ちえりパステルガァル!
ライトノベル版ダイジェスト
⇨特別版『ふたりはプリキュアMilkyWay&ちえりパステルガァル!スペシャル・ハーモニック』 


  お昼前なのに、もういい具合にすごく蒸し暑い。

 うんてい公園は、マンションの影に隠れているおかげで直接日は当たらないが、じっとりとしていて不快指数は異常に高いのだ。

 しかし、穂ノ尾あかねにしてみれば、そんな天候や気温うんぬんは二の次であった。状況が状況なのだ。

「非常時に力になれず、申し訳なかったのれす」

 体型が丸っこいパステルワールドの使者【ぱれっと】は昨日の一件に加わることが出来なかったため、あかねに頭を下げたが、そんなことよりも教えて欲しいことがあった。

「いいんだ。それより、みつばの先生の件だ」

「うーん、想像の域を出ないんれすが…」

 【ぱれっと】は短い腕を頑張って組みながら言った。

「なんでもいいよ。間違っていても」

 可能性があるならば、どんな情報でも欲しい。その希望にかけたい。

 そうでなければ、今後も先生と同じような犠牲者が増えるかもしれないからだ。気が気じゃない。

「【ダークネス・オーブ】が、『心の何か』を吸い取った感じなんれすよね?」

「たしか…『心の黒い色』をいただくとか【ダークネスブルー】は言ってたような」

「…なるほどれすね。 ボクたち使者も心と色の関係を解明しているわけではないのれす…心と色が相互に影響しているということはわかるのですが…」

「難しいことはわからないし、難しい言葉も使えないけど、何となくわかるよ。なぜ、パステルガァル!…『ガァル』なのかってこと」

「あかねさん」

【ぱれっと】に背をむけると目を逸らして、あかねは話し続ける。

「この間【ダークネスレッド】と戦ったとき、ちえりの【パステルパワー】が爆発したろ? 力の爆発は、心と連動しているんだと思った。…それと逆にあたしが初めてパステルガァル!になったときは力が全然発揮出来なかった気がしたよ…それは、迷っていたから」

あかねはうんていにぶら下がった。

「よっと。…【ダークネスキング】に洗脳されなかった色はたった4色だろ? ダークネス一派になんか勝ち目ないじゃんか。だから、【パステルパワー】…つまり色の力を増幅する可能性があるあたしたち…とくにガールと呼ばれる、心が不安定な世代…の力を借りようとおもったんじゃないか?」

そう言うと、あかねはうんていを腕のチカラのみで、端から端まで一気に渡った。

「不安定だから、たまに爆発する。その爆発のキセキにおまえたちは賭けた。そうだろ?」

 【ぱれっと】は黙っていて応えない。

 力関係に敏感でこだわるあかね故に、導きだした答えなのかも知れない。

 腕力や脚力だけでは勝てない、【パステルパワー】。しかしそれは、あかねが習っている空手にだって言えるものであった。精神の練磨なしには、いくら技術があっても勝てない。
 で、あるならば、心に影響を与え、心の影響を受ける【パステルパワー】ならなおのことだ。

 あの時、【ダークネスレッド】に立ち向かったチェリーの【パステルパワー】は、一瞬でも四天王のチカラを凌駕したのだ。あかねがそれを忘れるわけがなかった。

 その爆発というか、一歩間違えれば暴走するパワーを期待して、あえて人間の女子にそのパステルパワーを託したのだとしたら…

「ダークネスキングは悪だけど…プリンセスホワイト…白のお姫様も、とんだ食わせモンだな」

「…否定はしまてん。でもプリンセスホワイト様は、みなさんをただ利用しようとしたわけではありまてん」

【ぱれっと】の表情は慎重に言葉を選んでいるようであった。

「わかってるさ、あたしたちが戦わなければ世界は真っ黒だ」

 あかねは、そういうと今度は空手の型を始めた。

「はあ~っ!」という気合と共にあかねの拳が空を切る。

「ただね、挨拶くらいしてこいって思ったんだよ」

「あかねさん、プリンセスホワイトは様々な事情で人間界に来れないのれす。代わりにボクや【かあら】が使者として来ているのれす」

 申し訳ありまてんペコリと頭を垂れた。

 空手の型の動きをしていた、あかねの動きが止まる。差し出した拳の延長線上には【ぱれっと】。

 ふたりの視線が重なった。

 まっすぐな、あかね。ウソもつけないし、つかない。そして、ズルもしない。

 プリンセスホワイトの、誠意を感じることが出来ず、真意もはっきりしない態度とも受け止められても仕方がないような状況の中で、果たしてあかねは納得して戦ってくれるのであろうか…。

 その空気を読んだからこそ【ぱれっと】も多くを語らず、誤解は誤解、不誠実は不誠実と認め、すぐに謝ったのだ。

 しかし、沈黙は続く。ふたりの間に緊張が走った。