特別版『ふたりはプリキュアMilkyWay&ちえりパステルガァル!スペシャル・ハーモニック
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第11章「スペシャル・ハーモニック」

●もういちど『ちえり・マジック』

ラピス「ええっと………突然話を振られましたが、正直思いつく所がなーんにもありません」
ハニー「チェリー、わたくしも。あんな大きな相手に立ち向かう方法なんて………」

チェリー「えー」二人の返事の悪さに、チェリーが不満げな顔をする。「へーきだもん。大きさなんか、関係ないもん」
ラピス「関係あるでしょ。テキトーな事言わないの」
チェリー「ないもんっ!」キッパリと言い切るチェリー。「だってあのワルモノさん、言ってたもん。『力に、大きさは関係ない』って!」

その一言に「あっ…!!」と声を漏らすルミナス。
同時にちょっと前の記憶を思い出す。そう、デリートスの狙いがデラタコビークルだと聞かされ、その理由を問い質した、あの時。
アカネ「確かに………『色』の力に、店の大きさは関係無い。って言ってたね、あいつ」

ラピッド「そ~だった」
ラピッドも同じように思い出していたようだが、その一言から何か閃いたのか、口元に笑みを浮かべている。
ラピッド「今思いついたんだけどさ、あの超でかクマさんって、要するにダークネス・ガーディアンが集まったものだよネ」
ラピス「あっ! そっか………」閃きが連鎖したのか、ラピスも語気が強くなっている。「つまり、あたしたちの攻撃だって、絶対効かない訳じゃないんだ!」

セインフ「それに、あれだけ大きければ『ギャラクシエンヌ・スプレッダー』を回避できないはずだセイン!」
時の流れの熱い息吹を凝縮した、十二本のビームを叩き付けるプリキュアの大技である。
時の流れを凍て付かせようとするナラクーダの者たちには、最も効果的な点火燃焼力を持つ。
スワンフ「デリートスはナラクーダじゃないけれど、でもあのリバーサスの弟だから、きっと大丈夫なのスワン」

ハニー「でも、もしその『ギャラクシー』が効かなかったら…」
チェリー「へーきだよ、ハニー。ねっ、お姉ちゃん?」
この大ピンチに、不安一つ見せず、穏やかな笑顔を見せるチェリー。
この幸せな顔を見ていると、本当に何とかなってしまいそうな気がする。
ルミナス「うん!」ルミナスはハニーの方を向くと、チェリーに倣って穏やかな笑顔を見せる。「大丈夫よ、ハニー。みんなで力を合わせて、このピンチを乗り越えましょう!」
ハニー「あっ…はっ、はいですのっ!」
ハニーは明るく返事を返すと、ルミナスの手を両手でぎゅっと握り、そのままピタッと体を寄せた。

ハニーが元気になったのを確認すると、改めてチェリーの方を見つめる。
ルミナス「ありがとうチェリー。今回はずうっと、あなたに助けられてばっかりね」
誉められたのが嬉しかったのか、チェリーは恥ずかしそうにエヘヘと笑いながら、ハニーと同じようにピタッとくっつく。

●レッツ、チャレンジ!

デリートス「何を企んでいるのか知らんが、無駄な事だ!」
その間に、ガーディアンに取り込まれたデリートスが追いかけて来た。
デリートス「今度こそ、確実に星の藻屑にしてやるぜ」
ガーディアン「ぐおおおお~ん!!」
宇宙にフヨフヨと浮かぶクマの姿は大変滑稽だが、今度体当たりをされてしまえば、恐らくミルキーウェイシップは壊され、全員が星の海に投げ出されるに違いない。

ラピス「や~なこった!」
んべー、と舌を出して挑発するラピス。
ラピス「おっしゃ、ここは一発『クラッシュ・アンド・ブレイク』といくわよっ!」
かあら「言い方格好いいけど、それ『当たって砕けろ』って意味カラ!」
ラピッド「案外間違ってないんじゃない? …それじゃあ、チャレンジしてみますか!」
ルミナス「うんっ!」
チェリー&ハニー「おーっ!!」

