ちえりパステルガァル!
ライトノベル版ダイジェスト
⇨特別版『ふたりはプリキュアMilkyWay&ちえりパステルガァル!スペシャル・ハーモニック』 


  翌日の放課後も、ちえりは再びるりかの家に足を運んだ。

 その足取りは昨日より重いものであった。

「っは―!? ちょっと、万引きってマジで!?」

 るりかは驚いた。この展開は、さすがにるりかが描く台本にない。スーパーアドリブだ。

「でも、話を聞いていると、なんだか見つかるのわかってて万引きしたような感じカラね」

 絵の具ネコ、【かあら】は首をかしげた。

「あの大胆不敵さは、逆に素質あるかもしれないでつよ…」

 と、大したフォローが出来ない【ぱれっと】。

「まあまあ、冷静に考えて…魔法(変身)少女・ガールズ戦士関連作品史上、万引き癖のプロフィールをもつ娘なんて、ないわ! うんうん、ないわ!」

 るりかは悪態をつきながら、座ったままくるっと椅子を回し、机の上で頭を抱えた。

「仲間がいないと、この先ヤバイんだよね?」

「そうれす。4人で力を合わせないと【侵色】は止められません」

 力なく【ぱれっと】は言った。

「ぶんぶん、今日は学校来なかったよ」

 ちえりは、心配そうな顔で友達を思った。

「あたしたちが【パステルガァル!】にどうやって選ばれたのかって言うと、該当する【色】と波長みたいな、呼吸みたいなものが合うから選ばれたんでしょ?」

「そうれす」

 でもな~、とるりかは渋い顔をする。

「ぶっちゃけ、『分部みつば』は問題アリよ。『万引きする子は【パステルガァル!】できません!』 とかそんな体裁じゃなくて」

「てーさい?」とちえりが聞き返してきた。

「ああ、カッコつけたり見栄を張ることかな。つまりさ、万引きすることも問題なんだけど、それ以上にそれをやっちゃうみつばの心が心配なの。その子お金持ちで、モノには不自由してないんでしょ? 完全、心の問題だよ」

「るりかちゃん難しいことをいうカラね」

 【かあら】もお手上げな仕草でるりかに返す。

「うちの弟…さんごって言うんだけど…昔、そういうクセがあってさ。万引きの心理ってのを調べたことがあってね」

「るりかちゃんのおとーと?」

 何度かるりかの家に来ているのに、遭遇したことがなかったので初耳だった。

「じゃあ、みんなに質問するね。あたしたち子供にとって、一番ダメな大人の反応はどれでしょうか?」

るりかが人差し指を出して質問をした。

「クイズ??」

 ちえりはクイズが好きなようで、嬉しそうだ。

「そーね。じゃあ行くわよ。あたしたち子供にとって、一番ダメな大人の反応よ。①褒められる、②怒られる 、③無視される」

「なんですカラ? 怒られるのはイヤからよ」

「まあ、①の褒められるのはナイれすね。ボクも②の怒られるのはイヤなのれす」

 使者たちがそんな感じで答えた。

「ちえりは?」

 るりかがちえりに視線をやった。

「うーん。③の無視される、かな」

 ちえりはいつもクリクリと目を見開いているが、珍しくこの時は目を細めた。そして、その答えに、逆にるりかが目を丸くする。

「あら、意外。ちえり正解」

「やったー!」

 ちえりの表情はすぐに戻った。

「無視するより、怒る反応の方がダメな気がするカラ」

「普通はそう思うかもね。でもこの3つは大きく2つに分けることが出来るの」

 るりかは演説するように椅子から立ち上がった。

「それは『関心』と『無関心』よ。」

 るりかは右手、左手を出してジェスチャーしながら熱っぽく説明する。

「『関心』のことを『ストローク』って言うんだけど、子供にかぎらず、人間っちゅうもんは、この『ストローク』が欲しいものなの。ほら、小さい子が、お母さんに構って欲しいから、あえてイタズラするようなもんよ」

「? イタズラしたら、おこられまつが?」

「【ぱれっと】わかってないね。怒らてでも『ストローク』が欲しいのよ」

 るりかは【ぱれっと】にデコピンした。

「で、うちの弟の時はさ、ちょうど去年くらいだったんだけど、あたし中学に入って間もない頃でしょ。お父さんお母さんは仕事してるから、あたしが同じ小学校にいた頃はずっと弟を面倒見てたんだけど、中学に入ったら、まあ生活サイクルが変わるから、あたし、全然相手が出来なかったわけ。演劇部も超忙しかったし」

 るりかは再び椅子に座った。

「親や家族が構ってあげられない状況が続いたのよ…つまり弟にとって周りが自分に『無関心』…『ゼロ・ストローク』だと思ったのかもしれない。…心の奥底で」

 ちえりが、るりかの目を見つめた。

「子供は、親から得られない『ストローク』を、他から得ようとするの」

「他カラ?」

「そう、例えば、コンビニの店長とか、本屋の店長とか」

「やっと合点がいったのれす!」

「そういうこと。万引きすれば、大人から怒られるでしょ。みんなが騒いで、怒るわけだ。つまり、自分に『関心』が集中する。『ストローク』が得られる。そのスリルがたまらなくて、何度も繰り返してしまう」

「そ、そう考えると、ちえりさんのママさんは、凄まじい『ストローク』なのれす」

「…うん。怒ったママ怖すぎ」

 ちえりは苦笑いしたが、それは同時に自分に関心があるということだった。嬉しくないはずがない。

「なるほどねー。だったらなおさらさ、そんな強烈な『ストローク』見せつけられたら、みつばって子は凹んじゃうかもね」

「ちえり、ぶんぶんに会いに行く!」

 突然、ちえりが意を決したように叫び、立ち上がった。

「…あってどうする?」

 るりかも椅子から立ち上がる。

「【パステルガァル!】一緒にやろうっていう!」

ちえりの顔は真剣だ。

「ちえり、それは危険だと思う」

 るりかはキッパリとそういった。それは、分部みつばを気遣っての発言だったが、それ以上に、ちえりが動いてケガをして欲しくなかった。純粋な思いゆえに。

「るりかちゃんの話、よくわかなんかったけど。ぶんぶんはさみしいんだって思う。パパとママにずっと会えないから、さみしんだよ」

「そうかもしんないけど、それでみつばって子が【パステルガァル!】やるってならないでしょ?」

「なる!」

 ちえりはピースした。

「ちょ、根拠ないでしょ、ちえり」

 もう、とちえりを落ち着かせようとすると、

「ちえりはぶんぶんに『友達』を語る『覚悟』があるんだから!」

「おっ、おおう」

 ちえりらしからぬそんな発言に、るりかは思わず圧倒されてしまった。

 そのスキをついて、ちえりは外に飛び出していった。

「あ、ちょっと待ってって! 【かあら】、【ぱれっと】、ちえりを追うわよ」

 るりかたちはちえりを追って、みつばの家に向かった。