ちえりパステルガァル!ライトノベルまとめ目次第1話「ちえり編 」←ママ、せかいへいわしちゃっていいですか?まさかの懇願系変身少女!
第2話「るりか編 」←只今、執筆中!
特別版『ふたりはプリキュアMilkyWay&ちえりパステルガァル!スペシャル・ハーモニック 』
こうして、ダンスの集団審査を終えた。
そのあとすぐに彼女たちは、一同に集められ、
明日の説明をひと通りされ、
一日目の審査がすべて終わりを告げた。
「慣れないことして、本当につかれた。
オーディションってほんといろんな意味で、
中途半端な気持ちじゃダメって良くわかったッス…」
るりかが朝来た時より、心なしかほっそりしているのは、
かなの目の錯覚ではない気がした。
「るりかちゃん、本当にダンス初心者? あれで? キレがすごかった…」
すみれが驚いた表情でるりかを評価した。
「いんや、まず柔軟ストレッチで死亡。体硬すぎ。
かなっぺさぁ、先輩に言って部活のストレッチちゃんとやろう。
実践で生かせない、今のやり方だと…。
あとヒップホップやってる子とかいたら、教えてもらったほうがいいかも」
「うん、うん」
と、かなは頷きながら、
実践のためのストレッチでしょ?
ストレッチの実践って何^^;?とか、
細かく疑問に思ったが、るりかが思っていることは十分に伝わった。
ところで、るりかとすみれ以下オーディションメンバーは、
台本のような小冊子を持っていた。
「るりかちゃん、明日よろしくお願いします」
それを両手に抱え込みながら、すみれが懇願するようにるりかに言った。
その瞳を見て、るりかがキュンとなったかは瞬間分からなかったが
彼女らが手に持っているのは紛れも無く台本で、明日の最終の演劇審査のものだった。
それぞれペアで演劇を展開していく。
受付の順番の関係で、当初から、るりかとすみれはそのペアだとわかっていた。
「すみれちゃんは、愛知から来たんだよね? どっか泊まるの?」
「はい、愛知の名古屋です。さすがに、お母ちゃんとホテルに泊まります」
「そっか、じゃあ、大丈夫だよね。うちにおいで。今晩うちにお泊まり!」
るりかはすみれにウィンクする。
「ええ?」
驚くすみれ。
「あたしんちね、彩玉県だから、こっから一時間もかからないのよ。
他のペアとさ、差をつけよう。一緒に泊まって、そんで練習しようよ!」
「いいんですか!? え? 大丈夫かな、お母ちゃんに聞いてみないと」
「うん、電話して聞いてみてよ」
るりかは思っていた。
彼女をこのオーディションに絶対受からせて、名古屋に帰すんだと。
もちろん、自分だってオーディションを受けたからには受かりたい。
でもそれ以上に、彼女の真剣な夢に少しでもチカラになりたかった。
そうすることで、今回自分が中途半端な気持ちでオーディションに望んだ、
彼女への罪滅ぼしをしたかったのかも知れない。
いや、純粋に彼女のファンになってしまったのかも知れない。
とにかく、このまま結果を出すことなく、音雨すみれを名古屋に帰すわけには行かない。
その時の瀬々良木るりかの使命感に近い強い思いは、揺るがなかった。
「姉ちゃんが、芸能人を連れて帰って来た―――!」
という、愚弟、【瀬々良木さんご】が玄関で迎え入れるなり、あまりにも騒ぐものだから、彼の頭上に、とりあえずネリチャギ(踵落とし)を食らわして見た。
「ぐはああっ」
「こんばんはぁ!ようこそぉ~瀬々良木家(け)へ」
母は、ウキウキな感じで音雨すみれを出迎えた。
「良かったよー、お母さん家にいて」
るりかはホッとする。
「ふだんうちのお母さん働いてっからさ。でも今日はたまたま休みで」
「ちょっと、るりか。そんな家庭の事情話されても困るわよねぇ~」
とは母親。
「あの、お世話になります。音雨(おとめ)です」
すみれは戸惑いながら、母とさんごに挨拶をした。
「が、ガチで音雨すみれだっ!」
「こぉら、さんご! すみれちゃんのがアンタより一個上よ。呼び捨てにすんじゃないの!」
るりかはカリカリしている。
「お、音雨さん…!すみません…!」
すみれは素直な弟の反応がちょっと面白かった。
「はい、さんごくん」
戸惑ってはいたが、思わず、笑顔で返してしまう。
「ぃぃひぇぇぇ!」
呼ばれて、大興奮のさんごは、これから多感になる小6。
たしか主役のはずの英(はなぶさ)ちえりと同学年だ。
この頃はるりかと出会って無いし、学校も違うので面識あるなしのレベルにも達してないが。
それから彼女たちは夕食を食べ、お風呂に入った。
そして台本を片手に、夜遅くまで、真剣に読み合わせた。
「『許せない、あなたはあまりにも非道!