甲板の端に立ち、超巨大ガーディアンを迎え撃つガールズ戦士達。
アカネ「ホラ、あたし達は隠れるよっ」
ぱれっと「は、はいなのれす~」
アカネはぱれっととかあらを抱えて、マストの陰に隠れる。
アカネ「頼んだよ、あんた達…!」

ラピッド「先鋒はアタシ達が行くわ!」
ラピス「了~解! あたし達はあなた達に合わせるから、思いっきりやっちゃって!」
ラピッド「オッケイ!」
ルミナス「お願いします!」
ルミナスとラピッドは顔を見合わせ、「うん!」と頷くと、互いの手を繋ぐ。
そこから七色の光が生まれ、輝き、二人の全身に広がり、優しく包んでいった。

ルミナス「天(あめ)輝く時、プラス!」
ラピッド「宙(そら)翔る時、アルファ!」
プリキュア「プリキュア・ギャラクシエンヌ・スプレッダー!!」

二人がもう一方の手を前に突き出した瞬間、極太のレーザーが巨大ガーディアンに激突。激しい閃光が巻き起こる。
チェリー&ハニー「きゃあああっ!!」突然発生した、光と音の衝撃に驚くチェリーとハニー。「うっ、うわあ~!」
ラピス「うっ、嘘でしょ!?」ラピスも光輝の渦を唖然としながら見つめる。「凄すぎじゃん、プリキュアって。…コレだけでいけるんじゃない?」

●悪食

 
しかし。
ガーディアン「うぐおおお~ん!!」
超巨大ガーディアンはビームの衝撃を受けたまま、大きな口を開けようとする。
ラピッド「何を、するつもりなの!?」
そして、大きな口をガバッと開けると、ビームをその口の中にどんどん飲み込んでいく。
ルミナス「そっ、そんなあぁ!!」

デリートス「ククッ…まったく、とんだ悪食だな」
この行為は、どうやらデリートスの意志では無いらしい。
デリートス「どうした? 足りないようだから、もっと食わせてやってくれよ」
ガーディアン「ああおおおおーん!!」
口を開けたまま、ギャラクシエンヌ・スプレッダーを飲み込み続けるガーディアン。
苦しんでいる様子はまったく見られない。

スワンフ「おっ、おかしいのスワン! 光の輝きが、どんどん無くなっていってるのスワン!」
セインフ「まずいセイン! 『ギャラクシエンヌ・スプレッダー』が『侵色』されているんだセイン!!」
二人の言う通り、『ギャラクシエンヌ・スプレッダー』の光撃が、徐々に鈍くなってきている。
ラピッド「アンビリーバブル! アイツがお腹一杯になる前に、アタシ達の方がヤバイわよ!!」
ルミナス「もう、ダメ…このままじゃあっ………!!」

●スペシャル・ハーモニック

弱気になり、涙目になったルミナスの目の前に、チラリとピンク色の、花びらのようなものが見える。
ルミナス「えっ?」
それは一枚だけでなく、十枚、百枚と数が増えていき、やがて二人の目の前で艶やかな花吹雪と化していった。
ラピッド「ほ、ホワ~ト?」
花びらはそのまま、ギャラクシエンヌ・スプレッダーの輝きの中にヒラヒラと吸い込まれていく。

するとその直後、
ガーディアン「ぐお!? ああおおう~うう!!」
今まで余裕でビームを吸い込んでいたガーディアンが、苦しそうに口を閉じようとする。
デリートス「どうした、こんな花びら程度で!?」

チェリー「悪い事、もう止めようよっ………」
花吹雪を放っているのは、足を大きく広げて、両手で『チェリーロッド』を構えた、パステル・チェリーである。
チェリー「『サク・ラ・ブ・リザード』っっ!!」
チェリーの全身が桜色に輝き、その光の中から美しい花吹雪が舞い上がる。
それはプリキュアの放つ『ギャラクシエンヌ・スプレッダー』の渦に吸い込まれ、淡いピンクに染め上げていった。

