特別版『ふたりはプリキュアMilkyWay&ちえりパステルガァル!スペシャル・ハーモニック』
第4章「お披露目、新メニュー」
●たこ焼きモッフル
ゆとり「ひかり、鉄板があったまってきたみたい。そろそろイケるよ」
ひかり「ありがとっ」
ゆとりが鉄板から離れて横に下がり、代わりにひかりが鉄板の取っ手を持ち上げた。
ひかり「まず薄いお餅を、鉄板の上に乗せます」
そう解説しながら、ひかりは両手で薄いお餅を持ち、その端を鉄板に押し当て、やわらかくなった端同士を貼り合わせる。こうして、正方形の薄いお餅シートが出来上がった。
ひかりはこのお餅シートを2枚作り、鉄板の上に並べる。
ひかり「この鉄板は、モッフルを2個同時に作れるんです」
ゆとり「サクサクっと食べ切っちゃうから、すぐ次が欲しくなっちゃうんですよね~」
ひかる「お餅なのに、サクサクなの?」
るりか「いや、たぶんそう言う意味じゃないんじゃないかな?」
みつば「お餅はモチモチで、サクサクじゃないですの~」
ちえり「だよね~」
お姉様方に揃って否定されると、男の子としては辛いものである。ひかるはちょっと泣きそうな顔になった。
ゆとり「ううん、ひかる君、ご名答! 実際は食べてのお楽しみ。ネっ」
ひかり「うん! …それから、たこ焼きをこの上に…こういう感じで…サンドします」
ゆとりが喋っている間に、ひかりはお餅シートの上に冷えたたこ焼を4個ずつ載せていた。
さらにもう2枚お餅シートを作って、たこ焼の上にはみ出ないように載せる。
ひかり「そしてっ!」
上の鉄板でお餅に蓋をする。しばらくすると鉄板から湯気と、ジュワッというお餅の焼ける音が聞こえてきた。
ひかり「この湯気が出終わったら完成です。ビークルのコンロの火力は強いので、大体2・3分くらいですね」
アカネ「なるほど。時間が掛からないってのは、ウチらにとっては大事だね。調理時間に関しては、合格かな」
ひかり「ありがとうございますっ!」
みつば「どんなごちそうができるのか楽しみですね、ちえり様っ」
ちえり「うん!まだかな、まだかなっ、まだかな~♪」
ちえり、その場でクルクルと回り出すと、両足のつま先でタタン、タン、タンとリズムを取り始める。
ゆとり「おっ、タップダンスできるんだ、ちえりちゃん?」
ちえり「ヒップホップだよ-」本人はそう思っているらしい。「これはね、早くお餅が焼けますように、ってダンスなの♪」
るりか「どんなダンスなのよ、ソレ!」
ひかり「あっ、湯気が無くなってきました…そろそろですね」
ほらね、と自慢げにるりかを見るちえり。
いや違うからね、とるりかもちえりを見返す。
ひかり「それでは、上手く焼き上がっていますかどうか…」
と言いながら、パカッと鉄板を開くと…
ちえり&みつば「わあっ!!」
るりか「おおう!!」
ひかる「うわあ…!」
アカネ「へええ、こうなるんだ~!」
中から真っ白くて四角いワッフル…モッフルが姿を現した。
お餅が鉄板の型どおりにキレイに焼きあがっており、それは『お餅』だと言われなければ、何の材料で焼き上げたのかは分からないだろう。
間に挟んだはずのたこ焼きはほとんど見えず、焦げ目もまったく見えない。
ひかりは焼き上げたモッフルを4等分に切り分けて、ソースをハケで塗り、青のりをパラパラと振りかけた。
ひかり「できましたっ!お熱いうちに、お召し上がりください!!」
わーっ、とみんなから歓声をもらう。ひかりは恥ずかしいやら嬉しいやらで、頬を真っ赤に染めた。
●お味はいかが
一同「いただきまーす!」
と手を合わせると、一口大のモッフルの手で掴み、口の中に放り込んだ。
