ちえりパステルガァル!
ライトノベル版ダイジェスト
⇨特別版『ふたりはプリキュアMilkyWay&ちえりパステルガァル!スペシャル・ハーモニック』 


 

「…わかった」

 最初に沈黙を破ったのは、あかねの方だった。

 あかねはそういうと、組み手の途中で差し出した拳を引っ込めた。

「あたしも言いたいことが言えてスッキリしたから、ヨシとしようかな」

 ウーンと、空に向かって両手を上げて背伸びをする。

 張り詰めていた空気が解き放たれたようだ。あかねが少し笑顔になった表情を見て、【ぱれっと】はホッとため息をついた。

「話がそれたけど、『心の黒い色』を吸い取るんなら、なんかイメージ的に良い人になりそうなんだけど」

 心の黒い部分、よく『腹黒い』とか『心の闇』などと表現するように、たしかにその悪い心を吸い取っているようなイメージだ。

「そーれすよね。そこで行き詰まりまつ…」

 【ぱれっと】もない首をひねる。

「なんであんな感情が死んだようになっちゃうんだ?」

「…【ダークネスブルー】に会うしかないんれすかね。…でも…もし次に会ったら今度こそ、ヤラれまつ」

 次は【ダークネスブルー】と面と向かって戦わなければならないと思う。向こうからすれば、とるに足らない存在かもしれないが、パステルガァル!たちが目の上のたんこぶであることには変わりない。

「悔しいけど、対四天王戦は避けたい。でも、【ダークネスブルー】は実験してるって言っていた。あいつの目的が実験なら、正面きって仕掛けてくることはないかもしれない」

 散々るりかにひとりで四天王に挑むな、と、口酸っぱく言われたことが効いているようだ。

「それは…【心の侵色】の実験れすね」

 ふいに【心の侵色】という、新しい言葉を【ぱれっと】は漏らしたが、特に違和感がなかった。

 色のバランスを崩すのが【侵色】なら、『心の黒い色』を吸い取る行為はまるで心のバランスを崩してるようで、ぴったりな言葉だったからだ。

「いずれにしても、時間の問題だな。あいつら、近いうちにまた現れるよ。そして、誰かをまた犠牲にするんだ。せめて【ダークネスパンプキン】だけでも倒せれば…」

「そうれす。【ダークネスパンプキン】の【ダークネスオーブ】を砕けば、みつばさんの先生の心も、元に戻るかもしれまてん」

 うん、と、あかねは深く頷いた。

「今はそこに望みを託すしかない」

「あかねさん、とにかく【ダークネスパンプキン】の居場所を探しまつよ!」

「【侵色】とか【ダークネスパワー】を使っていれば場所は特定しやすいんだろ?」

「そうなんれす。あとは人目につかない場所れすね。そういうところに現れるのれす」

 その時、ふたりの耳にガサガサと音が入ってきた。

「はーい! ちえりも行く!」

 物陰に隠れていたのだろうか、木の茂みから、いきなり飛び出してきて、ちえりが立候補した。

「うわっ! ちえり! 大丈夫なのか?」

「なんで? へーきだよ。ぶんぶんのピアノの先生が大変なんでしょ?」

「聞いてたのか?」

「うん」

ちえりは頷いた。

「『のぞみをたくすしかない!』ってあかねちゃんが言ったとこから」

「なるほど、聞いてないな、人の話を。ほぼ、まったく」

 思いっきり、あかねの最後の一言しか聞いてなかったようで、ほぼノリでぶっこんで来たと見た。

「ちょっと、わたくしを差し置いて勝手に行動しないで下さる?」

 反対側の茂みからはみつばが飛び出してきた。

「げ! みつばまでなんで」

 太眉少女、みつばはあかねを見つめた。

「【かあら】から聞きましたわ。昔のみつばなら、泣き伏して引きこもってしまうところですが」

 じゃんっとパステルオーブを持って構える。

「今はパステルガァル!でしてよ」

「あかねちゃん、みつばちゃんがどうしても行くっていうカラ…」

 連れてきちゃったカラ、ごめんなさいカラ。と【かあら】はみつばに謝ったが。

「いいんだ【かあら】。…悪かった、ふたりとも」

 あかねは、つい、ひとりで抱え込んでしまうクセが、あった。

 一番の問題は、ひとりで抱え込んでいる状況に気づかないことだ。それを暴走という。で、だいたい許容量オーバーでパンクしてしまう。

 ただ、あかねはその辺がどうしてもうまく切り替えられなかった。

 日々何事も挑戦だし、ハナから挑みもしないで、出来ないなんていうのは甘えだ…と思っている。

 その辺の線引きは実に難しいところではある。

「み、みなさん! キタコレ! このタイミングでペンダントに【ダークネスガーディアン】の反応があったのれす! あかねさんの中学校の裏庭です!」

「例のかぼちゃのおばけですわね」

「なるほど、お盆だから部活やってないし、裏庭は奥まっていて目立ちにくい。ちなみに【ダークネスブルー】の反応はあるか?」

 あかねが【ぱれっと】に問いかけた。

「ないのれす!」

 ペンダントを確認すると、【ぱれっと】はそう答えた。

「そっちのが都合がいい、よし、行くぞ!」

「あいあいさー!」

 3人の娘は意気込んで、現場へ向かった。みつばの通うピアノ教室先生、松井サキの心をもとに戻すために。