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 そう彼女は今日、勝負の日なのだ。


「今日」とは、日差しが容赦なく照りつける8月24日。

 時刻は先程から随分と経って午後5時10分となっていた。

 空を見あげれば、太陽の憎いあんちくしょうが、まだまだ現役で核融合しながら、その熱と光を照射している。

 へばりそうになりながらも、そあらはとある建物の中に入って行った。

 その建物を見上げればピンク色の縦看板が2階に設置されていた。「スタジオ パッパラダイス」と青字のカタカナ表記で書かれてある。ここは彼女が通うダンススタジオだ。

「おはよう、そあらちゃん。どお? 大丈夫よね」

 挨拶もそこそこに年配の女性がそあらに話しかけてきた。問いかけるというより、念を押したような口調だった。

「お疲れ様です。星川先生、大丈夫です。緊張してますけど」

 星川はこのダンススタジオのオーナーで、経営からプロデュースまで幅広くスタジオの運営を目にかけていた。

 普段から小奇麗にしていて、また背筋もピンと張っているので、実際の年齢よりも若く見える。特に今日は外出用の服装でいつもより決まっていた。

「こんちわー!」

 そあらが玄関で立っている後ろで、いきなり扉が開いた。

「あれ、ちえり。どうしたの? 今日練習ないでしょ?」

「ちがうよ。はい、これ、そあちゃん先生にって、るりかちゃんから」

 ちえりという小6にしては小柄な少女は、入って来るなり小さなクリーム色の袋をそあらに渡した。

「え? るりかちゃんって、あの体験に来てくれた?」

 以前、体験ダンスレッスンに参加してくれたるりかという同学年の少女を思い出しながら、そあらは言った。

「そうそう。そあらちゃんの分のお土産も買ってきたんだって。ちえり渡すの忘れてた」

「いやいや、ありがとう、ちえりわざわざ。え? なんだろう、あ~カワイイ。ストラップだー」

 それは大人の親指くらいの大きさで「4分の1」に切ったバームクーヘンみたいな形状であった。

 ただ、七色の層が出来ているので、これは多分虹なんだろう。そんな携帯電話・スマートフォン用のストラップだった。

「それ、おそろいなんだって」

 ちえりはニンマリとそう言った。

「そうなの? 嬉しいな。ちえり、わたしもう出ちゃうんだけど、今度るりかちゃんのメアド教えてね」

 そう言ってそあらは、早速その虹色のストラップを自分の携帯電話につけ、オーナーの星川と外に出かけるのだった。