ひかり「よく噛んで味わってくださいね」
言われたとおりによく噛んでみると、パリパリッと歯切れの良い音がする。
ちえり「んん!おもちなのに、サクサクしてる!」
みつば「本当ですの!サクサク・ポリポリして、おいしいです~!」
るりか「見てみて。お餅の中に隙間が出来てて、そこにたこ焼きが入ってる感じになってるよ。これなら食べやすいね」
ちえり&みつば「うん!」
不思議な感触と味わいを楽しんだふたりは、ゴクリとモッフルを飲み込むと、
ちえり&みつば「おいしい~♪」
と声を合わせた。
アカネ「うーん、何だかサクサクしすぎて、たこ焼きが入ってないと物足りないね~」
ゆとり「でしょう?アタシもついつい食べ過ぎちゃうんですよ、コレ」
ひかる「ごちそうさまー」
ちえり「おかわりくださーい!」
みつば「みつばも頂きたいですの~!」
るりか「遠慮しなさいって。こういうのは、年長者から頂く決まりになってるんだから」
要するにお代わり希望、という意味である。
アカネ「あたしも欲しいな~。こりゃクセになりそうだねぇ」
ゆとり「アタシもお代わり!ひかり、次作ってよ~」
ひかり「わかりました! では…」ひかりはちょっと考えた後、「お代わりの代わりに、このモッフルを使った、デザートをご用意します! こちらも食べて頂けますか?」と切り出した。
ちえり&みつば「デザート!?」
ひかり「はい!」満面の笑顔で肯く。
ゆとり「ひかり、デザートなんていつ作ったの? アタシ、試食させてもらった事無いんだけど…」
ひかり「え、えっと、それは…」
何故か言葉に詰まるひかり。
アカネ「サプライズって訳だね。いいよ。とにかく作ってよ。あのサクサク感、もう一度味わってみたいからね」
ひかり「わかりました!…ではお餅を焼きますので、5分ほど待ってください」
ちえり&みつば「お願いしまーす!」
●驚愕のデザート
ひかりはビークルの調理台に戻り、次のモッフルを焼く準備を始めた。
鉄板を綺麗に拭き、もう一度コンロの上に置いて加熱する。
ひかり「今度は普通のお餅を使います」
と言いながら取り出したのは、お店でよく売っている、一切れサイズの四角いお餅である。
そのお餅をそのまま鉄板の上に載せて、パタンと蓋を閉めた。
それからビークルの冷蔵庫を開け、ミルクアイスのカップを取り出す。
アカネ「アイスだったら、ソフトでお出してるのを使っていいよ」
ひかり「あ、いいえ、これは…バニラビーンズの入っていない、純粋にミルクの味が楽しめるアイスなんです」
答えながら食器棚からスプーンとボウルを取り出し、スプーンでアイスをすくってボウルの中に入れ、やわらかくなるように練り込む。
調理の手際の良さに、ちえりとみつばはポケーっと魅入っていた。
ひかり「それから…これを使います」ひかりは調理台から、黒色の液体が入った瓶を取り出す。「できれば、この作業は見て欲しくないんですけど…」
ちえり&みつば「やだー」観客からブーイングが飛ぶ。「みたいのー」
アカネ「そういう訳にはいかないよ。…ところで、ひかりぃ」アカネ、口元をニヤリとさせる。「本当にそれで、アイスに味を付けるのかい?」
ひかり「は、はい…」
アカネの言動にイタズラっぽい響きを感じたゆとり、気になって、
ゆとり「ひかり、ソレ一体なぁに? 秘密のシロップ?」
と問いかける。
ひかり「いえ。これは………お、お醤油、です!!」
ゆとり「………。はひ!?」
一同「おしょうゆ!?」
ひかり「はい。これを…こうするんですっ!」
大声で叫ぶと、ひかりはボウルに盛ったアイスに、醤油を一回し注いだ。
