最近、いろんなことがありすぎた。
たとえば、半分手違いで受けたアイドルオーディション。
そこで出会った、元子役の女の子のファンになってしまい、思わずオーディションに対して本気で受かりたいと思ったり。
結局、落ちて号泣したり。その子は受かったり。
その後、世界の【色】を救う、変身ヒロインになったり。
仲間たちと助け合ったり、足を引っ張り合ったり。
とにかく最近、いろんなことがありすぎたのだ。
あたし、瀬々良木るりか、14歳、中二。そんな夏。
「もちろんるりかも行くわよね。おばあちゃんち」
あたしが自分の部屋の扉をしめる瞬間、そんな母親の声が聞こえてきた。
「あーん? …わかんない」
そう曖昧に答えて、自室の扉をしめる。
「おばあちゃんち」って言うのは、いわゆる母方の祖母で、ここ彩玉に比べれば、ちょっと田舎な千葉の湊(みなと)って場所。
毎年お盆の時期に家族で帰る、恒例行事だった。
ただ今年は。
「ったく、【ダークネスキング】がすべて悪い」
そうボヤくと、あたしはPCの電源をONにした。お父さんのお下がりでもらった古いノートPCで、五年前のモデルだから、重くて遅い。ま、文句言っちゃ悪いけどね。
「田舎に帰るなんて、気が気じゃないわ」
「どういうことカラ?」
あたしのボヤキに反応したのは、猫のぬいぐるみみたいな相棒。
この子はしゃべるし、空も飛ぶし、たまにワープとかする。そして、少しおせっかい。名前は【かあら】。
よく冗談でネコ絵の具なんて呼んじゃうんだけど、それは服が絵の具みたいなデザインで、頭には絵の具のフタみたいな帽子をかぶっているからなの。
「あたしのおばあちゃんが結構遠い場所に住んでるんだけど、今のこの状況じゃ遊び行けないじゃーん。だから敵の親玉の【ダークネスキング】むかつくって話」
「るりかちゃん、田舎に帰ればいいカラ。大丈夫カラよ」
【かあら】が思っても見なかった発言をしてくれた。
「え? 珍しいじゃん。何よ急に」
「るりかちゃん、【パステルガァル!】をお願いしてから、ずっと走りっぱなしだったカラ。たまには休んだ方がいいカラ。本当に感謝してるカラよ」
確かに、ずっと走り続けて来た気はする。
【パステルガァル!】という、いわゆる変身して戦うようになってから、一ヶ月以上経つ。
その間、仲間はMAXの四人そろったが、問題児ばかりだった。
でも、もし仲間があの問題児たちじゃなかったら、今のあたしはいないと思う。
あたしも、あの子たちも、一人でも欠けちゃダメなんだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて、田舎に行っちゃおうかな。【かあら】はどうする? 一緒に行く?」
と、言っておいて、あたしはピンと閃いた。
「そうだ、【かあら】はみつばんちに行きなよ」
みつばっちゅうのは、変身少女【パステルガァル!】の仲間の一人。ツンデレ属性、たくあんまゆげのお金持ちお嬢様。
ちなみにデレは、もうひとりの仲間ちえりの前でのみ発動する。
「みつばちゃんお盆は両親と過ごすんじゃなかったカラ?」
「それがね、なんかダメになっちゃたみたいなんだよ。ちえりの話だと。ご両親帰ってこれないんだって」
「なら大丈夫カラね。でもみつばちゃんかわいそうカラ」
「そうなんだよね、だから【かあら】みつばを頼んだわ」
「任せてカラ!」
なんだか【かあら】もノリノリだった。それとも、あたしに気を使わせないために、ノリノリ風にしてくれたのかな?
そんなやりとりをしながら、あたしはネットをたちあげて、「あるもの」を検索していた。
「まあ、それでも心配は心配なんだけどね…」
カチ。
その時、あたしはネットのある文字に釘付けになってしまい、思わず手に持っていたマウスを止めた。
「…ごめん【かあら】、やっぱ全力で田舎行くわ。あたし」
そう、あるサイトを見ながら言った。
まさか、彼女があんな田舎に来るなんて。しかも、ちょうどあたしが帰る時期に。
これは、いわゆる運命ってやつかもしれない。会えるかわからないけど、会いに行こう。親友であり、ライバルであり、憧れの、彼女のもとへ。