ラピッド「ナイスフォロー、チェリーっ!」
ルミナス「チェリー、ありがとう!」
二人に誉められて、エヘヘっとはにかむチェリー。

デリートス「また貴様か、パステル・チェリー!」
デリートスの指示でガーディアンが右手を掲げると、そこから小さな光弾がチェリーに向けて放たれる。

 
しかしチェリーに当たる直前で、ラピスの水晶剣がそれを防いだ。
ラピス「抜かせないっ言ってんでしょ!!」

ハニー「今ですわ! 『ハニースター・ニードル』っ!!」
ガーディアンの攻撃の隙を狙って、がら空きになった腋の下に『ハニースター』の大玉をぶつけるハニー。
ガーディアン「ああおおおおーん!!」
ハニースターは見事に命中、苦悶の声を上げるガーディアン。
大玉が当たった箇所に、わずかだが小さな穴が空き、その中から赤黒いものが見える。
スワンフ「あそこを狙うのスワン!」
セインフ「ギャラクシエンヌ・スプレッダーを『連射』するセイ~ン!」
ルミナス&ラピッド「うんっ!!」

ルミナス「天(あめ)輝く時、プラス!」
ラピッド「宙(そら)翔る時、アルファ!」
プリキュア「プリキュア・ギャラクシエンヌ・スプレッダー!!」
極太のレーザーは、黄道十二星座をイメージした、十二本のビームに分裂する。
それぞれがまるで意志をもっているかのように、超巨大ガーディアンの全身を炙っていった。


その中の二本------うち一本はさらに分かれ、二本に増える------がガーディアンの側を離れ、そ れぞれの光は、徐々に少女の姿と化していく。
ひとりは大きな翼を纏っており、もう二人は双子なのか、髪型以外は似たような容姿。
三人の少女は手に持った弓矢を構えると、先ほどハニーの攻撃で露出した『穴』を狙って、光速の矢を命中させた。
ガーディアン「おおおおん~~~!」
急所に直撃を喰らい、苦悶の声を上げる特大ガーディアン。やがてその体から閃光がほとばしる。

そして、
ガーディアン「ウガアアアッ!?」
という絶叫と共に、
ガーディアン「ごおおおおお~~~ん!!」
と、すさまじい大爆発を起こした。

その光は幾億の銀河の中に振りまかれ、それぞれの欠片は美しく輝き、そのまま消え散っていく------。

●決着、付けましょ

やがて閃光は消え、銀河に穏やかな時が戻った。
巨大ガーディアンに取り込まれていたラッコ型小惑星も、どうやら元の軌道に戻っていったようである。

ルミナス「う、う~ん………」
『ギャラクシエンヌ・スプレッダー』の連射で力尽きたのか、それとも平穏な状況に安心したのか、ルミナスは膝をつくと、そのままバタリと前のめりに倒れてしまった。
ラピッド「ルミナス!?」
チェリー「お姉ちゃん!?」
ルミナス「大丈夫、ちょっと、目眩が…ううんっ………」
セインフ「しっかりするセイン。…まだ終わってないセイン!」
スワンフ「船首の方なのスワン!」
スワンフに指摘されて、慌てて船首を振り向くプリキュアとチェリー&ハニー。

いつの間に脱出していたのだろうか。そこにはシミターを構えたデリートスが、鬼のような形相でこちらを睨み付けていた。
その前に、大剣を構えたパステル・ラピスラズリが立ちふさがる。
ラピス「この前の決着、付けましょ」
それだけ言うと、ラピス・ブレイドを両手で構えた。

ルミナス「ラピス………ううっ」
ラピッド「ルミナス、無理しないで。ここはアタシがっ」
万が一のため、ラピッドは二歩ほど前に出ると、いつでもラピスに加勢できるよう呼吸を整えつつ、状況を見守った。

●最後の一太刀

デリートス「行くぜ」
たった一言、ゆっくりと言い終えた後、一呼吸。その直後に、デリートスは一飛びでラピスとの距離を詰めた。
その勢いを乗せたまま、シミターをラピス・ブレイドに叩き付けようとする。
ラピス「っうっ!!」
これを防ごうと、ラピスは水晶剣を構える。

