新元号『令和』が本日より始まりますね![]()
「令」の字はすずやかで、昔から好ましく感じています![]()
意味を紐解くと
りょう:古代において、「律」と共に根本をなしたおきて
りつ:言いつけ(指示という意味で)
(自分が対峙する)相手に関係ある人を尊敬して言う語(令嬢、令息など)
では「律」とは?
物事を行う基準となるおきて
音の高さ、およびその規定(旋律、音律など)
と出てきます(グーグル検索より引用)
自由度が高く、基準を見失うシーンが昔より増えた現代において
改めて襟を正すような心持ちを感じられます![]()
中には「命令」や「律令制」などを連想して
良いイメージでは受け取れない人もいるようですが
どのような言葉でも
組み合わせや使い方によって意味は微妙に変化しますね![]()
その言葉をどう使うか
どう生かす(活かす)かは
常に、自分次第なのだと思います![]()
今日からまた心新たに
一歩一歩、前を向いて進んで行きたいですね![]()
***母というひと-060話
返事もできずに沈黙している私に、母は突然頭を下げた。
「あんた、頼みがあるんやけど…
探偵を頼んでくれんね」
「どうにかして相手を見つけちゃろうと思って後をつけたりしたんじゃけど、分からんのよ。
こうなったら相手を見つけて、慰謝料をふんだくっちゃるんじゃ」
(こんなこと娘に頼む親がいる?)
さすがに即答できず固まった。
しかし母親は一度言い出したら聞かないタイプだ。
(慰謝料をふんだくるって発想が汚い)とも思うと、抵抗感が強くなる。
「頼むわ。あんたにしか頼めん。あんたは賢いけんできるじゃろ?
私は弱いけん自分じゃ何もできんのじゃ。弁護士と話すやらしきらん。
頼むけん、なあ」
何度も何度も頭を下げられて、私は身動きできずにいた。
「このままじゃ私はおかしゅうなる(おかしくなる)。
あの人はあんたに嘘をついて、平気で笑っちょったんじゃろうが。もう許せん」
父の笑顔が脳裏に浮かんだ。あの、ハハハと声を上げて笑った時の。
あの顔を思い出すと、父への怒りが確かに湧いてくる。
「探偵つけて、相手が見つかったらどうするの。
母さんはどうしたいの?」
それを聞いてどうなるものでもなかったが
母に少し理論的に考えて欲しくて質問すると「離婚するわ」と返ってきた。
「あの人とは離婚する。もうこりごりじゃ」
それを聞いて
(それなら証拠を掴んでおくのも良いのかも)と思った。
長い間、父の絶対君主制にかしづき
黙って従い続けて生きてきたのだから、解放されるのも悪くはない。
書きそびれていたことがあるので、ここで付け足しておく。
この頃、私には一緒に住んでいる男性がいた。
相手が一人暮らしの私の家に転がり込んできただけで
お互い良い年だが、結婚するつもりもなく生活費は私もち。
いずれは別れた方が良いだろうと考えていた相手だ。
けれど両親のこの騒動で私自身が少し情緒不安定になり
一人になる寂しさよりも
なあなあの関係を続けることを選んでいるような状態だった。
母にはその相手の存在を言っていなかった。
私は、付き合う相手の話は一切家族には聞かせない。
「仕事もあるのに悪いけど、あんたにしか頼めんけん。
お兄ちゃんにはかわいそうで言えん。あんた頼まれておくれ」
カチンと来た。
またか、と思わず嫌な気分になる。
母にとって "お兄ちゃん" は、いつもどこまでもかわいそうな存在で
辛いことや大変なことは
全部娘にツケておけば良いとでもいうような
あまりにもナチュラルな無神経さ。
「探偵って高いらしいよ」
最後の念押しのつもりで聞いてみる。
「それは全部私が払うけん」
考え直す気はないようだった。
そして、ある程度は貯蓄に余裕があるのも今の言葉で分かった。
それなら離婚しても、母一人で生きて行けるのかもしれない。
「分かった」
私は承諾した。
熟年離婚は別に珍しい話ではない。
母が「かわいそう」とかばい続ける兄だって
もう一家の主人で、二人の娘の父親なわけだ。
両親が離婚したところで動揺するような年齢じゃない。
たった今、母親の味方は自分だけ。
そもそもこの状態で逆らえるわけはなかった。
浮気には大きく分けて二種類あると思っている。雑な分け方だけど。
節操のない「女とヤレるなら何でも良い」タイプと
妻や親との確執など家庭内に問題があって
逃げ場を外に求めるタイプだ。
父は前者だった。
そんな父を、私は子供の頃から母よりずっと好きだった。
理論的な話ができない母を、私はいつもどこかで疎んじていた。
その気持ちに蓋をして、母の味方につこう。
そう決めた。
自殺なんかされるくらいなら、離婚された方がマシに思えた。
そしてトラブルから立ち直ろうとする時
帰省するのを許してくれた母に、恩を返すなら今だ。
それがこの時自分で出した答だった。
帰宅すると、のほほんと同棲相手がテレビを見ながら笑っていた。
それを邪魔とも思い、部屋の明るさに救われもした。
玄関に出迎えてくれたビビを抱き上げ、キッチンへ行く。
カラカラに乾いた喉に一気に水を流し込んで
私はタウンページを持って奥の部屋へ行った。
探偵を探すために。
***続く
これはnoteから転載している、母の人生の物語です
ここまでの話はnoteで読めます
母というひと-001話(母の誕生から結婚生活まで)
母というひと-048話(私が家を出て、また戻るまで)
母というひと-051話(私が戻った後の母の人生)
