『インターネットで知り合ったロマンス詐欺師に個人情報を教えてしまったのが心配です』
これは金銭被害のありなしに関わらず、国際ロマンス詐欺・国際オンライン詐欺被害者の方々からよく言われます。
以前は『写真の悪用される危険はあるが日本人の写真はあまり使われない。犯罪者集団は日本には来られない』と私も言ってましたが、近年のサイバー犯罪のハイテク化・グローバル化で個人情報の流出は脅威となってきました。
2018年ころから日本人女性の写真を使った『瀕死の未亡人』も多くみられるようになり、日本人や韓国人の写真を使ったアフリカか南アジアと思われる詐欺師のアカウントも少なくありません。写真の悪用の可能性は大きいです。
住所や電話番号ですが、以前は『外国にいる詐欺団が日本まで来ることはないでしょう』とお答えしていましたが、住所や電話番号と実名を含む情報を、日本に来ることができない外国の犯罪組織が日本にいる犯罪組織に売ったとしたら油断はできない状況になります。容易に騙せる人物だという情報と一緒に住所氏名電話番号が在日外国人ギャングに売られていたら、また別の犯罪に巻き込まれる可能性も出てきます。
しかし、個人情報の提供はもっと重大な、思いもよらない犯罪に巻き込まれ、責任を問われる可能性もあるのです。それが「なりすまし」による金融犯罪です。単なる写真や名前をSNSで使った『なりすまし』ではありません。被害者の信用情報に影響するものです。
例えば詐欺師から偽のIDやパスポートが送られてくる。同様のレベルの身分証明書を求められ、パスポート、運転免許証やマイナンバーカードの写真を送ってしまっていませんか? クレジットカードや銀行のATMカードの写真やその番号を送ってしまったりはしていないでしょうか。あるいはメアドやSNSのアカウントを共有するためにパスワードを教えていませんか? そしてオンラインバンキングとSNSやメールのパスワード同じにしていませんか?
■インターネット上のなりすまし
身分証明になるもの(住所・氏名・生年月日・電話番号・運転免許やマイナンバーカードの番号など)が詐欺師にわたっている場合、インターネット上で成りすましをされ、犯罪に使われている可能性があります。ネットで自分の名前や写真などが使われた場合、プロバイダーに要求し削除してもらうことが一般的ですが、本人が申請してもなかなか消してもらえないケースも少なくありません。法務省インターネット人権相談窓口に相談してみてください。
■金融犯罪での個人情報の悪用
個人情報を使った「なりすまし犯罪」は、SNSを使ったアカウント作成などの単純なものだけでは済まされません。詐欺団は犯罪によりお金を得るために個人情報を使うというケースも少なくないのです。金融犯罪として主に以下の二種類が考えられます。
1. 被害者の持っているクレジットカードや銀行口座などを悪用する。
- 被害者の既存の銀行口座やクレジットカードの悪用の場合、被害者は金融機関と直接話をして問題を解決できるケースが殆どです。金融機関との良好な関係を取り戻し、元通りの利用に戻すことも可能でしょう。口座を解約して新しい口座番号にするといった措置をとってください。クレジットカードも新しくすることです。ネットバンキングのアカウントもパスワードやユーザー名などを変更して犯罪者からのアクセスを防いでください。
- 新しいアカウントが作られてしまった場合が非常に厄介です。新しい銀行口座やクレジットカードなどに対して、被害者が債務の責任を負わないことを証明できるような『債権者との既存の関係がないことを証明するもの』がないため、名義人である詐欺被害者が責任を問われます。
- 新しいアカウントは通常1つ以上の信用調査機関(CRA)に報告され、被害者の信用報告書に表示されます。 犯人が請求金額を支払わないため、アカウントは回収され、被害者の信用報告書に不良債権として表示されます。被害者は誰かが勝手に名義を使って作ったアカウントが回収されて不良債権にされるまで、犯罪者が作ったアカウントの存在を知らないケースが殆どです。
- 被害者は、そのアカウントに責任がないことを債権者に証明し、被害者の信用報告書から不良債権情報を消去する必要があります。
■被害者がとるべきステップ