るりか「ああっ、ちょ、まっっ!?」
ゆとり「あああああっ、アンビリーバブル!!」
ちえり「おしょうゆ…かけちゃったぁ…!!」
みつば「う、んんん…!」
みつばはまた空気を読まない発言をしないよう、両手で口を塞いでいた。
ちえりとるりか、そしてゆとりやひかるまでもが、金魚のように口をパクパクさせている。
ひかりのあまりの凶行ぶりに、ビークル周辺の空気が見事に凍った。
ひかりはあえてゆとり達の方を見ず、醤油のかかったアイスを良くかき混ぜる。ボウルの中から、醤油のいい香りが漂ってきた。
次に、丁度湯気の出なくなった鉄板をパカッと開く。中のモッフルはやはり焦げ目なく、真っ白に仕上がっている。
そのモッフルをまな板に置いて四つ切りにし、皿に盛り、例の『お醤油アイス』をたっぷり乗せる。
…非難やツッコミを受けるのが怖いのか、その作業は先ほど以上にスピーディであった。
ひかり「できました! どうぞ、お召し上がりくださいっ!!」
ひかりは顔を下に向けたまま、出来上がったデザートをテーブルの上に置いた。
ところが、と書くべきか。それとも当然と書くべきだろうか。
先ほどと違い、誰も手を出したがらない。
一見するとチョコレートアイスに見えるが、その色が何で付いているのか、ここにいる全員が知っているのである。
アカネ「みんな食べないの? んじゃ、あたしから頂くよ~」
アカネは皿の中の物体に手を伸ばすと、ゆとりの「あっ、ああっ」という声を無視して、その一片を口に入れる。
目を閉じてじっくりと噛み含むアカネ。口の動きに合わせて、みんなの顔が上下に動く。
アカネ「うん!」と頷きながら、モッフルの皿を差し出す。「まぁ食べてみな。これビックリするよ~」
アカネの毒味の結果が案外平穏だったのに安心した一同、恐る恐るモッフルに手を出す。
五人はアイコンタクトをしてから、覚悟を決めて口の中に投げ入れた。
ゆとり「んん!?」驚きで目がまん丸くなる。「アンビリーバブル! これ美味しい!!」
るりか「うっそおん!! なにこれ、奇跡!?」
アカネ「美味しいだろ? まるでみたらし団子みたいな味がしないかい?」
ゆとり「そうそう、ソレです! 甘みと塩味が、良いバランスなんですよ~」
るりか「うんうん! これあたし、ハマりそ~♪」
ひかる「甘くてしょっぱいね」ひかるも笑顔で口をモグモグさせている。「でもおいしいよっ」
反響の大きさに、ひかりも少しだけホッとした。
しかし、
みつば「ごちそうさま…ですの…」
ちえり「ちえりも…ごちそうさま…」
ふたりは全部食べきる事が出来ず、半分以上残ったモッフルを皿に戻す。
るりか「食べないの? んじゃ、あたしがもらうけど~。この味はお子さまにはまだ早いかな?」
みつば「お子さまじゃありませんの! …でも」
ちえり「美味しかったよ。けど、ちえりには…」そこから先は言いづらそうだ。「…ちょっと…」
ひかり「みつばちゃん、ちえりちゃん、ふたりともありがとう。わたし、気持ちだけですごく嬉しい」
ちえり「お姉ちゃん…」
みつば「ごめんなさい、ですの…」
ひかり「ううん、本当にいいの」首を小さく左右に振るひかり。「このデザート、アイディアは暖めていたんですけど、なかなか思い通りの味にできないんです。昨日も失敗したので…。お醤油とソフトの配合を色々試したかったんです。でも…」
ゆとり「そっか、それでお披露目するのを躊躇してたんだネ。ゴメン、ひかり! アタシまたセッカチやっちゃったみたい…」
ひかり「ううん。でもゆとりの言うとおり、わたしの性格だったら永遠にお披露目できなかったと思うな…これ」
