≪円盤旅行(インド編)≫(青字は少年ペドゥリート)
アンデス山脈の上をほんの3秒で飛び越した。超高度に到達してしまったために、いくつかの都市が光のシミのように見えた。 そして、あっという間に月の光を浴びた巨大な大西洋が目の前に広がった。
いくつもの大きな雲の塊が視野をさえぎった。水平線に向かうにつれて視野が晴れてきた。僕たちは東の方へ進んでいる。陸地が見えてきた。
太陽はかなりの速さで昇りはじめた。それは本当に想像を絶する光景だった。アミが太陽を動かした!ほんのわずかの間に昼間にしてしまった。
(どうして太陽は動かせないっていったの?)
アミは僕の無知を楽しんでいた。
「太陽は動かない。僕たちがすばやく動いただけだよ。」
(今、どのあたりにいるの?)
「アフリカだよ。」
(アフリカ!?でもほんの1分前には南アメリカにいたじゃない!)
「君が昼間にこの円盤で飛行したいって言うから、昼間になっているところに来たまでの話だよ。向こうから来ないなら、こっちから行ってやる。それだけのことさ。アフリカのどの国へ行ってみたい?」
(えーと・・インド!)
彼の笑いは僕の地理の知識がどれほどお粗末であるかを示していた。
(どこでもいい。君の好きなところで・・・)
「ボンベイはどうだい?」
(うん、最高だね。アミ)
アフリカ大陸の上空をすごい速度と高度で通過した。後になって、僕は家で世界地図をみながら、この旅行を正確に再現することができた。インド洋に着き、そこを横切っている間に、太陽は目まいがするような速さで上昇していった。突然、インドの上空に着いた。
急ブレーキをかけ、円盤はピタリと静止した・・・僕は驚いて
(どうして、こんな急ブレーキをかけたのに、僕たちは窓にぶつからないの?)
「なーに、慣性の打消しをしてしまうだけのことだよ・・・」
(あ~あ・・なんて簡単なんだろう・・・)
ボンベイ上空をおおよそ100mほどの高度まで下降し、町の上空を散策しはじめた。まるで映画か夢を見ているようだった。
トリップアドバイザーより
白いターバンを頭に巻いた男や、僕の国の見慣れた家とは全然違う作りの家々、そして特に通りを埋め尽くしている大勢の人たちが、僕の注意をひいた。僕の住んでいる都市では、中心街のラッシュ時でもこんなに多くの人は見られない。
あそこはどこもかしこも、人、人、人でいっぱいだった。あれは僕にとって全くの別世界だった。突然、僕は現実にかえった。おばあちゃんが心配になってきた。
(もう昼だ、きっと僕がいないのを心配している・・もう帰らなくちゃ)
「心配は無用だよ。君のおばあちゃんはいつも何時ごろ起きるの?」
(だいたい8時半ごろ・・)
「だったら我々が時間を引き延ばせるということを計算外にしても、まだ8時間半もある・・」
(でも心配だ・・ちょっと見てみたいんだけど)
「じゃ、ここから見てみよう!」
アミはある画面のスイッチを操作した。高い視点からとらえられた南アメリカの映像が現れ、海岸の家、屋根、おばあちゃんと次々と見えてきた。おばあちゃんはまるで目の前で寝ているようだ。信じがたいことだった。
「目を覚ましてしまう心配はなさそうだね。これ以上心配しないようにしてあげよう~」
マイクの一種のような物を手に取った。ボタンを押して「プシュー!」と音をたてた。
おばあちゃんは目を覚まして、僕の寝室に向かい、ドアを開け、僕のベッドの方を見た。僕はベッドに寝ているようにしてきたのだが、おばあちゃんは何かが気になったらしい。
アミはすぐにそれに気がつき、マイクを口に近づけて寝息を真似た。おばあちゃんはそれを聞き、安心してドアを閉めて自分の寝室へ引き上げていった。
「これで安心しただろう?」
(うん、でも信じられないね。おばあちゃんは向こうで寝ていて、僕たちはここで昼間だ)
「地球人はあまりにも距離と時間に制約され過ぎて生きているからね・・」
(それ、どういうこと?)
「今日、旅行に出て、昨日帰るということもできるんだ」
(まるで頭がおかしくなるような話だね・・・アミ、今度は中国に行ける?)
「もちろんだよ。中国のどこに行きたい?」
(東京!)
「じゃ、東京へ行こう。東京は日本の首都だ!」
アミは笑いたいのを抑えながら言った。
「アミ 小さな宇宙人:エンリオ・バリオス 著」(徳間書店)より
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