『不正のトライアングル』…米国の犯罪心理学者ドナルド R クレッシャーが3つのリスク要素『機会』『動機』『正当化』が揃ったときに不正行為が起きるということを説明したものです。

 

国際ロマンス詐欺被害者による1000万円横領事件も、この『不正のトライアングル』で説明ができます。


https://abema.tv/video/episode/89-42_s0_p150406

 

①機会

「機会」とは、不正行為の実行を可能ないし容易にする客観的環境。

 

容疑者は経理担当者でした。例えば『一人の経理担当者に権限が集中している』としたら、容疑者は容易にお金を取り出すことが可能だったかもしれません。20年、経理担当として勤めてきたのだとすれば、医療法人から多大な信頼を得ていたことでしょう。お金が手に届くところにあるという職務環境は、不正行為の実行を可能にしたと言えます。

 

この容疑者の方が、仮に職場のお金を手にする機会のない仕事だったら、もしかすると1000万円もしくは1億円まで横領という事態にはならなかったかもしれません。

 

②動機

「動機」とは、不正行為を実行することを欲する主観的事情。

 

この種の詐欺は一度送金すると詐欺だと気づくまでとりとめもなく送金要求を受け続け、相手を信じる被害者はどんどん送金することになります。この横領事件の容疑者になった詐欺被害者の場合、横領に至る前にすでに自分の貯金を相手に送りつくしているのかもしれません。

 

「これ以上自力で送金できない」「送金しないと彼が、あるいは彼の子供が困る。」…おそらくは恋人役の詐欺師や他の架空の登場人物たちからのプレッシャーがかけられていたことでしょう。送金するためには職場のお金を横領しなければならない、それしか選択肢がないと感じていたのかもしれません。

 

そして、この種の詐欺の場合、詐欺師が被害者のとの間に「秘密の関係」を作り上げます。例えば『貴重な荷物を悪意ある人々に知られたくないから荷物のことを秘密にしてほしい』『サプライズを作りたいから二人の関係を友達や家族に言うな』『軍事機密を扱う立場にいるので、今の二人のやり取りは秘密にしなければならない』など。そうすると、その秘密の事情のため、この容疑者のような条件がそろった被害者は誰にも相談できず、詐欺団から受けるプレッシャーを解消するための動機として不正を選んでしまったのかもしれない。

 

③正当化

「正当化」とは、不正行為の実行を積極的に是認しようとする主観的事情のことです。

 

相手の詐欺師は、日本に来たら大金を返せると約束していました。したがって、『彼が来ればお金を元に戻せる。それまでの少しの間借りただけ、いずれ返すものだ』という勝手な言い訳が容疑者本人の中で出来上がっていた可能性はあります。

 

この種の詐欺の手口は、詐欺師が被害者に巨額の現金を送る、あるいは詐欺師の持つ(偽の)銀行口座に巨額の預金があることをほのめかします。それを示す証拠を写真や偽サイトなどで示されます。被害者はその大金を信じて期待します。

 

恋人(詐欺師)が日本に来て、その大金が手に入れば、あとは穴を埋め尽くして何事もなかったように過ごせると信じていたのでしょう。そして、これは『彼のためだから』と正当化していたかもしれません。詐欺師によるマインドコントロールを受けて、著しい倫理観の欠如を引き起こしていた可能性もあります。

 

今回発覚した事件は、まさに『不正のトライアングル』の3つの条件がそろっていたものでした。

 

 

 

参考資料;

BEI ビジネス倫理研究所『不正のトライアングルは語る』