国際ロマンス詐欺や遺産相続型詐欺などの国際詐被害に遭われた方が該当国の駐日大使館やその国に置かれている日本大使館、あるいは該当国の警察捜査機関に手紙やメールを送ったりするということがあると思います。どのようなメールを書いたら良いのか、今回はフォーマルなメッセージを書くことについてです。

 

相手にとってフォーマルだと受け止められる文体で書く

 相手にとってフォーマルだと受け止められる文章は、相手の立場などによって異なります。 相手に伝わる文章を書くには、相手が使う言語を使用する必要があります。SNSの友達に書く、あるいは個人商店へのクレームであれば、感情表現の記号をふんだんに使い、相手に自分の感情を理解してもらうことは良いでしょう。時として、お店への強い批判を記号で和らげ、店主を不必要に傷つけないといった効果もあります。しかし、公的機関に同じ方法で書くなら、『軽い印象』を与え、訴えの重要度を下げます。

 政府機関が国民に対して使う言語は、公用文のルールに従っています。一般市民が公用文のルールに従って国語を書くことは要求されていませんが、『お願い』の正式度を保つには、少なくとも正式なビジネスレターで使われるような文章であるべきです。そうするなら、『正式なお願い』として受け止められるでしょう。お役所と同じような言語を使うのが原則と言えます。

 公的な機関に要件を正確に伝えるため、国や警察に対する正式なお願いを書く時の文章、つまり、請願書や陳情書、嘆願書などの文章構成で書きます。

 もうひとつ銘記すべき点として、メッセージを最初に受け取る人は最終的な受け手ではないということです。大使館のホームページにあるメールアドレスは大使館の通常業務(相手国国民や在留邦人への様々なサービス)に使われる代表アドレスです。正しい部署に割り振ってもらうため、フォーマルかつ簡潔に要件が伝わる必要があるのです。振り分けるのが難しい内容や、支離滅裂で何をしてほしいのかわからない内容は振り分けの段階の職員が困惑します。いたずらや嫌がらせと判断されるなら、返事さえ来ない可能性もあります。最初に受け取る人への配慮として、嘆願書などのスタイルで書くことは役に立ちます。

 

ではどう書くべきか

 

嘆願書は決まった書式はありませんが、一般的には以下のような構成になります。

 

(1)件名

『してほしいこと、伝えたいこと』が判るような「件名」を書く。これは重要です。メールのタイトルを見て、メッセージを振り分ける人が正しい部署に届けてくれるからです。メール本文のトップにも件名を一行入れると良いでしょう。

例:『EFCCへの捜査依頼のお願い』

 

(2)日付(書いた日)

 

(3)宛先(誰に送るのか)

『誰』とは個人名が特定されている必要はありません。特定の部署が判らなければそこのトップを宛名にすればそのメールを受けた段階でふさわしい部署へ割り振りしてくれるでしょう。その際に、正しい敬称や肩書きを書いてください。機関の名称なども正しく書きます。肩書や立場名などが判らない場合は部署宛てに。

 例: 在〇〇〇共和国日本大使館 特命全権大使閣下

    在日本〇〇〇共和国大使館 特命全権大使閣下

    〇〇県警察本部生活安全部サイバー犯罪対策課 御中

 

(3)伝えたい内容の要約を書く。

 お願いしたい内容の要約、これは簡潔に書きます。これはメールを振り分ける人が一目でどの部署に廻したらよいのかを判断できるため、非常に重要です。1文か2文くらい、メールの画面で2,3行にまとめられる内容で十分です。大使館などに『何をしてほしいのか』をまとめて書いてくことで、振り分けがスムーズに進みます。

 

例:

米国の連邦取引委員会(FTC)の発表によると、2020年に『国際ロマンス詐欺』の被害が急増しており、日本国内でも被害が発生している。 この件につき、ナイジェリアに対して強く抗議するとともに、日本国としてナイジェリア経済金融犯罪委員会(EFCC) に対して捜査の協力とサイバー犯罪の取り締まりの徹底を要請してほしい。

参考:

 

 

(4)お願いの理由・主旨を説明する。

 なぜその機関にお願いしたいのか、何をお願いするのか、それを明白に述べます。この部分は(3)よりもう少し詳しく書きますが、長い内容(被害の経緯など)は別にワードなどで作成した添付物で送るのが良いでしょう。

 

 ここで考えていただきたいのは、そのお願いがその機関にとって本当に実行可能なのか、職務の範囲に入っていることなのかということです。たとえば大使館に犯人逮捕をしてくださいと依頼しても、それは大使館の職務ではないのです。『ご要望にはお応えできません』という回答が返ってくるでしょう。

 

 悪い例: 『私は国際ロマンス詐欺被害に遭いました。犯人は絶対〇〇〇共和国の人間です。犯人はまだ捕まっていません。犯人を逮捕してください』とだけ大使館に伝えても、犯人捜査と逮捕は大使館の役割ではありません。不可能だというご返事が返ってくる結果になります。

 

 在外公館の役割は、相手国に対し自国を代表して相手国政府との交渉や連絡,政治・経済その他の情報の収集・分析,自国を相手国に正しく理解してもらうための広報文化活動などを行なうことです。当然ですが犯人逮捕などは権限が与えられていないので、できません。

 

 しかし、十分な証拠をもって例えば当該国の日本大使館に『経済金融犯罪委員会に捜査を要請してほしい』と依頼することはできるかもしれません。

 

 このお願いの理由・主旨説明を論理的に、かつ伝わる書き方で書くことについては、次回にします。

 

(5)自分の名前と連絡先を添える

 公的機関へメッセージを送る場合、自分の名前と連絡先を明らかにするのも礼儀であると言えます。何も名前を告げずに『捜査してください、犯人捕まえて』などと書くなら、嫌がらせかいたずらと解釈されても仕方がありません。

 

 

まとめ

まとめると、国際ロマンス詐欺等の国際詐欺被害を受けた人が犯人がいると思われる国にある日本大使館などにメールを書きたい場合、

  • 公用文やビジネスレターの文体を使って書き、記号の乱用をしない。
  • 嘆願書の体裁で順序だって書く。
  • 件名で『何をしてほしいか』を短く表現する。
  • 2,3行で何をしてほしいのかを要約する。
  • してほしいことの理由(なぜ大使館にお願いするのか)とその根拠を明白にする。