
「硬すぎて歯が折れそうだ」そんなクレームさえ寄せられる、まるで石のように硬いアイスが、なぜ半世紀以上も愛され続けているかを知っていますか。
井村屋の創業者、井村二郎。もともと和菓子屋だった彼らは、夏場になると羊羹や饅頭が売れなくなることに頭を抱えていました。「夏でも売れる和菓子はないか」。そこで思いついたのが、和菓子の定番である「ぜんざい」をそのまま凍らせてアイスにするというアイデアでした。
しかし、開発は単純ではありませんでした。アイスを柔らかく食べやすくしようとして、乳固形分や添加物を入れると、どうしても小豆本来の繊細な風味が損なわれてしまうのです。「これでは、ただの小豆味のアイスだ。井村屋が作るべきは、本物のぜんざいだ」。
彼は決断を下します。「余計なものは一切入れるな。小豆と砂糖と水だけで作れ」。
その結果、出来上がったのは予想外の代物でした。乳化剤や安定剤を使わず、空気を含ませずに凍らせたため、カチコチに固まってしまったのです。
「こんなに硬くては売れないのではないか」。そんな不安の声に対し、彼は胸を張りました。「柔らかくするために混ぜ物をするくらいなら、硬いままでいい。この硬さこそが、余計なものが入っていない安心の証拠なんだ」。
その潔い哲学は消費者に届きました。あずきバーは年間3億本近く売れる国民的アイスとなり、「世界一硬いアイス」という愛あるツッコミと共に、日本の夏を冷やし続けています。
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