だたっぴろい砂利の空き地は、熱気を逃がすことの無いまま、じっとりと辺りに滞っていた。
暑い。さっきから空はずっと曇っているから、直射日光は当たってないはずなのに、暑い。
でも、遠い空には、ちらほらと黒い雲が混ざりはじめていた。
もしかしたら、このあと一雨降るかもしれない。
あたしは、目の前に現れた、長身の男を睨んだ。
濃いピンク色の髪とコスチューム。
浅黒い肌。長い耳。八重歯――。
四天王をはじめとする、いわゆる「人型」の【ダークネスガーディアン】のおなじみの特徴だ。
「…あんた誰? パステルオーブならあたしが持ってるわ」
あたしは、すみれをかばうように前に立ちはだかると、スゴんだ感じでガーディアンに言った。
「やっぱりそうだったんだ。それ、ボクにちょうだい」
濃いピンクのそいつはあたしに手を差し出しだ。普通にしてれば、イケメンなのかもしれない。
「渡すかっての! あたしは【パステルガァル】よ!」
すみれが不安そうな、そして、不思議そうな顔で見ている。
目の前であたしが変身したり、戦ったりしたら、腰抜かすかしら。
だけど、この状況を回避するには変身するしかない。
相手は四天王じゃないし、勝てなくはない。すみれへの弁解は、この状況を打開した後でいい。
ぱっと見、これは中二病の茶番にしか見えないかもしれないけどね(泣)。
「すみれ、とにかくあそこの物陰まで下がって」
「るりちゃん??」
「いいから早く!」
そういうとすみれは建物の陰まで走って隠れた。よし、いい子。
あたしは瑠璃色のパステルオーブを取り出した。
「【ダークネスガーディアン】が、こんなところまであたしをオッカケに来るとはねぇ…」
あたしも有名になったもんだわ。
「パステルパワー、ペイント・オン!」
そういって、あたしは瀬々良木るりかから【パステルガァル!】のパステルラピスに変身した。
「あたしのエチュードで、魅了させてあげる! 愛と正義の【パステルガァル!】 瑠璃色の【パステルラピス】!」
決まった。ちょっとすみれの視線を意識しながらの、オーバーアクションで決めてやったナリ。
「あれ? キミは瑠璃色?」
って、急に気の抜けるような質問を【ダークネスガーディアン】のヤロウがして来た。
「は? そうよ、他に何色だっていうのよ」
「?? あれ? 裏切ったのは何色だっけ」
ちょっと。タイミング狂うわね、このにーちゃん。何を言っているの? グリーンのこと?
「裏切った色って、桜色、はちみつ色、瑠璃色、朱色じゃないの?」
「それは裏切ったんじゃくて、はじめに取り逃がした四色でしょ。そのあとグリーンと、他に二色裏切ったよね?」
なんだその、同意を求めるような口調は。知らないっての。
「もう、そんなの知らないわよ。行くわよ!」
あたしは両手で瑠璃色の大剣を構えた。
この大剣は、ラピスブレイドという。見た目重厚そうだけど、こっちはパステルパワーっていうドーピングをしてるので、実は重くない。リアルに言うとテニスラケットと同じくらいの重さだ。
その剣先を濃ピンクにーちゃんに向ける。
「ちょっとあぶなっかしいなぁ。随分と好戦的だね。ボクはまだ侵色もなにもしてないじゃないか」
「でもパステルオーブを奪おうとしたでしょ」
「まあ、ちょっと違うけど、そうなるか。いいよ戦っても。でもボクは普通のガーディアンより強いよ。四天王イエロー様の直属のガーディアンだから」
何よ、その言い草。まるであたしが暴走しているような展開になっちゃってないか?
いやいや! すみれが危ないんだ。先手必勝でもいいわ、ぶっ倒す!
「で、あんた結局、何色?」
「【マジェンタ】だよ。パソコンのインクに入っている結構有名な色だよ」
「そう、あたしは瑠璃色。結構歴史的に古くて由緒正しき色なんで、よろしく」
そう言って、ラピスブレイドを水平に構える。
「ラピス・ブレイク!」
直線上にいる【ダークネスマジェンタ】に、【パステルパワー】を使って一気に間合いを詰める。
そしてそのまま、敵を大剣で叩く! あたしの得意技。
「く!」
【ダークネスマジェンタ】は、とっさにバックステップして、避けられてしまった。
「さあ、本物は、どーれだ。サイケデリック・マジェンタ」
そう唱えると、【ダークネスマジェンタ】の姿が、霞む。そして、一人が二人、二人が四人と忍者の分身の術のように増殖する。
「卑怯ね! えーい! ラピス・クレセントぉぉぉ~」
パステルラピス唯一の飛び道具、クレセント。
砲丸投げのように大きな剣をぐるんと回すと、三日月型の剣の斬撃波がブーメランのように弧を描き、マゼンタの幻影を次々と消していく。最後に残ったのは本体だ。
「みーっけ」
そういって、あっかんべーをかましてやったわ。