老シンデレラの帰還 ①妻の決心

老シンデレラの帰還 ②自宅でできること

より。


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特養から自宅に、時間制限はありますが外出を利用して4年ぶりに戻った義母のために、近所のお年寄りが妻の呼びかけに応じて集まってくれていました。

 

 

何枚か記念写真も撮りました。

 

 

あっという間に時間が過ぎます。

お話は尽きず、義母は疲れたそぶりもありませんが、介護タクシーが迎えに来ました。

シンデレラの時間は終わりです。

 

淑女の皆様は、義母を見送ってくださいました。

妻と義妹は同じように外へ出ていきます。妻は同乗して特養に戻っていくのです。

 

私は婿ですので、黒子(正しくは黒衣(くろご))に徹していました。車いすの向きを変えたり、扉を外して広くしたり、妻と義妹に声を掛けたりしていたのです。

小鹿野歌舞伎HPより

 

もちろんこっちではない…

黒子のバスケ©藤巻忠俊、黒子のバスケ製作委員会 

 

 

面会が終わると、取り外した扉をはめ直したり、廊下の家具を戻したり、一人残って片づけをしていました。

 

すると――

 

外から「ぱりさーん」と呼ぶ声がします。

 

一番高齢の老淑女が「今日はほんとにありがとう」と声を掛けてくださったのでした。

 

 

「いえいえ、みなさんこそありがとうございました…」

とやっとのことで声を絞り出しました。

私の尽力を認めてくださったようです。

 

「またよろしくお願いします!」

と声を掛けていました。妻には無断で「また」と言ってしまった…

 

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妻も感じ入るところ大だったようで、よかったと何度も口に出していました。

 

「思い残すことあったら嫌だなと思って」

 

 

そこで妻に指摘してやりました。

 

「お葬式会場で、あの皆さんに『いっぺんでも会いたかった』って泣かれるところだったんやで」

 

「…頑張ってよかった――」

 

 

 

「またできる?」

 

「うーん…」

 

妻は病院の余命宣告を重く受け止めており、まもなく命が尽きるのではないかと考えていたのです。「次」はあるのかと…

 

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しかし、第2ラウンドはすぐにやってきました。

 

妻の恩師が卒業後も義母とは友誼を保っており、私どもの結婚式にも参列してくれたほどですが、この方が「会いたい」と言ってきてくれたのです。

もちろん事情はある程度報告しています。ですから…余命いくばくもない状態を想定して、お忙しいスケジュールを縫って意を決してご依頼してきてくださったのです。

 

🄫ぱりさいびと

 

特養にお連れしますと、別室で面会させてもらえました。

 

「誰だかわかる?」

 

果たして義母は即答で「〇〇先生」と…!

 

「おいくつになりましたか?」

「さあ…何歳やったかな。73」

全員が噴き出しました。義母は戦中の生まれ。幾つサバを読んでいるのか。

 

どんな歌が好きだったかという話になり、少し先生が歌いかけると、続いて歌い始めました。

「リンゴの歌」も二人で歌われます。三橋美智也都はるみ、いくつも先生は思い出して呼びかけてくださり、義母はよく覚えていました。島倉千代子「からたち日記」は何度も歌っていました。

 

孫(ぱり娘)の話も、楽し気に聞いています。

先生もぱり娘のことを気に入ってくださっているので、話が弾んでいます。

 

その他、記憶の怪しいところは「わからん」と言いながらも、そのわからないということを含めて、年齢以外は(笑)正確に応答している様子に、先生は、

「もっと何にもわからないような状態を想像してたんだけど、どうしてどうして、全然元気! まだまだ生きられるわね。またお話ししに来れるわ! ぱりさん、お願いね」

と喜んでおられました。

 

私も

「自宅」での義母を見て

「まだまだ長生きするのではないか…」

と思ったのです。

 

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「まだ5年くらい生きるんちゃうかな?」

と言ってみました。

 

妻は「え~? そうかなあ…」と悲観的です。

 

しかし…私は思うのです…

自宅に帰ったことで、活力が呼び覚まされたのではないか。

 

足のむくみも消えており、手の黄疸も消えていました。

灯ったいのちの炎。

そんなスイッチを「自宅」が押したのではないか。

 

「自宅」の魔法はいのちの魔法だったのではないか。

 

黒線入れておきます…

 

 

タイミングを見はからって、妻をそそのかしてみるつもりです。

そして――

最期の日に自宅に居られたら…と夢想しています。

 

元のかかりつけ医が往診してくれるのか、死亡診断書を書いてくれるのかなど、ハードルは高く、妻がその気になることは十中八九ない話ですが。