キラキラと微細な音を立てながら黄金の光が舞い降り、気がつくとマヤは、日の当たる教室の片隅にたたずんでいた。未来から来たマヤの姿は、他の人からは見えないようだった。そして、ぽつんと一人で、粘土で遊んでいる少女にゆっくりと近づいてゆき、こう尋ねてみる。
(マヤ)
「・・・マヤちゃんは、みんなと一緒に遊ばないの?」
少女は、黙々と粘土を続けている。少女にも未来からやって来たマヤの姿は見えないのだろうか?
(マヤ)
「・・・なんで、マヤちゃんは粘土をしているの?」
もう少し大きな声で尋ねると、少女はチラッとマヤの顔を見上げ、クリスタルのように透き通った声でこう言うのだった。
(小さいマヤ)
「子どもたちと一緒に遊びたくないから、一人で粘土をしているの」
(マヤ)「どうして?」
(小さいマヤ)
「わたし、子どもじみた遊びは好きじゃない。先生はわたしを子ども扱いするのよ」
※以降、発言した人物はお分かりなるでしょうから主は記名せず
「だって、マヤちゃんは、まだ、幼稚園でしょ?」
少女の瞳は一瞬のうちに凍りつき、鋭利な光を放っている。そして、再び下を向き、黙々と粘土をはじめるのだった。
「ねぇ、マヤちゃん、粘土でなに作っているの?」
再び尋ねてみると、少女は少し迷惑そうな顔をして「マル」と答える。
「どんなマル?」
「きれいな、まんマル」
「どうして、きれいなまんマルを作るの?」
「宇宙はきれいな、まんマルだから」
「そうか。マヤちゃんは、粘土で宇宙をつくっているんだね?」
「そう。宇宙」
少女は瞳を輝かせ、心なしか小さく笑っている。
「マヤちゃんは、どんな宇宙を作っているの?」
「わたしね、宇宙がどうやって生まれたか、宇宙誕生の物語をつくっているの。でもね、先生やみんなに宇宙の物語を教えてあげても、誰もわからないみたいなのよ。粘土は粘土だって・・・宇宙じゃないって」
「ねえ、マヤちゃん、どうして宇宙誕生の物語を作っているの?」
「うん。生まれて来る前にね、白いおひげのおじいさんに教えてもらったの。この物語を忘れちゃいけないよって、おじいさんは言ってたの。だから、忘れないように粘土でつくっておくのよ」
「そうかあ。白いおひげのおじいさんが教えてくれたんだね。マヤちゃん、お姉ちゃんにも、宇宙の物語を聞かせてくれる?」
「いいよ」
少女はあっさりとそう答えると、小さな手の平を前後に動かしながら、粘土の塊をひも状に伸ばしてゆく。そのひもはどんどん長くなり、両手を広げたくらいの長さになった。(次回へつづく)
以上、「宇宙の羅針盤(上)」より転載しました。