銀行口座やクレジットカードのアカウント開設や借金ができる個人情報を詐欺師に伝えてしまっているなら、まず最悪の事態を想定して準備をしましょう。何も起きなければ良いのですが、もし仮に望ましくないことが起きたなら、それに対して相当量の対応処置を取らなければならなくなります。金融犯罪による影響を少しでも小さくして、なりすましが起きたこと、個人情報を使われた負債に責任がないことを証明でき、信用情報を回復できるようにする必要があります。
SCARS (Society of Citizens Against Relationship Scams)の記事にある詐欺師に個人情報を知られてる場合の踏むべきステップを参考に日本向けに書き直しました。
1: 銀行やクレジットカード会社に連絡をする。警察に届け出る。
もし、詐欺師に銀行口座番号やクレジットカード番号を教えてしまっているなら、犯罪組織があなたの情報を使って口座を盗んだり、カード番号を使って非合法な買い物をする可能性があります。国際詐欺の被害者は詐欺師に口座番号やクレジットカード番号を教えてしまっているケースが多いといわれています。例えばクレジットカードは犯人が被害者の名義を使って商品を購入し、購入品は小包ミュールと呼ばれる仲介役のもとに届きます。犯人が不正な方法で商品を購入していれば、そのクレジットカードの使用はカード名義人の責任になります。また、犯人が被害者の銀行口座を自由に扱えるようになっていれば、マネーロンダリングに悪用される可能性もあります。口座の名義は犯人ではなく被害者です。結果としてクレジットカードや銀行口座の不正なお金の流れはすべて名義人である被害者が責任を問われることになります。
ですから、銀行口座番号やクレジットカード番号を詐欺師に知らせてしまっているのであれば、金融機関と警察に知らせなければならないのです。金融機関に連絡し事情を理解してもらいましょう。詐欺に遭ったことを伝え、警察の調書の番号を知らせます。
もしまだ警察や金融機関に届け出ていないなら、問題が深刻になる前にすぐに実行してください。
2: アイデンティティ・セフト(なりすまし)発生の可能性を認識する
アイデンティティ・セフト(なりすまし)とは、誰かがあなたの名前などの個人情報を不正に使っているということです。なりすました人物は、マイナンバーカードや運転免許証などの番号を使って、あなたの許可なしに詐欺やほかの犯罪を実行しているでしょう。国際詐欺被害者は「なりすまし犯罪」に使われるために十分な情報を詐欺団に提供してしまっている可能性があります。
3: マイナンバーカード
SCARSの原文はソーシャルセキュリティー番号と税金申告の記録が影響を受けるという話が書いてあります。ここでは日本の場合として別の内容に言及します。
日本の場合、マイナンバーカードが知られている場合に脅威となるでしょう。米国のソーシャルセキュリティナンバーと異なり、日本のマイナンバーカードの番号が知られただけでは大きな被害はないかもしれません。(しかし今後どうなるかは不明)。しかしながら、マイナンバーカードをスマホなどで写真に撮って詐欺師に送ってしまっている場合、そのカードの写真を使って容易に被害者の名義で銀行口座を開いたりできるのです。もしマイナンバーカードの情報を詐欺師に渡してしまっているのであれば;
まずマイナンバーの一時停止手続きを取る
一時停止手続きのコールセンター
- マイナンバー総合フリーダイヤル:0120-95-0178 ※無料
- 個人番号カードコールセンター(ナビダイヤル):0570-783-578 ※有料
地方自治体の窓口に届け出て、再発行をしてもらう。
4: 信用情報開示
個人情報を知られている場合それを使って被害者名義でクレジットカードや銀行口座が作られる可能性があります。被害者の名義でクレジットカードや銀行口座など金融機関のアカウントを作られるリスクを避けるため、信用情報機関に信用情報開示を申請します。日本では3つの機関があります。
- JICC(日本信用情報機構):主に消費者金融会社と信販会社が利用
- CIC(シーアイシー):主にクレジットカード会社と信販会社が利用
- JBA(全国銀行個人信用情報センター):主に銀行が利用
情報開示とは、本人の申込みにより、信用情報機関に加盟している会員会社(クレジット会社等)との契約内容や支払い状況等の信用情報を確認できる制度です。利用者の情報が現在、信用情報機関に登録されているのか、またはどのように登録されているかを確認できます。これによって自分の名義で不正なクレジットカードなどが作られていないかを確認できます。
