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 ざん。

 天神そあらが放った2射目は、的を外してしまったようだ。

 彼女は目を閉じ、深い溜息のような深呼吸をした。

「弓はいいねえ」

 突然、そんな声が聞こえたものだから、天神そあらは驚いて身をすくめてしまった。

「おっと、驚かせてしまったようだ」

 後ろを振り向くと、ひょろっとした肌の白い少年がいた。背は高く、髪は真っ黒でボブのようだ。

 弓道着を着ていて、弓道部員なんだろうけど。

 しかし、こんな男子がいたなんて知らなかった。もしかして引退した3年生の誰かだろうか。

 年上にも見えるし、年下にも見える。

「ごめん。さあ、ボクにかまわないで続けてくれ」

 そんなことを言われたが、そんなことを言われても、と天神そあらは思った。

 呆然としているそあらを見た彼は、的の方に目を向けながら、また話しを始めた。

「弓構えから残心の間、雑念を入れちゃいけない。…しかし裏を返せば、他のことを考えなくていいと神様から許しをもらえる神聖な時間てこと…そう思わないかい?」

 ちょっと、言ってることが一線を超えていたが、天神そあらは変に真面目なので、そういうのを聞き流せない。

「そんなふうに考えたことなかった。意識を集中させることでわたしはせいいっぱいなもんで」

 その男子は鼻でフッと笑ったようだったが、そあらをバカにした感じではなかった。

「それは、ある意味幸せなことなんだ。ボクからしてみれば、弓道は唯一ボクの罪を軽くし、世界の重さを忘れさせてくれる。一瞬だけどね。でもその一瞬のおかげで、ボクは息継で肺に空気をとりこむイルカのように、また深い海の闇の中でもしばらくは生きてゆけるんだ…」

 彼は結局弓を入れた袋から、弓を出すことなく道場から出て行った。

 そして最後、去り際に一度だけ振り返って。

「キミは不思議な色をしてるね、天神そあら」

 そんな言葉を残して行った。

「な、何なの今の人。もしかして、心が病んでるのかな?」

 天神そあらは真面目に彼を心配してしまったようであった。