国際ロマンス詐欺や、恋愛要素のない419詐欺・Advance Fee Fraudの被害に遭った方・逢いそうになった方が懸念されるのが、『送ってしまった個人情報がどこでどう使われるようになるのか』という問題です。2020年8月には、個人情報をもとに覚えのない借金などができていないかなどを確認するために信用情報機関への連絡をすることも書きました。身に覚えのない借金を作られたり、クレジットカードを作られてしまうほどの情報を提供してしまった場合かなり致命的です。直ちに金融機関、警察、信用情報機関に相談して、手を打つ必要があります。
詐欺師に渡してしまった個人情報が住所・実名・電話番号・写真などで、ファイナンス情報はなかった場合、被害者の方は『詐欺師が住所をもとに詐欺師が自宅にやってくることや、リアルでの嫌がらせをする』といったことを心配するかもしれません。実際のところ国際ロマンス詐欺師が家にやってきたという話は聞いたことがありません。しかしこれは何の心配もないというわけではありません。
1.住所や氏名、写真だけでも偽アカウント作成に使うことができる。偽アカウントは売買される。
クレジットカードを作られたりといった被害にまでは至らない場合でも、詐欺師を信用していろいろな情報を提供してしまった方も少なくありません。住所、実名、写真、電話番号など。おそらくは、インドや西アフリカにいる詐欺グループが、遠い日本在住者の住所や氏名を直接悪用することはないかもしれません。しかし個人情報はお金にできるのです。もし、アフリカやインドを拠点とする詐欺団が日本人の住所氏名を使うことがないのであれば、それは捨てるでしょうか? いいえ、捨てるよりお金にするでしょう!
送金したりお金に関する情報(クレジットカードや銀行口座など)、ID情報(パスポートや免許証の画像情報)を詐欺師に提供していなくても、実住所や実名を犯罪者が使うことはあり得ます。それを活用したい犯罪者が、個人情報を闇で買います。個人情報は闇で売買されています。
住所や氏名、電話番号は何に使うのでしょうか? デートサイトやSNSなどには、実名や実住所と写真、メアドか携帯電話番号があれば登録できるところもあります。メアドや携帯電話番号は自分で用意すれば、実在する住所と氏名と写真を使ってSNSに偽アカウントを作ると言ったことは簡単にできます。作った偽アカウントをしばらく仲間内で「いいね」をしたり投稿を入れたりして『普通に使った実績』を作った上で、詐欺に使うアカウントに切り替えているらしいということは以前にもご紹介しています。
2.メールやSNSのパスワードを教えてしまうと思わぬ事態に!
住所や氏名、誕生日、好きなもの、メアドやIDの文字の並び…国際ロマンス詐欺被害者が交際中に詐欺師に教えてしまうこともあるでしょう。詐欺師は被害者がどんな人でどんなことに興味を持ち、どんな家族構成化を把握します。その結果、パスワードを教えていなくても、その人が使いそうなパスワードを推測することも可能かもしれません。被害者がパスワードを使いまわししていれば、一つのパスワードを破った結果他のSNSやメールにもアクセスできてしまうかもしれない。パスワードを教えていなくても、提供した個人情報から推測される可能性はゼロではありません。
しかし、時々いらっしゃるのが、詐欺師にメールやSNSやチャットアプリなどのパスワードを教えてしまったという方です。マインドコントロールされた状態では致し方ないですが、パスワードを教えるというのはサイバーセキュリティの観点から言うと常識はずれなことです。これは国際ロマンス詐欺被害者だけではなく、SNSなどで知り合ったリアルな外国人のタカリ屋とお付き合いしていたという方でも時々おられるようです。ある方は、お付き合いしていた相手の国では男性が恋人のSNSやメールなどのパスワードを管理するのは普通だという話でしたが、それを不快感をもちながらも相手の要求に屈してしまったようでした。
パスワードというのも非常に犯罪者にとって価値ある情報です。多くの人はパスワードを複数のインターネット上のサービスで使い廻し、定期的に変えることをしません。日本の人の85%はパスワードを使いまわしにしているのです。そうすると、たとえパスワードを教えてしまったメアドが詐欺師とのやり取りだけに使っていたものだったとしても、容易に他のサービス、例えばネットバンキングやECサイトなど…もアクセスできてしまうかもしれないのです。メアドやSNSのアカウントとパスワードをセットで売ると言ったことも十分考えられます。
ナイジェリアやガーナの詐欺団は、被害者から得た情報を匿名性の高いダークウェブではなく、気軽にフェースブック上でも売買しています。送ってしまった情報は、必ずしもお相手していた詐欺師(一人の個人と被害者は認識しているかもしれない)だけが大事に保管しているわけではありません。個人情報は売買される。
既に個人情報を流出させてしまった後の対処よりも、される前の対策を私は強調したいです。
3.国際ロマンス詐欺師との遭遇による個人情報の流出を防ぐには
(1)知らない人を自分の生活の中に入れない
