◆完璧ではないからこそ頭がいっぱいにならない
2月の「心理学講座」は、‟記憶”に関する心理学の最終回。
米ハーバード大学の心理学者ダニエル・シャクター博士は、著書『なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか』の中で、記憶のエラーを7種類あげています。それらは・・・
①物忘れ(忘却や病的なもの)
②不注意(予定の失念など)
③妨害(名前のど忘れなど)
④混乱(デジャヴなど)
⑤暗示(出生時の記憶を覚えている気になるなど)
⑥書き換え(バイアスなど)
⑦つきまとい(いわゆるトラウマなど)
こうして考えると、主に⑤や⑥に含まれる偽りの記憶以外にも、実に様々な【不具合】が起きていることがわかります。
私たちの記憶は、どうして‟完璧”ではない性質をもつようになったのでしょうか。高橋博士は、枝葉末節を省いて本質だけを覚えておける点を利点としてあげます。
というのも、眼などの感覚器官は、脳への膨大な量の情報を入力しています。私たちが意識するのはその一部だけで、さらにその一部が脳の海馬で記憶されます。
もし全てを記憶していたら、すぐに容量オーバーになってしまうでしょう。また、忘却も常に起きています。
独の心理学者ヘルマン・エビングハウスは定量的な実験を行い、記憶の‟有効期限”を調べました。その結果が【忘却曲線】として知られています。
20分後に約4割、1日後には7割近くが忘れられたといいます。実際には、覚える対象によって忘却の速度は大きく違うと考えられています。
◆辛い記憶を楽しいものに変えることも必要
結果的に残った長期的な記憶は、人間が生まれて死ぬまでの時間スケールでいえば、永続的なものです。しかし、必ずしも、不変ではありません。
記憶の変わりやすさは、使いようによっては役に立ちます。
受験やハードな仕事は、その当時は辛いことが多いものです。しかし記憶は変わりやすいからこそ、辛い出来事の記憶であっても、年月が経ってからポジティブにとらえ直される場合もあります。
(※1953年(昭28)公開の松竹映画、原作は菊田一夫氏)
例えば、2009年に報告された日本の研究では、大学生46名を参加者として、受験生活の記憶をできるだけ楽しかったものとして語ってもらいました。
そして、1週間や1ヶ月などの間をあけて、受験生活の本来の記憶について語り直してもらうと、ポジティブな単語が増えて語られるようになったと報告されています。
◆生きる上で記憶のエラーはつきもの
「記憶は常に正確なものである」というのは誤った信念です。ふだんであっても私たちは、実は注意を向けたものしか覚えていません。例えば、5円玉を見ずに正確に描けるでしょうか?
記憶は生きることの根幹であり、そのエラーはつきものです。誤りやすい特徴を知ったうえで、上手くつき合っていきたいものです。(一部転載終了)
(参考図書)ゼロからわかる心理学(別冊ニュートン)
(画像拝借)エビングハウスの忘却曲線とは(ツギノジダイ)
★過去記事
エビングハウスの忘却曲線