るりか「うんうん」ちえりの分を頬張ったるりかが、ウンウンと肯く。「これ自分で試すだけでも、絶対勇気いるなぁ。でも、あたしは断然支持ですね~。メインのたこ焼きといい、これ絶対売れますって!」
ひかり「あっ、ありがとうございますっ!」
るりかの褒めちぎりっぷりに、ひかりは耳まで真っ赤にして、恥ずかしそうに頭を下げた。
●さて判定は
アカネ「お姉ちゃんは大絶賛みたいだね」アカネはちえりとみつばの方を向く。「さて。あんたたちの判定は、どうだい?」
みつば「うーん、ちえり様、ええっと…」
ちえり「うっ、うん…ちえりは…」
お醤油の方はあんまり、と言いかけて、ふたりはふとひかりの方を見てしまう。
ひかりは悲しそうな、申し訳なさそうな顔をしていたが、ちえりとみつばの視線に気づくと、フフっと寂しげな笑顔を向けた。
その笑顔に不吉なものを感じた二人、
ちえり「は、はぃっ!! ととととと、とっても、おいしかったですっ!! ね、ぶんぶん?」
みつば「はっ、はははは、はいですの、はいですのっ!」
と、必死でフォローする。
アカネ「子供が遠慮なんかしなくていいんだよ。あんたたちの感想は、顔にバッチリ書いてあるからね」
みつば「か、かお…!?」
本当に何か書いてあると思ったみつば、思わず両手で顔を隠す。
ちえり「でっでも、でも、それだと………お姉ちゃんのメニューは、メニューは………」
ちえりの声がだんだんか細くなる。アカネが以前話していた『美味しかったら、メニューに追加してあげる』という件を覚えていたのだ。
アカネ「ああ、それかい? …その結果は、ひかりが一番良く判ってるんじゃないかな」アカネ、ひかりの方を振り向く。「んん?」
ひかり「はい…」ひかり、ちえり達にもう一度頭を下げる。「ありがとう。本当にごめんなさい。…今はまだ、メニューに追加してもらうのは無理だと思う」
ちえり&みつば「そ、そんなあぁ…!」
アカネ「今は、だよ。金輪際ダメって事じゃ無いさ。」アカネはちえりとみつばの手を取る。「まぁデザートは外したっぽいけど、モッフルの感触、アレは良かったからね~。絶対ヒットさせるよ、コレ!」
アカネの笑顔を観て、どうやら大丈夫だと思った二人に笑顔が戻る。
ゆとり「やったぁ! とりあえずアカネさんに認められて良かったね、ひかりっ!」
ひかり「うん! …でもこのアイスも、もっと色々試さないと…」
ゆとり「アイス以外にも、結構何でも合うんじゃない?色々試してみないとね~」
るりか「期待してますね!」るりか、ひかり達に頭を下げる。「じゃあ、あたしたちはそろそろ…今日は本当にありがとうございます。ごちそうさまでした!」
みつば「とっても美味しかったですの!」
ちえり「ごちそうさまです~!」
ひかり「お粗末様でした。お忙しいのに、こちらこそありがとうございます」
アカネ「無理矢理呼び止めちゃって、ゴメンね~」
ひかる「またねっ、お姉ちゃん~♪」
ゆとり「ちえりちゃん」ゆとり、ちえりとみつばの前にしゃがみこみ、ふたりの頭をナデナデする。「みつばちゃんも、サンキュ。アナタ達のおかげで、ひかりがムクムク復活できたんだしっ」
みつば「えっ?」
冷えたたこ焼きをゴミと発言したり、お醤油アイスを食べきれなかった事を思い出したみつば、ちょっと戸惑う。
みつば「でも、みつばは…」
ひかり「ううん」と、首を横に振る。そして「今度はお二人に完食してもらえるように、頑張ります。また食べに来てくださいねっ!」と、必殺の笑顔を返した。
ちえり&みつば「はあ~~~いっ!」