コムフムは私のマニラのコンド(日本語でいうとマンション)の壁の一角を見つめて、

"I want to be a multibillionair(俺は億万長者になりたい)"と震える声で言った。

そんなこと真剣に言う人初めて見た、面白いこと言うなあと思って聞いてた。

 

もちろん、そんな話になる前の会話で、彼のカメルーンでの幼少期のこと、

ママの洗濯の手伝いをして辛かったこと、高校生で同級生を妊娠させたこと、その結果できた子供を彼女が育てられないから彼の両親が引き取ったことなど、いろいろ聞いた。

 

大金持ちになりたい、とこっそり思っている人は大勢いると思う。でも、こんなに真剣に告白する人はやっぱりヤバいのだ。こういった野心家はやはり、いろんな悪魔を惹きつけてしまう。私にも経験があるのだ、そういう野心オーラをまとっていると、野心の波動を引き寄せてしまう。結果的に仏教的にいうところの「餓鬼」になる。

 

そのあと、彼が私に持ち掛けてきた「ものすごい儲け話」を、私は漫画みたいだな、と思いながら「ふんふん」と聞いて、

 

ごめんね、私はそういうの興味ないんだ

 

というと、落胆していたっけ。いや、がっかりさせちゃって悪かったなんて思うことはなく、マジでありえない犯罪みたいな話だったから、躊躇もなにもなく断った。その時に、私の中でもコムフムをなんとかしてあげたいという気持ちに区切りがついて、その後あまり会わなくなった。その後彼のことを聞いたのは、数か月あとだった。

 

カヴィテに住むアイリーンと電話で話していると、彼女が、今やコムフムが相当の金を手にしているらしいと教えてくれた。「He is a big guy now!」と言うではないか。へええ、そうか。うん、いや、その時もちろん、多分あの犯罪的な商売を実際にやったのかもしれない、と私の頭をよぎった。