信用情報機関から本人確認の情報を求められたり、本人しか知らないはずの質問をされます。開示には1000円の手数料がかかります。開示の申請方法はパソコンやスマホ、郵送、窓口などの方法があります。詳しい申請方法は各機関の方法を確認してください。一定期間の再開示は無料(最初の料金に含まれる)になるはずなので信用情報機関のサイトをよく読んで無料再開示期間を活用してください。
開示報告書を受け取ったら、注意深く確認するようにしてください。自分が解説していない講座や発生していないはずの借金、連絡していない会社からの信用照会などを確認します。
もし自分の身に覚えのないクレジットカードや口座、身の覚えのないローンなどがあれば、信用情報機関の会員会社になっている金融機関(銀行やクレジットカード会社、個人向け融資会社など)に連絡をして調査をしてもらいます。
例えば身に覚えのない金融機関のローンが契約されている場合、そのローンの債務保証を行っている加盟会員から保証契約が登録されますので、登録元会社に確認します。 (参考:JICC https://www.jicc.co.jp/kaiji/)
尚、この項目はJICC, CICのホームページとSCARSの記事をもとに記述していますが、不足している点などもあるかもしれません。この段階を進めるにあたっては、取引している金融機関(銀行やクレジットカード会社)のカスタマー窓口の方に連絡をとりながら進めてください。
5: 新たに「なりすまし」の被害届を出す
もし自分の名義を使った不正な金融機関の使用が発覚したら、直ちに「なりすまし・金融情報不正利用」の被害で警察に届け出ます。何故なら被害者本人はそれらによる負債や口座の犯罪利用などに一切かかわっていないからです。放置しておいて、もし自分の名義で借金や不正利用など犯罪が発生した場合、名義人に責任が問われます。信用情報開示報告書や、そのほか銀行・クレジットカード会社が出してくれる書類を警察に持参します。
もし、詐欺被害を警察に届け出ていた場合、警察は元の詐欺被害の調査ファイルに付け足すことを提案するかもしれませんが、これは可能なら新たな届け出とすることをお勧めします。
警察によってはこのような案件を優先順位の低い案件と位置付けて消極的な態度をとるかもしれませんが、警察に届け出ることは被害者の『回復プロセス』にも必要なものです。ですから、もし警察が消極的であれば、この被害届を出して調書をとってもらうことが自分にとって必要な保障なのだと説明します。「なりすまし」についての調書をとってもらったら、法的に名義や口座等の不正利用に対して法的に自分の実を守ることができるようになります。
警察に届け出る際に必要な情報を用意しましょう。
- 自分の現住所・氏名・生年月日などの基本情報。住所や姓が変更している場合それを証明するもの。
- マイナンバーカード、身分証明書類
- その犯罪に関してわかっていること。どのように個人情報が盗まれたかといった経緯。
- 不正なお金の動き、金融機関名、やり取りに使われた企業や個人名、金額、口座が開設されたり不正利用された日時、不正利用された金額など、わかっていることすべて。
個人情報が犯罪者の手に渡ると厄介な問題が発生します。軽い気持ちで被害当時詐欺師に渡してしまった情報が自分のファイナンス上の信用情報に大きく影響してきます。国際ロマンス詐欺被害者の多くは、相当量の個人情報を犯行グループに提供してしまっています。『警察に行っても何も動かない』と言って行動を起こさないでいると、被害者の身に覚えのない負債やマネーロンダリングの疑いをかけられ、それを証明する手立てがないという状況になる可能性があります。最悪の状況を想定し、備えておくことが必要です。
尚、自分自身詐欺に遭ったこともなく、すべて書かれた情報をもとにこの記事を作成しています。足りない部分もあるかと思いますが、警察や金融機関、信用情報機関からここに書かれていない手続きや情報を求められたらその手順に従うようにしてください。
参考:(下記の記事を参考に日本向けに自分の言葉で解説しています)
SCARS Next Steps™ – You Gave The Scammer Your Information?