さようなら、婚約者 藤堂志津子さん

1991年の作品です

好きな本2トップのうちの1冊です

(もう1冊はされど、かすみ草)

 

こちらは時の流れに相等しく、主人公の母親の気持ちもトレースすることができました

 

 

婚約解消をした24歳の美樹は、両親から、気分転換に遠縁の卓兄さんの家に居候し、お手伝いをすることを勧められます

居候を始めた美樹は、居心地のいい卓兄さんの家で起こるちょっとした出来事に関心を持ちます

 

婚約破棄した相手、広樹との親交

親友、文沙子の容赦ない真理追求

 

それらを通して、自然の移ろいや自然の姿にしか興味の無かった美樹は、人へ関心がわき、揺れ動く感情が生まれてきます

 

それは切なく、自分の存在を揺るがす心の変容でもありました

 

藤堂さんの作品は視覚的であると言われる、と解説にありましたが、文章を読むと、本当に目の前にその光景が浮かび上がります

 

北国札幌の、秋、初雪、真冬、雪解けの風景の描写は見事で、今どのように雪が舞い落ちてきているのか、どんな風が吹いているのか

それが、読むとはっきり見えるのです

 

(こういう風ではない)

 

子供の頃からふいに襲ってくる寂寥感に悩まされる美樹

女の幸せは結婚と決めつけ、押し付け、監視してくる母親

 

美樹の感じる寂寥感も、母親が子供に価値観を押し付けるのも

 

どちらも自分にとっては当事者でした

 

 

人は本当に複雑で、他人との関わりにより、さらに自己は混乱し、自分はどうしたら良いのかわからなくなる

 

人生には幾度となくそういう時がやってきます

 

けれど、うまくできていて

 

それによって人は新たな気づきがあったり

一回り大きな視点を持つことができたりして

年輪のように少しづつ自己が大きくなっていくのだと思います

 

この作品は、美樹の心の成長、次への一歩を踏み出す姿が描かれています

美樹だけでなく、広樹も 文沙子も 卓兄さんも変わってゆきます

 

自分は本の内容に共感しすぎるようで、ずっと涙を流しながら読みました

(バチクソ泣くやん)

 

そして、やっぱりこの作品好きだわ、と再認識したのでした

 

藤堂志津子さんの感性は、やはりウン10年経っても自分に響きまくりでした

こちらも死ぬ時にまた読まねば(できるんか)

 

すっかり秋ですね

彼岸花と金木犀のコラボももうすぐ終わりです

深まる秋を感じながら散歩に行こうと思うのでした