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7月になったので、ブログのヘッダーを変えました。
3年前8月に行った南仏、コート・ダジュール・ニース。
プロムナード・デ・ザングレ(イギリス人の遊歩道)から
アンジェ湾(天使の入り江)を眺めていた1瞬。
プロムナード・デ・ザングレの石畳は、
朝から晩まで陽に焼かれ、
靴底よりも記憶のほうを熱くした。
眼下にはアンジェ湾がひらけている。
名に似合わず、天使らしいものは一羽も見えなかったが、
その代わりに無数の光のかけらが、波の上で忙しく瞬いていた。
海面には、ムーブピンクのパラシュートセイリングが一つ、
時々風にあおられては、ゆっくりと空を滑って行く。
その色は、曇った心臓の一隅だけを、
器用に塗り替える絵の具のようであった。
十代の頃、理由もなく世界を赦していた自分が、
その下にぶら下がっているような気さえする。

旅を急ぐ癖は、この三日間だけは
どこかへ置き忘れて来たらしい。
ひもすがら遊歩道を行きつ戻りつしても、
時計の針は頑固に同じ場所を指しているように見えた。
思えば、何かになろうとしていた十代と、
何かであったはずの今とのあいだには、
海よりも深い隙間がある。
その隙間を覗き込みながら、
私は水平線のあたりに、
見えない欄干を探していた。
そこにもまた、天使の影はなかった。
空と海との境は、古びた水彩画の
輪郭のように曖昧で、しかし人々の
笑い声だけは、どこまでも輪郭を失わなかった。
風が吹く。はだけたシャツの胸もとへ、
ひとすじの潮のにおいが忍びこむ。
鼻先に触れたそれは、学生鞄に押しこんだまま
忘れた古い文庫本を、ふいにひらいたときの
紙の匂いに、よく似ていた。
その匂いを追いかけるうち、
旅人であるはずの自分から、
旅だけが抜け落ちて行く。
残ったのは、
欄干に凭れたまま瞬く波を見ている、
ひとりの若い日だけである。
最後までご覧頂きありがとう。
今日が良い日となり、
明日がさらに素晴らしい日となりますように
。
撮影 文 熊谷
インスタフォロー宜しくお願いします↓↓↓
https://www.instagram.com/naoo_kumagai/
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プロムナード・デ・ザングレの石畳は、
朝から晩まで陽に焼かれ、
靴底よりも記憶のほうを熱くした。
眼下にはアンジェ湾がひらけている。
名に似合わず、天使らしいものは一羽も見えなかったが、
その代わりに無数の光のかけらが、波の上で忙しく瞬いていた。
海面には、ムーブピンクのパラシュートセイリングが一つ、
時々風にあおられては、ゆっくりと空を滑って行く。
その色は、曇った心臓の一隅だけを、
器用に塗り替える絵の具のようであった。
十代の頃、理由もなく世界を赦していた自分が、
その下にぶら下がっているような気さえする。

旅を急ぐ癖は、この三日間だけは
どこかへ置き忘れて来たらしい。
ひもすがら遊歩道を行きつ戻りつしても、
時計の針は頑固に同じ場所を指しているように見えた。
思えば、何かになろうとしていた十代と、
何かであったはずの今とのあいだには、
海よりも深い隙間がある。
その隙間を覗き込みながら、
私は水平線のあたりに、
見えない欄干を探していた。
そこにもまた、天使の影はなかった。
空と海との境は、古びた水彩画の
輪郭のように曖昧で、しかし人々の
笑い声だけは、どこまでも輪郭を失わなかった。
風が吹く。はだけたシャツの胸もとへ、
ひとすじの潮のにおいが忍びこむ。
鼻先に触れたそれは、学生鞄に押しこんだまま
忘れた古い文庫本を、ふいにひらいたときの
紙の匂いに、よく似ていた。
その匂いを追いかけるうち、
旅人であるはずの自分から、
旅だけが抜け落ちて行く。
残ったのは、
欄干に凭れたまま瞬く波を見ている、
ひとりの若い日だけである。
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