国際ロマンス詐欺や遺産相続型詐欺などの国際詐被害に遭われた方が該当国の駐日大使館やその国に置かれている日本大使館、あるいは該当国の警察捜査機関に手紙やメールを送ったりするということがあります。手紙やメールを送ったが、相手にされなかったという話も時々聞きます。警察や大使館などにメールや手紙を送ったが無視された、相手にされなかった原因の一つは、送ったメッセージが一体何を伝えたいのかわからないということです。詐欺被害者は被害に遭って気が動転しており、支離滅裂な内容を書いてしまうことがあるかもしれません。気持ちはわかります。しかし伝わる内容を書かなければ、お願いしたいことを誰も実行してくれません。

 

誰に何をしてほしいのか、目的を定める

 海外にある日本大使館に手紙やメールを出すという発想は良いのですがその大使館に何をしてほしいのでしょうか? それは大使館ができることでしょうか? まずこれを考えてみてください。何故なら、不可能なことを大使館に要求しても『対応できません』と言われる結果になります。『いつ 誰に 何に対して どうしてほしい』という文章を自分で書いてみてください。

 

 

伝わる内容をどう書くか

 

 伝わる文章の構成を考えてください。日本の学校では『起承転結』を教わっているかもしれません。しかし『起承転結』ではなく『結理事結』で書くことをお勧めします。起承転結では前置きが長くなり、結論が最後に来ることで相手があなたの主張を捉えにくくなるからです。

 

 忙しい相手を納得させるには、最初に結論を述べる、そしてその理由を述べ、事例・証拠を挙げ、最後にもう一度結論で締めます。これは現代のプレゼンテーションの型の一つです。これをPREP法といいます。

 

PREP法

結論(Point) ⇒ 理由(Reason) ⇒ 事例(Example) ⇒ 結論(Point)』

 

 

 PREP法は決して難しいものではありません。例えば以下のような単純な展開にも使えるのです;

 

(結論) ミカンをもっと食べよう

 

(理由) ミカンは栄養が豊富だ

 

(事例) ミカンはビタミンCが多く含まれ、2個食べれば成人が必要な一日分のビタミンCが取れる。また免疫力もアップする。

 

(結論) だからミカンでビタミンCをとろう。

 

1. 結論(Point)

 まず伝えたい結論を述べる。大使館や警察といった公的機関に何をしてほしいのかを述べます。結論は長い文章である必要はありません。前回紹介した嘆願書の『伝えたい内容の要約』が『結論』であると言えます。

 

例:

ナイジェリア連邦共和国の経済金融犯罪委員会(EFCC)に詐欺被害金額日本円にして総額×××万円の還付の要請をお願いしてほしい。

2.理由(Reason) と 事例(Example)を述べる

 この部分を『お願いの理由・主旨』の部分に記述します。例えば大使館あてなのであれば、なぜその大使館が行動をとるべきなのかの理由を説明し、その根拠となる事実に基づいた事例を述べます。理由⇒事例は複数にわたるでしょう。それぞれの理由に対して事例を述べ、最後に結論をまとめます。

 

(結論) ミカンをもっと食べよう

 

(理由1) ミカンは栄養が豊富だ

 

(事例1) ミカンはビタミンCが多く含まれ、2個食べれば成人が必要な一日分のビタミンCが取れる

 

(理由2) ミカンは免疫力を高める

 

(事例2) ミカンの皮に含まれる「βクリプトキサンチン」には、免疫力を高め、抗がん作用もある

 

(結論) だからミカンでビタミンCとβクリプトキサンチンをとり、健康になろう。

 

 大使館の役割を考慮するなら、大使館に『犯人逮捕』を要請するのは間違いです。大使館にメールをするのであれば、大使館の業務の範囲で協力していただけることを求めるべきです。例えば以下のようなものが挙げられます。もし、相手国に置かれた日本大使館にメールをするのであれば、ほかにどんなことを要請できるかを考えてみてください。

 

■公共性のある要請

  • 金融犯罪の捜査を行なっている現地捜査機関への犯罪組織取り締まり強化の要請
  • 世界的な被害増大に関する当該国政府への抗議

■個人的な要請

  • 特定の事件に関する捜査を現地警察に求めてほしいという嘆願
  • 当該国の金融犯罪捜査を行なっている現地機関へ当該国の銀行口座からお金を引き戻す要請をしてほしいという嘆願

 

 それらの要請を受け入れて大使館がアクションをとる理由はどこにあるのでしょうか。理由とその根拠を書いてみてください。3つくらいまで理由とその根拠を挙げると良いでしょう。

 

例:

理由: 犯人はナイジェリア人もしくはナイジェリア在住者である。

事例(証拠): 銀行口座がナイジェリアの〇×銀行にあり、電話番号がナイジェリア国番号だった。(口座番号情報、電話番号情報を添付) したがって、日本の警察では捜査ができないので、ナイジェリアで捜査をしてもらう必要がある。そこで、日本大使館から現地のEFCCに捜査を依頼してほしい。

 この例のようなことを要請すると、『EFCCへの捜査依頼は日本の警察から出すように』と言われるかもしれません。それでも良いのです。今度は日本の警察に行き、大使館からこのような指示を得たから、ナイジェリアのEFCCに捜査依頼を出してほしいと頼むことができます。『犯罪捜査はできません』と大使館に断られたらそれで終わりになります。しかし、『警察に言ってほしい』であれば次のステップが踏めるのです。


 

3.結論(Point)をまとめる

 最後にもう一度結論です。ここでは間の理由と事例に言及し、それらを根拠に大使館などの公的機関が『お願い』に応じるべきであることをまとめます。

例:

犯人が使用した銀行口座と電話番号から犯人がナイジェリアであることは明らかである。しかしEFCCを語る偽機関も多く、直接EFCCをインターネットで探してコンタクトを取るのはリスクがある。そこで、在ナイジェリア日本大使館からナイジェリア連邦共和国の経済金融犯罪委員会(EFCC)に対して詐欺被害金額日本円にして総額×××万円の還付の要請をお願いしてほしい。

 

 まとめると、伝えたい内容を記述してゆくには、『結理事結』の展開で書いてゆきます。まず内容の要約(1,2文で書けるもの)、そしてお願いする理由とその根拠となる事実をそれぞれ上げる。これは多すぎる必要はなく、3つくらいのエビデンスを上げるのが適切でしょう。