今日、10月18日はバージュうちの子記念日。急激に寒くなった10年前のこの日、うちの中へと迎え入れ、めでたく我が家の家族の一員となりました。














こちらに引っ越して来てから、何故だかツーショットが増えました。特に仲良くなったワケではないのですが(笑)

毎年、バージュうちの子記念日の度に、「急に冷え込む頃だなぁ」と思いますが、今年はまだ暑さが残り(昨日は29℃)、扇風機が片付けられません。

うっかり書き忘れていましたが、ちょうど1ヶ月前の9月18日は、ノアゴンうちの子記念日でした。ごめん、ノアゴン!
ノアゴンはフランスで家族になって14年目。偶然にも、バージュと1ヶ月違いです。
2人とも、イキイキ健康で朗らかに過ごしてくれている事が何より素晴らしいです。





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お久しぶりのコンサートアクシデントシリーズです。
今回は日本でのコンサート、藤原由紀乃さんです。私がまだ中学生か、高校生になった頃でした。その頃、由紀乃さんの真摯な……と言うのを通り越し、何か慈悲深ささえ感じるような演奏の姿勢に感銘を受け、何度かリサイタルに行っていました。
今思えば、一途でどこまでも真っ直ぐな態度、お姫様のようなパステルカラーのフワフワのドレス、平安貴族のような純和風なお顔立ちなど、どこを取っても私とは真逆なところに惹かれたのかもしれません。


その日も、由紀乃さんのリサイタルを聴く為に、赤坂のサントリーホールに向かいました。サントリーホールは、開場の前に外の壁面が鳩時計のように開いて鳴るパイプオルゴール音楽が可愛くて楽しいので、少し早めに行ってこれを見て、すぐ隣のサンドウィッチ屋さんで小腹を満たしておくのが私の定番。
ところが、この日は何やら様子が違います。ホールの前で幾つものダンボール箱を置き、そこからお花を取り出しては手渡して謝っている人たちの姿が。私も近付いて行ってみると、その中の一人の女性が
「藤原由紀乃のコンサートにいらした方ですか?実は藤原由紀乃が体調を崩しまして、本日の公演は中止になりました」……

!!!今まで数々のコンサートを聴いて来ましたが、公演中止と言う経験はこの時だけです。
私が高崎から来たと言うと非常に申し訳なさがって、お花をたくさん下さいました。
まぁ、今の時代ならば、メールでお知らせが来たり、ホールや演奏者のホームページで中止の情報が得られるワケですが、その当時はインターネットも携帯も無い時代だったので、チケットを買った人たちがほぼ全員サントリーホールまで来た為、ホール前は凄い人でした。こう言う事もアナログな時代ならではで、今ではなかなか見られない光景かもしれませんね。


聞くところによると、由紀乃さんは、ドイツでの師(独り身だったおばあちゃま)への献身的な看病・死語の整理で疲れ果て、自らの体調を崩してしまったとか。本番に向けて体調管理するのはプロの使命ですが、演奏家も生身の人間ですから、時にはどうにもならない健康状態に陥る事もあるものです。況してやそのような事情を聞くと、人間的な優しさを感じ、更に応援したくなったりもするものです。


数ヶ月後、復活リサイタルが行われました。場所はもちろん、サントリーホール。大ホールは殆ど満席でした。

ここからが今回の「コンサートアクシデント」の本題。
この日も少し早めに会場入りすると、私と母の隣の座席には品の良い老夫婦が座っていらっしゃいました。私たちが座席に着くと、可愛らしいおばあちゃまがにこやかに
「どちらからいらしたんですか?」
と話し掛けて来ました。暫く談笑していましたが、また
「どちらからいらしたんですか?」
と訊ねるおばあちゃま。それが3度目、4度目となり、他のお話も同じ事を何度か繰り返され、そのおばあちゃまが老人性のご病気だと気付きました。すると、上品なおじいちゃまが
「家内はちょっとボケが始まっていて、同じ事ばかりお話してすみませんね」
と耳打ちされました。
おばあちゃまご自身も
「あ、これはきっとさっきもお訊きしているわよね。ごめんなさいね」
と言って、恥ずかしそうに微笑む姿が何ともキュートだったのをよく覚えています。

コンサート中、演奏は熱心に聴き入り、休憩時間には、昔からクラシックが大好きで、夫婦でこうしてコンサートを聴くのが何よりの楽しみだとお話して下さいました。

由紀乃さんはいつにも増してひたむきな演奏で、前回ドタキャンのお詫びの気持ちもあったのか、次々とアンコール演奏をしていました。何曲も続くアンコール……やはり病み上がりで疲れもあったのでしょうか、ショパンの木枯らしエチュードを弾き始めた時、
「あ!」
と声を上げて止まってしまいました。
シーンと静まり返る会場。
その張り詰めた空気を和らげるように、うふふと笑ってまた弾き始め、最後まで弾き切ると、一段と大きな拍手が送られました。
ところが、お隣のおばあちゃまは
「お可哀想に、こんなに頑張られて。もうお疲れなのにお気の毒だわ。私、もう拍手をしない」
と言って拍手を止めてしまいました。
何だか拍手をしづらくなる私たち。

そんな様子を見て、
「拍手をして差し上げなさい。それが演奏家には一番嬉しいんだよ」
と諭すおじいちゃま。
それに対して
「いいえ、拍手をしたら、この方はまた頑張ってしまわれるもの」
と急に頑なになるおばあちゃま。
暫く押し問答をしていましたが、どうにかコンサートは終了。
「いや~、すみませんね。病気になってから、変に頑固なところがあるんですよ」
と私たちに詫びるおじいちゃま。
「だってお可哀想なんだもの」
と、少しだだっ子のように拗ねているおばあちゃま。

それでも最後には、お隣に私たち親子が居た事で助かった、最近はコンサートに出掛けるのも難しくなって来ていたので、最後までちゃんと聴けるか心配していたと話され、お2人仲睦まじげに寄り添って帰って行かれました。
上品な老夫婦としか見えない後ろ姿に、またこうしてコンサートに来られますように、と祈らずにはいられませんでした。


この後、由紀乃さんのコンサートには行っていませんが、非常に思い出深い、特別なコンサートとなりました。