まず第一に、見知らぬ人をSNSで友達承認とかフォロー承認しない。こういうと、『最初は誰でも見知らぬ者同士です』と正論をおっしゃる方もおられるのですが、確かにそれは性善説の観点から言うと全くの正論ではあります。しかし、ネットのセキュリティの観点から言うとリスクの高いことです。見知らぬ相手が個人情報を入手したり、詐欺を働こうとしている可能性も否定できないからです。向うから積極的に近づいてくる見知らぬ相手を承認することのリスクを考えるべきです。
知らない人をSNSのコミュニティの中に招き入れるということは、自分の安全だけではなく自分と繋がっている人々の安全も脅かします。もしあなたの友達数が数千人だとすると、メッセンジャーなどのやり取りはごく親しい相手意外とはほとんどなく、国際詐欺の被害にも合わないかもしれません。しかし、詐欺アカウントがあなたのお友達に含まれているなら、詐欺師は容易にターゲットを探すことができます。例えば独身の方、片親で子育てをしている人、寂しそうな人、精神的に病んでいる人など、引っかかりやすい弱さを持つ人を探して、あなたの知らない間に親しいお友達が被害に遭っているかもしれないのです。
(2)国際詐欺に関する知識を身に着ける
それでも犯行が明らかになるまでは疑いたくないという方は、やり取りを続けるというリスクを取る自由があります。しかしそういう決断をした場合、国際詐欺やほかのサイバー犯罪に関する知識をぜひ身に着けてください。どういう手口、どういう設定で詐欺が行なわれているのか、どういう特徴を持っているのか、私のブログや、「ストップ国際ロマンス詐欺」のサイト、それから海外サイトであればSCARSで情報は豊富に手に入ります。国際詐欺についての知識を持つこと、これによって何度も同じ手口で騙されそうになることを防ぐことができます。
実際のところ、同じ段階(荷物を送ると言われて、税関や配送会社から請求が来る)まで進んだところで何度も『これも詐欺ですか?』というお問い合わせを私のところに下さる方が何人かおられます。そのような方々は明らかに学んでいらっしゃらないのです。
知識をつけている方なら、たとえ性善説で犯行が明らかにならない限り相手を信じるという方でも、2回目・3回目の国際ロマンス詐欺師との遭遇であれば税関からの請求が来る前の、『貴重品を国際宅配で送る』を臭わせる段階で『これは国際ロマンス詐欺の手口だ』と気が付きます。もっと感覚の鋭い人なら、最初のアプローチを受けた段階で写真を検索したり相手のプロフィールを精査して、この人物は受け入れてはいけないと気が付けるのです。国際ロマンス詐欺の手口についての知識を身に着けることは手軽にできることで、コストもかかりません。
一方、仮に金銭被害に遭わなかったとしても、知識を身に着けずに何も学ばずに自分の感覚だけでネットを利用しているのならば、詐欺師との遭遇から気が付くまでの間の時間を非常に無駄に過ごすことになります。相手とのやり取りに費やす時間はバカになりません。詐欺師は被害者をマインドコントロールするために被害者と頻繁にチャットをします…あなたの時間では夜中でも。以前に遭遇したと同じ手口が出てきても、知識がなければそれが詐欺の手口と気づかず、金銭要求が出てくるまで時間と労力を無駄にするでしょう。
そして、被害を受けてしまってからこなさなければならない様々な事柄…借金の返済、精神的打撃の克服、壊れたリアルの人間関係の再構築、警察や金融機関に行く手間など、様々なアクション…をこなすために費やされるエネルギーは多大なもので、被害に遭った後のショックで精神的にも身体的にも弱った状態でこなすのは非常に難しいでしょう。実際に、『今は何も考えることができない』と仰って詐欺だと気づいてすぐに警察や金融機関に連絡できない被害者の方々も少なくないのです。
ウィルスやマルウェアといったサイバー犯罪を防ぐために、パソコンに対策ソフトを入れている方はおられるでしょう。いくらのものを買いましたか? おそらくは数千円から1万円台。有効に使えるように更新していますか? おそらく年額数千円のサブスクリプションですね。一方、それらの対策をしなかったための被害は、ウィルスにやられてパソコンを買い替える金額はいくらでしょうか。あるいはランサムウェアなどで犯人から要求される額はどれくらいでしょうか。今まで使っていたパソコン環境を取り戻すために出資する金額は対策ソフトウェアの金額に比べると膨大です。
国際ロマンス詐欺も同様です。手口に関する知識を身に着けたり、友達リクエストやフォロー申請してくる人たちをいちいちチェックするのは手間でしょう。しかし、それにかかるお金は、インターネット接続費用だけ。会員制のデートサイトであっても、その会費払うだけですね。
しかし被害に遭ってしまったら…詐欺師に送金した金額の他に、借金の返済、友人知人や家族との関係再構築、自分の精神的ケア、警察で嫌な想いしながら調書をとってもらうための精神力、銀行や信用情報機関とのやり取りに費やす時間と労力、消費する金額も体力も、ものすごい量でしょう? 知識を身に着けて認識を高めるっていうのは大事なことなのです。ちょっとの努力で大きな金額と精神力と体力を失わずに済みます。


