夕方、【かあら】をみつばに預けたあたしは、そのまま家族とおばあちゃんち、千葉の湊にむかった。

 田舎へは車で向かうのだが、父親が運転席、助手席には弟、後部座席にはあたしと母親が乗るという席順だった。

「ハリーくん元気かしらね」

 不意に母親があたしに言った。

「元気でしょ! 逆に黙っているところ見たことないわ」

 ハリーってのはあだ名で、本名は玻璃(はり)っていう変な名前の親戚の男子。これから行くおばあちゃんちに一緒に住んでいる。

「もう高二だもんね。ってことは、進路どうするんだろうね」

 母親が独り言のようにいった。ハリーとは小さい頃はよく遊んでいたけど、最近はお互い年頃の異性なので、そこまでの親交は無くなった。

 弟のさんごとは相変わらず遊んでるみたいだけどね。

 夕方だったけど、やっぱりお盆だけに帰省ラッシュのピークを過ぎた下りでも道はそこそこ混んでいた。あたしたちの車は神奈川と千葉を結ぶアクアラインを目指す。

 アクアラインの途中、サービスエリアの「海ほたる」で食べる、てんやの海鮮天丼が好きなんだけど、今回は遅いから寄らないそうだ。がっかり。

 やがて、アクアラインを抜けて金谷に入った。おばあちゃんちはもう少し高速を走らないとつかない。

 だけど、あたしの目的はこの場所。今は降りないけど、明日。明日用事がある。正直、あたしがおばあちゃんに来た理由は、申し訳ないけど、この目的のためだ。

 そうじゃなきゃ、地元の彩玉で仲間を置いてまで来やしないわ。

「ねー、お父さん、明日アウトレットパーク行きたい」

「アウトレットパーク? いいよ」

 よし、これで行ける。まあ、父親がダメと言ったとしても電車やバスを使ってひとりでも行くつもりだったけどね。

 辺りはすでに日が落ちていて、千葉の高速道路は外灯もなく真っ暗だから少し怖かった。

 でも、その分空を見あげれば、星の輝きを楽しむことが出来た。

 期待と不安。

 今のあたしの気持ちそのものだった。


「さんご! 久しぶりだな、おじさんおばさん、こんばんは」

「おー、ハリーくん、また身長伸びたんじゃない?」

 玄関先で出迎えてくれたのは、さっき話で出てきた、ハリーこと七種(ななぐさ)玻璃(はり)。

 うちの母親は、さっそく自分より背の高いハリーに近づいていった。母親は男子高生が好きなのか?

 おばあちゃんちは、いかにも昔ながらの家という感じで、平屋で、サザエさんちみたいだ。

 海も近いし、裏はすぐに山。聞いた話じゃ、イノシシとかたまに山から降りてくるんだとか。

 彩玉のベッドタウンから、たかが二時間でこんな別風景になるなんて、すごい。

 あたしは嫌いじゃない。

「…よう」

 ハリーはあたしに目をあわせると、そう小さく挨拶して来た。

「ちす。確かにでかくなったね、ハリー」

「そうか? そういう、るりかもな。ずいぶん…」

 と、何かをいいかけて、黙る高二男子。

「ずいぶん…なによ?」

 訝しげな表情をすると、ハリーは少し困った顔をして

「いや、なんでもねーよ。さんご、ゲームしようぜ、新しいの買ったんだよ!」

「まじ!? にーちゃん俺もやる!」

 と愚弟とさっさと家に入ってしまった。なんだい、感じの悪いやつだな。