あの太陽が許したとしても、私だけはあなたを許すわけにはいかない!』」
すみれが、台本のセリフをつらつらと読みあわせていた。
彼女のキャラクターからは想像もつかない、低くて刺すような声と表情が、
るりかをゾクッとさせた。
「なんちゅうギャップ萌え…。ううん、憑依したってのが、一番的確かも」
「ひょ、ひょういですか? 乗り移っている感じですか?」
演技の評価が気になるのか、るりかの言葉に真剣に耳を傾けた。
「うんうん、つーかもともと子役のプロなんだからさ。劇団入ってたんでしょう?」
「あ、はい。いろいろあってやめちゃいましたけど」
「なら、あたしより演劇のこと知ってるでしょ~。
あたしらなんかホントにヘタのヨコヅキってやつだよ。
でも、うちの演劇部って先輩OGがシッカリしてて、
ちゃんと教えに来てくれるんだけどね。
結構有名な劇団に入った先輩も協力してくれるから
本格的にはやってるつもりなんだけど」
「るりかちゃんは、本当に演劇が好きなんだってわかります。
演じることが、大好きなんだって。
パワーをすごく感じます」
すみれは目をキラキラさせながら言った。
「おぉ~と目から星が落ちちゃうぜ、すみれ!」
と、るりかはちょっと照れくさそうに話を続ける。
「演じるのは好きだよ。
自分じゃない、誰かになるのは好き。
それはコンプレックスなのかもしれない。
でも、コンプレックスがあるおかげで、
演技に対しての向上心が生まれるなら、
このコンプレックスを持ち続けようって思ってる。
悩んで、もがいて、それでも上を目指して」
「るりかちゃん、それ何となくわかります」
「ほんと?で、あたしはそんな風に頑張る自分自身のファンでいてあげようって思ったの」
「それが凄いと思うんですよ」
すみれは重ねて感心した。
「でも、すみれ。今日すみれと出会って、ダメだってわかった。
演技が好きだって気持ちだけじゃ、ダメなんだってこと」
るりかは手に持っていた台本を思わずくしゃっと握り、そのままベッドに腰を落とした。
「え? それは、どんなことですか」
「うんとね、それは簡単には言えないな。あたしのプライドが許さないわ」
それは同じ女優を目指すものとして、るりかは完敗宣言をするに等しいことであった。
事実、完敗であると自覚していた。
しかしわかっていても認めちゃいけない、譲れないプライドもある。
るりかは、舞台女優になることが目標だった。
すみれは、その先に、誰かに夢と希望を与えたいというひとつ深い目標があった。
その一見小さな違いが、すみれと自分にとんでもない距離を生んでいる。
「??」
「すみれは、気にしなくていーの。
でもね、今日すみれに出会ったことが、私の14年の人生の大きな記念日だわ。
それはあなたが芸能人だからじゃないからね」
「るりかちゃん、あたしも。
こんなにこんなにお芝居のこととか、考えとか、夢とか語った友達なんかいなかったの!」
すみれは泣きそうな顔になった。
「みんなね、うちが昔テレビに出てたから、鼻にかけてるって。調子に乗ってるって」
「そりゃあ、嫉妬だね。完璧に。
だってすみれ、すごいオーラ出ちゃってるもん、あきらめなよ。
本物の人間の条件の一つは『嫉妬されること』なんだって」
泣きそうになったすみれの頭をぽんぽんと叩いた。
「じゃ、うちはホンモノってことやか?」
「そーそーホンモノ。
って、やだわ、『ことやか』ってなにそれ名古屋弁?
超可愛いのう!」
その晩、彼女たちはガッチリ練習し、また、るりかは練習以上に、すみれを健全と呼べる範囲ギリギリの中で弄んだのだった。