しかし。シミターは寸前でラピス・ブレイドを避け、手前の花畑に直撃した。
ラピス「えっ!?」
ブワッと広がる花吹雪によって、一瞬視界を奪われてしまう。
不意打ちを予測し、改めて防御を固めるラピス。しかし視界が戻った時には、目の前にデリートスの姿は無かった。
ラピス「なっ? しまっ…!!」

デリートス「悪いな」
ラピスを抜いていったデリートス、そのままピュアキュアラピッドに向かって突っ込んでいく。
ラピッド「こっ、このおっ!!」
デリートス「砕け散れ!」
鋭く叫ぶと、デリートスはクルリと背中を向ける。
振り返った時に、恐らくシミターの、本命の一撃が来る。そう予想したラピッドは、白刃を掴んでやろうとデリートスの腕の動きを追った。
失敗すれば真っ二つだが、ルミナス達が後ろにいる以上、避けるわけにはいかない。

ラピッド「もらったぁ!!」
斬撃を見切り、ラピッドは両手でそれを挟み込む。
しかし、その手が握っていたのは………シミターではなく、デリートスの拳であった。
ラピッド「えっ!?」
デリートス「フン、もらったのは、俺様の方だ」
ラピッド「どっ、どういう…!?」

アカネ「ひかり、上だよっ!!」
唐突に、どこかに隠れているはずのアカネの声が聞こえる。
チェリー「お姉ちゃんっ!!」
ハニー「お姉さまっ!!」
その声と同時に、チェリーとハニーの二人が、ルミナスに覆い被さってきた。

デリートスがラピス&ラピッドに襲いかかって来てから、ルミナスはその戦いの行方ばかり注視してしまっていた。
そのためそアカネが何を叫んでいるのか、その意味が咄嗟に判らなかった。
チェリーとハニーが覆い被さり、一体何事かとルミナスが顔を上げたとき------

ザシュッ! …という重苦しい音と共に、デリートスのシミターが、丁度折り重なっているチェリーとハニーの体に激突した。

●最後の最後で

チェリー&ハニー「うっ、ううん………」
シミターの直撃を受けた二人は、意識を失いルミナスの胸の中へ倒れ込む。
ルミナス「チェリー、ハニーっ!? …そ、そんな、ぁ…!!」

デリートスの狙いは初めから、ひとり力尽き、へたり込んでいるルミナスであった。
ラピッドの前で背中を向け、振り返る寸前、ルミナスに直撃するようにシミターを上空に放り投げたのである。

ラピッド「なっ、何てことをっ!!」
ラピス「あんたぁッ!!」
ラピッドとラピスの怒りの一撃は紙一重で避けられ、デリートスに大きく距離を取られた。
デリートス「フン。忘れたのか? 俺様は、ワルモノだぜ」
当然だろう? …という言い方をしながら、最高に嫌みな笑顔を見せるデリートス。
その顔が、唐突に苦痛でゆがんだ。
デリートス「だが、最後の最後で………外したか」

えっ? …と小さな声を上げるラピッドとラピス。
ふとルミナス達の方を振り返ると、チェリーとハニーの背中にはシミターは突き刺さっておらず、灰にまみれているだけであった。
ラピス「あ、あり?」
ラピッド「あっ!! これって、まさか…!」

デリートス「ああ。どうやら、ここまでら…しい」
急に霞んで消えそうな、苦悶の声を上げるデリートス。
よく見ると、体のあちこちから灰がこぼれ出ていた。

ラピッドとラピスが、デリートスに一体何が起こっているのか、理解した直後。
デリートス「『色』を奪われるのは、俺様の方、か………」
それだけ言い切ると、デリートスは花の絨毯の中に、ゆっくりと仰向けに倒れ込む。
バフッという気の抜けた音と共に、デリートスの体は灰となり、花畑の中に溶けるように消え去っていった。