「大きな声で、ハーイ♪」
私はここだよ〜!
と、耳障りのいい、または、衝撃的な言葉で、人々の気持ちを汲み上げて、注目を集める。
街頭演説のように。
目立つし、仕事ならお客さんも行列をなすのかもしれない。
結果、実際収益は上がって憧れられたりする。
それが一部では、成功と言われていたりもする。
それも良い。
そこへ行きたいとも思った。
そんな時もあった。
他にも希望はいくらだってある。
いつでも旅に出られる環境。
やりたい時にやりたい事をやれる環境。
ツールとしての十分なお金。
家賃のいらない家。
理想のインテリア。
自由に使える時間。
社会への貢献。
もちろんこれらは今だって欲しい。
だけど、本当に欲しかったものは別にあったんだ。
何をしたくてここに来たか。
ただ思い出すだけだった。
そのきっかけは、大好きな俳優さんのプライベートと、ある日見た大好きな友人夫婦の写真だった。
その瞬間、目の前にたくさんあった欲や欲求が、塗装のようにパラパラと剥がれ落ちて、中から出て来たのは、梅干しの種のように小さいもの。
小さくてひっそりと
でもずっとそこにあったもの。
宝石みたいに煌びやかでもなくて、ケーキみたいに気を引くようなものでもない。
洗いざらしたバスタオルみたいに、古くてひっそりしていて、すっかり馴染んで長らく意識すらしなくなっていたもの。
でも、お日様の匂いがして心の底からの安堵感をもたらすもの。
その瞬間、ポロポロと涙が溢れて来ました。
当たり前にそこにあって、見向きもしなくなっていたもの。
生まれた時に大切に握りしめていたもの。
思い出せて、よかった。


