今日はゼリーの日とパリ祭の間 | ザスタのクマさん

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今日はゼリーの日です。

ゼリーの原料であるゼラチンがフランス菓子や料理に盛んに使われることから、
フランス革命と同じ日を「日本ゼラチン・コラーゲンペプチド工業組合」が  
「ゼラチンの日」及び「ゼリーの日」に定めました。

七月十四日。
台所のガラス鉢には、
昨夜の名残りのゼリーが、
まだ震えてゐる。

巴里の石畳に血を流した民衆と、
冷蔵庫のなかで微かに光るこの菓子とが、
どうして同じ暦の上に並ぶのか、
私には少し不思議である。

ゼラチンは、どこか哲学的だ。
熱に溶け、冷たさに従ひ、
器のかたちに身をゆだねる。
自由を叫ぶでもなく、
しかし囚人でもない。







スプーンを入れると、
革命前夜の城壁のやうに、
あっけなく崩れる。

その断面に閉ぢこめられた
果物たちは、群衆のやうに色とりどりだ。

そして、一七八九年七月十四日、
雑多な靴音が押し寄せ、錆びた大砲と
不満とが一緒くたになって門を揺らし、
やがて城は落ちたが、崩れたのは石だけではない。
王の時間もまた、静かに割れたのである。




『民衆を導く自由の女神』 ウジェーヌ・ドラクロワ



いまは、革命という言葉は派手だが、
実際は長い夜に似ている。飢えた財政、
鈍い貴族、苛立つ市民。ロウソクの火のまわりで、
自由や平等という聞き慣れぬ語がゆっくり形をとる。

バスチーユ襲撃は、その夜の最初の雷鳴にすぎなかった。
だが人は、最初の音だけをよく覚えている。
あとに続く血と討論と処刑台の季節は、
教科書の余白に押し込められてしまう。







今では牢獄よりも記憶の方が
牢屋らしくなってしまい、
石も鉄格子も観光客の
スマートフォンに押し込められている。



現在のバスチーユ記念碑と広場、向かって右奥オペラ座。



銃声の代わりにシャッター音がひびき、
怒号の代わりにドローンが低くうなっている。
革命という言葉も、ワインと同じ棚に並べられ、
ラベルの年号だけが丁寧に読まれる。

だが、広場を吹き抜ける風は、
いまだに火薬とパンの匂いをまぜこぜに
運んでくる気がする。

生きにくさだけは、
どの世紀にも余っているからだ。

夜になると花火がセーヌの水に沈み、




10数年前パリ祭、トロカデロ広場人混みの上のエッフェル塔と花火。




石の城はとっくにないのに、
日付だけが同じ顔で残るのは不思議だ。
七月十四日は、圧制の象徴を潰した日であり、
いまは観光と安全を気にしながら
花火を見上げる日の名札でもある。

人々は革命の細部を忘れ、
そのかわり「自由・平等・博愛」という、
少し手触りのよすぎる言葉だけを紙の旗のように掲げて歩く。

その薄さを笑うことはたやすいが、紙でも、
掲げ続ければ風の向きくらいは示すのかもしれない。








最後までご覧頂きありがとう。

今日が良い日となり、

明日がさらに素晴らしい日となりますように晴れ。

撮影   文    熊谷

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