ヤマダさんは中学生になりました。
習い事の少林寺は続けていました。
中学2年生の時でした。
少林寺の先生が高齢で体調不良の為、指導を引退する事になりました。
そこで、他道場で稽古を続けて師範の免許を取った息子さんが新たに師範になる事になったのです。
お父さんである先生はヤマダさんが覚えるのが遅いのを受け入れていました。それは覚えるのは遅いけれど、性格が優しく良い子だからというのと一生懸命稽古を頑張っていたからです。
なので、覚えが遅くても優しく根気強く教えていました。おかげでヤマダさんは続けられ、ゆっくりながら少林寺を覚えていく事が出来たのもあります。
息子さんはそれを受け入れておらず、覚えの遅さにイライラする事がありました。
「覚えないのはやる気がないからだ。覚える気がないからだ」
そう思い、ヤマダさんに厳しく指導するようになりました。
「このままだと後から入った子に抜かれるぞ」
ハッパをかけても効果なし。
「何で覚えないんだ?何で簡単な事が覚えられないんだ?」
注意をすれば縮こまってしまう。覚えが悪いから厳しく注意をすれば覚えてくれると思ったが覚えてくれない。
発達障害がある人にありがちなのは、本人はやる気があるのに、周りからは「覚えが悪いのでやる気がない」と誤解をされる事があります。
息子さんはどうすればいいのか困るばかりでした。今迄、色々な子供を見てきたけど、こういう子は初めてでどう教えればいいか分からない。困った!
ヤマダさんは「前の先生のほうが良かった、いつも新しい先生は私にだけ怒ってばかり、他の子が同じように出来なくても他の子には怒らないのに、怒られるのはいつも私。もう辞めたい」と思うようになりました。
発達障害がある人の中にはスパルタなどの厳しい指導が向かず、厳しく注意をしたとしても怒られた内容が理解出来ない場合があります。
又は、怒られると怒られた内容よりも怒り方や口調を気にしたり、人格や存在否定をされたようになる人もいます。
それは怒られる事が人より多いので自分に自信を無くし、自分は嫌われている、必要とされていないと感じる等理由は色々あります。
ヤマダさんの場合は短期記憶が苦手でいっぺんに色々言われると頭が混乱して理解が出来なくなるのが理由の一つでした。
ヤマダさんはだんだん稽古に行くのがイヤになり、稽古に行こうとすると気分が悪くなるようになりました。
とうとうヤマダさんは長年続けてきた少林寺を辞めることにしました。
親には学校の勉強が難しくなったから、とウソをついて辞めました。そうでも言わないと「わがままだ」と言われて辞めさせて貰えそうにないからです。
ヤマダさんは少林寺の覚えが悪いけれど、少林寺が大好きでした。でも、スパルタ指導のせいで少林寺が好きという気持ちが失せてきました。
人よりも時間をかけて丁寧に教えていけば伸びる人なのですが、息子さんのやり方は合いませんでした。
本人の興味や、やる気や得意な事でも、環境や環境先の方針や一緒にやる人との相性が合わなければ伸びないと思います。
興味があるか、または得意な事が本人に向いていても経済的な理由で続けられない、得意な事や興味のある事が出来る環境が無い場合もあります。
発達障害の人はやる気や得意な事をすれば伸びるとは言いますが、人によっては限界があるのです。
本人が得意な事があっても本人に興味が無いか、嫌いな事であれば伸びないのです。
発達障害のあるなし関係なく、世の人全員が「得意な事=興味がある」とは限らないですし。
得意な事、関心がある事をしたい人が何も気にしないで思いきり出来れば素晴らしいですね。