はじめに
ある国際ロマンス詐欺被害者の方から、ある国にある日本大使館にあてて送ったというメールを拝見しました。内容は以下の通り。ご本人様から許可をいただきこちらに転載します。
-----Original Message-----
Subject: ロマンス詐欺の犯罪組織を壊滅させてください
〇〇月にメールを送った日本人です。
〇〇〇といいます。
まだまだ日本に向けて詐欺師どもが、Facebookで
友達申請してきます
全く迷惑きわまりありません
善良な日本人を騙してお金を盗ろうとする、生きてる意味のない人間達だと思います
許せません
私を騙したジェームスという人間もまだ逮捕されてないようです
逮捕して私の目の前で、損害賠償、送金したお金を
返すまで一生許しません
警察には、被害届けが受理されてます
このメールの問題点として、
(1)フォーマリティが欠如している
フォーマリティが欠如していると言えるのは、
1) SNSの投稿やメッセンジャーでの友達とのやり取りか、レストランへのクレームのような文章で、公用文ではない
2) 感情表現に使う記号(
)を乱用していることで軽い印象を与える
という点からです。
このメールは「ですます調」ですが、SNSなどで使うようなカジュアルな文体で非常に軽い印象を与えます。政府機関などに送るフォーマルな『お願い』の文章や、公式な報告書やビジネスレターなどにはカジュアルな感情表現の記号は使われません。 また、SNSやメッセンジャーなどで友人に送るカジュアルなメッセージでは、感情を豊かに表現できる記号は緊張を和らげる効果もあります。しかし、何かを訴え、お願いをするという内容の場合、相手に威圧感を与えることもあるのです。
(2)論理的な話の展開になっていない
捜査権限のない大使館に『犯罪組織撲滅をしてほしい』と要求している理由として、『被害に遭ったが犯人が逮捕されておらず、警察には被害届が出されている。』と述べていますが、『だからどうしてほしいのか』というところまで説明がされていません。この展開では、捜査権限のない大使館は『それは対応できません』とご返事するしかないのです。
まとめると、この被害者の方が大使館に向けて書いたメールは、丁寧だがカジュアルな文体で記号で感情を表現しており、フォーマリティに欠け、軽い印象を与えるます。また、なぜ捜査や逮捕の権限のない大使館に犯罪グループを撲滅してほしいと言っているのか、その理由や根拠が明らかでなく、単に現状を並べているだけの本文で、目的があやふやになっています。結果として、大使館側は「対応ができない」とご返事するしかないのです。
この被害者の方は営業のお仕事をされており、普段は社内や顧客に向けてきちんとしたビジネスメールを書かれているそうです。しかし、国際ロマンス詐欺の関連になると、感情が先走り、このような感情をぶつけるような、フォーマリティに欠けたメールになってしまうようです。
国際ロマンス詐欺や遺産相続型詐欺などの国際詐被害に遭われた方が該当国の駐日大使館やその国に置かれている日本大使館、あるいは該当国の警察捜査機関に手紙やメールを送った結果、対応できないと断られたというお話を時々聞きます。もしかすると、それらの方々が書かれたメールも、この例と同様にフォーマリティに欠けていたり、『どういう理由で何をしてほしいのか』という論点があやふやなメールになっていたのかもしれません。被害に遭って気持ちが動転し、大人として冷静なメールを書くことが出来ていなかったということが十分考えられます。
そこで、国際詐欺被害者の方が大使館や警察などにメールや手紙を出す場合に、どのように書くのが良いのか。2つの点、フォーマリティと論理的展開という点から説明をしてゆきます。