瀬々良木るりかは恥も外聞なく、中学校2年生のくせにそうレジ前で言い切った。

 ここはムクドナルド。言わずと知れたファーストフード店だ。


「おもちゃは何番にしますか?」


 屈託のないプライスレス・スマイルで店員は一歩も引くことなく、瀬々良木るりかにさらに攻撃を仕掛ける。


「をう、えっと。じゃあ…このプリキュアの2番ので…」


「プリキュアの2番でよろしいですね?」


 やめて! あたしが中学生のくせにハッピーセットを頼んだ挙げ句、おもちゃにプリキュアの2番を選んだことを復唱しないで!


 ともあれ。コストパフォーマンス的には、ハッピーセットが一番良かった。バリューセットは高いし、そのあと夕食が食べられなくなる。夕食をあまり食べなければ勘の良い母親に「また無駄なお金の使い方をして」と問い詰められる。でも夕方小腹は空いてる。そんなコストやらリスクを考えるとハッピーセットは瀬々良木るりかにとって適量かつ適正価格で本当にハッピーなセットなのだった。


「で、ねーさんは?」


 るりかは後ろに立っている、緑色した長い髪の女性へ問いかけた。背はるりかよりも高く、服装も淡いモスグリーンの品があるレースのワンピースを着ていた。


「わたし、ホットコーヒー」


「そこはグリーンサラダとメロンソーダを頼んで下さい! 期待を裏切らないで下さい」

 以前、分部(ぶんぶ)みつばという、はちみつ色…いわゆる黄色系の少女が、無理矢理るりかにカレーを食わされ、写真を撮られたことがある。

 カレー好きのステータスは、黄色系の色を持つ者の宿命であると。


 しかし、この緑色の女子は緑色の持つ宿命に屈することなく、グリーンサラダやメロンソーダを注文せず、ホットコーヒーを頼んだのであった!


 ふたりはガヤガヤした店内で向き合って座った。人が多いため空調が効かないのか若干暑い。


「しっかし、驚きましたよ。ええと、今はかえでさんで良いんですか?」


 緑女子はこくりと頷いた。


「るりか。敬語は使わないで。堅苦しいでしょう?」


「マジで? オーケイだよ、かえたん」


「か、かえたん…?」


 掌を返し過ぎだろう、瀬々良木るりか。


 まあ、呼び方なんて何でもいい…と緑女子、翡翠森(ひすいもり)かえでは思った。


 瀬々良木るりかは、パステルガァル!で、色を守るガールズ戦士だ。


 翡翠森かえでは、緑色の元ダークネスガーディアンで、敵だった。


 しかし、パステルガァル!…とりわけ英(はなぶさ)ちえりの心に触れ、敵の洗脳から解け、今はパステルガァル!として彼女たちの仲間に加わった。


「かえたん。どう人間層(レイヤー)の生活は」


「おじさま、おばさまのお陰でなに不自由なく生活出来てるわ」


 かえでは笑顔で、そう答えた。


 るりかは、それは何よりと笑っていたが、やがてその表情も真顔になっていった。