月に一度の恒例(いつの間に?)、お薦めクラシックです。



シューベルトはご存じの方も多いのではないでしょうか?
“わらべは見たり~♪”の野ばらや魔王、ピアノ五重奏「ます」はクラシックを聴く事の無い人でも知っていると思います。




シューベルトは実に親しみ易く、その語り口は朴とつとして純粋です。以前ご紹介したシューマン(3月24日「シューマン中毒」)の様な、激しい感情の揺れやめくるめく世界、幻想や童話的な物に溢れた音楽とは全く趣が違います。 内気な青年が、恥じらいながら歌っているかの様なピュアで美しい音楽です。



楽興の時(6曲構成で、第3曲は非常に有名なのできっと聴けばわかると思います)や、有名な即興曲たち。ベートーベンとも似ていますが、あれ程の押しの強さは無くて、ロマン派の入り口の見える曲想。




後期のソナタ、特に最後のソナタは、私がおばあさんになって、体力も衰えて、脂も抜け切ったシワシワになった頃に是非、弾きたい曲です。




シューベルト弾きとして定評のある、女流ピアニスト、マリア・ジョアオ・ピレスで聴いてみては?(ショパン弾きとも言われますが、ショパンではやや回りくどく野暮ったく思いますが、シューベルトは◎)
◆シューベルトピアノソナタ14番&楽興の時他


ドイツグラモフォン(ポリドール社)

マリア・ジョアオ・ピレス





そしてブラームス。ロマン派を代表する、ドイツの三大B作曲家の一人。因みに後の二人はバッハとベートーベンです。ブラームスの有名曲と言えば、ワルツとハンガリー狂詩曲かな。ハンガリー狂詩曲は、よくパリなんかでは、メトロの中や路上で小銭をねだるアコーディオン弾きが弾いている曲です。




ブラームスの魅力は何と言っても、その深みのある叙情的でありながら、渋くて寂しげでとんでもなく美しい所。そして温かい。少し年上のシューマンとは大親友でもあり、その妻クララはシューマンの死後ブラームスと恋愛感情も持ちながら、共に頼りにし合う存在となりました。音楽的影響は多大で、似た部分もありますが、感性豊かな天才シューマンよりも実直でドイツ的な重厚感があるのがブラームス。ややマーラーめいた(マーラーがブラームスめいたと言うべきか)感じも人々を惹き付けて止まない理由でしょう。




ブラームスでは特にお薦めしたい3曲。いずれも晩年の作品です。
・3つの間奏曲 作品117
・6つの小品 作品118
・4つの小品 作品119




ブラームスは断然、ストイックロマンチック(!?)な、ラドゥ・ルプーのピアノでどうぞ!
◆ブラームスピアノ小品集 (作品117~119とラプソディー2曲を収録)

ロンドン(ポリドール社)

ラドゥ・ルプー





私がシューベルトとブラームスに惹き付けられた大きなきっかけとなった先生が居ます。ドイツ人のピヒト先生と言うおばあさま。先生との出会いは高校時代、日本で講習会を受けた時のこと。




80歳を過ぎていたピヒト先生は、ターシャ・テューダーの様な容貌で、まるで神様の様な穏やかさと朗らかさ、優しさ、真面目さ、そして物凄いパワーをお持ちでした。私がたちまち先生の虜になった事は言うまでもありません。




当時からおっちょこちょいだった私は、講習会の少し前に自転車に乗っていて車とぶつかり、足にぐるぐる巻きの包帯をしていたのですが、毎日
“早く良くなります様に!”
と言ってピヒト先生が撫でて下さったものです。そんな優しさも見せたり、レッスンに熱が入ると、唾を飛ばして(笑)一生懸命に何時間も教えて下さったりもしました。




講習会も終わりに近付いた頃、先生に
“フライブルクにいらっしゃい。私はあなたの様な若い人を見たいわ。”
とおっしゃって頂きました。しかしまだ高校生だった私は、決断がつきませんでした。




そしてさよならコンサート。ピヒト先生が薄暗い照明の中、老いた細い体から振り絞る様に響き渡る音を繰り出し。。。
その曲がブラームスのこの作品たちでした。(因みにシューベルトの最後のソナタ作品960は前年の講習会のさよならコンサートで聴きました。)




あれほど感動したコンサートは後にも先にも無いでしょう。晩夏の山の肌寒さや、高校生と言う感じやすい年頃のせいも多少ありますが、人前では泣いたりしない私が、涙でグシャグシャになった顔でピヒト先生と写真に写っています。(おまけに足はぐるぐる巻き包帯で、まるでチンドン屋)



このコンサートがピヒト先生にとってもラストコンサートとなりました。講習会も二度といらっしゃる事は無く、この5年後に心不全でフライブルクのご自宅で亡くなりました。




あの時もしフライブルクに行っていたら。。。私の人生は全く違った物になっていたかもしれません。パリに行く事も無かったとしたら、音楽的方向も去る事ながら、popさんやノアゴンとも会う事は無かったでしょう。




でも、今でもシューベルトとブラームスを聴くと、今は亡きピヒト先生とのあの時の事を思い出します。フライブルクも後から知ったのですが、素晴らしく美しく、環境を重視した街並みはやっぱり行っときゃ良かったなぁ!と思わせるには十分な魅力でした(笑)




私もターシャの様なピヒト先生目指して、長生きしてシューベルトとブラームスを弾くのが夢です☆




ピヒト先生(エディット・ピヒト=アクセンフェルト)のラストコンサートのブラームスの作品117~119はカメラータ東京からCDが出ています。まさしく私が聴いたあのコンサートの生録音です。同じく前年のシューベルトの作品960最後のソナタも同社から出ています。私は。。。 何だか怖くて聴けません(*_*)
80歳を過ぎたピヒト先生の渾身の、独特な演奏と響き、皆さんはどうぞご堪能下さい。Amazonからも購入出来ます。