「食後、何飲む?」
夕食を片づけ終えて
ようやくソファに腰を下ろした
タイミングで、夫に聞かれた。
一日が、やっと終わった感じがしていた。
仕事も、家のことも
最低限は全部やった。
なのに、その一言を聞いた瞬間
頭の中が、スッと空白になる。
コーヒー
紅茶
ハーブティー
たった3択なのに
「これがいい」と言う気持ちが
どこにも見当たらない。
「……なんでもいい」
そう答えたあと、
胸の奥に、
微妙な引っかかりが残った。
その少し前。
夕方から夜にかけて
私はずっと気を張っていた。
仕事のメールを返しながら
洗濯物を取り込み
夕飯の段取りを考え
家の中の細かいことを処理していた。
その途中で、
リビングから夫の声がした。
「ティッシュがなくなったー」
立ち上がれば、
自分でできることなのに
何でわたしに言うの?
それでも、
こちらが動く前提で声をかけられたことに
一瞬、強いイラッとが走る。
「私は、あなたの家政婦じゃない」
心の中では
そうハッキリ聞こえた。
でも口には出さない。
だって今ここで言えば空気が変わるから。
だから、何も言わずに立ち上がって
新しいティッシュの箱を手渡した。
そのまま、次の用事に移る。
「自分でできることも引き受ける」
「違和感を飲み込む」
それを何度か繰り返したあとの、
「何飲む?」だった。
決められなくなったのは、
感覚が鈍いからじゃない。
その日一日、
自分の「嫌」を後回しにして、
誰かの都合に合わせ続けただけ。
セッションでもね
同じように悩む方からご相談を受けた。
「家の中での些細な事
今すぐ爆発することじゃないんだけど
なんで私ばっかり…って
気持ちになってイライラするんです。」
「イライラしたら、
器の小さな人間みたいで怖くて」
「だから、
人に言われるがままに
いうことを聞いていたら
自分の好みがわからなくなったんです」
って。
でもその本当は
「私の負担に気づいてほしい」
「これ以上、我慢したくない」
という感情が、
置き去りになっている。
感じようとすると、
全部が崩れそうで怖い。
だから
感じずに流してきた。
その結果、
「何が飲みたいか」
という小さな問いに、
答えられなくなる。
選べない夜は、
もう無理を重ねられないというサイン。
感覚を取り戻すきっかけは、
大きな決断じゃない。
「今のは、正直きつかった」
「あれ、やりたくなかった」
その一言を、
自分の中で消さないこと。
それだけで、
感覚は少しずつ戻ってくる。
考えて動き続けてきた人ほど、
感覚に戻るのが怖くなります。
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