当科で治療を検討される患者さんたちは、がん治療の後半戦で、単純な状況ではなくガイドラインの一筋縄では対応が難しい方が多いです。

最終的には、紹介状を送ってもらって、受診してもらうか、受診しても意味がないのか、お返事することが多いのですが、わかりやすいように概略を各臓器ごと書いておきます。

なお、皆さんの病態はバラバラです。
同じ肝転移といっても、原発、肝転移の状況、悪制度、併存疾患など様々で、これを読んで違いそうだと最初から決めず、少しでも該当しそうであればまずば紹介状を主治医の先生に書いてもらって当院に問い合わせてください。

本日は、一番治療機会の多い、肝転移から。


1)原発の癌種は問いませんが、効果の良いもの、悪いものは、肝転移の状況ではなく原発の種類で決まってきます。当科では、大腸がん、婦人科がん、乳がんの肝転移の成績が他施設よりも良いと思います(臨床成績も様々な学会や論文等で報告しています)。他の希少癌の肝転移に関しても、経験数は多いと思います。

2)肝機能が3桁のうちに治療させてください。(AST、ALT、LDH、γ-GTPなど)。4桁の患者さんはすでに肝不全になりかかっており、肝動注だけでも危険です。3桁、とくに500を超えたらもう相談してください。
当科では、肝機能をまず改善させることを目標の1つにしています。
肝機能が改善すれば、体調も良くなりますし、今後肝機能障害で諦めていた薬物治療も可能になりえます。

3)肝転移の数、大きさは問いません。10cm以上の方にも何度も治療しています。ただ、やはり小さく、数が少ない方がありがたいです。

4)標準治療はある程度しっかりとやってください。標準治療も効けばちゃんと肝転移は小さくなります。当科では、標準治療が効かなくなっても、抗がん剤の濃度を限界まで高くして肝転移に投与する方法としてカテーテルを用いています。だから後方治療の1つとして位置付けています。がん治療の前半戦は、標準治療が確立していますので、いきなりカテーテル治療を考えないように。

5)上記と逆行しますが、標準治療をやり続けて、肝臓がボロボロの状態になってから来られても、カテーテルができない場合が多いです。全ての可能な抗がん剤を使い終わったころには、当科でも救済不可能な状態まで進行していることをよく経験します。「でもそれじゃあ、いついけばいいの?」と思われるでしょうが、各癌腫でみんな違いますので細かくかけません。目安としては、上で書いたように肝機能が悪化して今の治療で改善しない場合、主治医に残りの薬剤が少ないと言われた場合、などです。
一番治療件数の多い大腸がんでいえば、ロンサーフ、スチバーガ、フリュザクラの3つの後方治療のうち1つでもやっていて、上記に該当すれば、非常に良い適応だと思います。残った薬剤は肝転移を制御してからに残せますし。

6)肺転移やリンパ節転移があってもやる場合が多いです。一般的な主治医は、肺転移があるのに肝転移の治療をしても意味がない、と言われるでしょうが、それでは後半戦は戦っていけません。後半戦の転移は全て遺伝子レベルで顔つきが違うので、全ての転移が均等に小さくなることは難しく、これを言っていたらすぐに弾切れ(抗がん剤切れ)になってしまいます。後半戦は、命に関わる臓器から優先して救うべきです。肝臓は、全身の様々な代謝に関与する重要な臓器。肝転移で症状がでるころはすでに肝不全に向かっています。肝臓は予後を決定する重要な臓器なので、肺やリンパ節に多少の転移があっても肝臓の救済をまず目指します。実際、僕は緩和治療まで関わっていますので、全身に転移のある患者さんの死因が、悪液質などの全身的悪化でない場合、やはり肝不全死が多く、肺転移が原因で呼吸不全というケースは限られ、リンパ節転移で亡くなる方はほとんどみたことはありません。

7)主治医に緩和の施設のことを持ち出されたときは、すでに手詰まり感が強いです。その際に上記のような肝転移だけでも抑えれば、の状態にすれば、余命が伸びる可能性があります。主治医はなかなかそれを認めないでしょう、そういう時のセカンドオピニオンです。こちらから、カテーテル治療の必要性と狙っている効果をちゃんとお返事返して、ほとんどの適応患者さんは治療を受けれています(ここが総合病院とクリニックの違いだと思います。後半戦の治療をクリニックでするのは危なすぎると誰もが考えると思いますので)


本日はこのくらいにしておきますが、また思いついたらアップデートしますね。


追記 大切なことを忘れてました。

8)総ビリルビン値。肝転移で上記の如く肝機能が悪くなりますが、ビリルビン、つまり黄疸値は最後まで正常値でいようとがんばります。この黄疸が上昇し始めた時、あなたの肝臓はすでに肝不全の手前ということになります。全ての肝臓関係の採血値の中で、最も大切で、最も治療適応に直結すうる数字になります。当科では原則3以上の患者さんには動注はしていませんが、今までの経験上、たとえば上記のように勝ち目がある癌腫で、本人の全身状態が良ければ4まで許容して実施したことがあります。ただ、さすがにそれ以上の場合は、動注自体も肝臓の負担になり命を縮めることになりかねますので適応外とすることが多いです。

ちなみに、肝動注は肝機能が改善する可能性がある治療と考えています。一方で薬物治療は逆に肝機能が悪化する可能性があるため、当科よりもはるかに肝機能が安定していないと投与できません。
ですので、肝転移の悪化⇨肝障害⇨抗がん剤が打てない、このような方は、当科の良い適応になり、肝機能を改善し、肝転移を縮小させて、元の病院に戻って頂き抗がん剤治療を続けてもらう、このパターンが理想的です。