デールダッフィー 今までのお話し デールダッフィー


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翌朝5時。

初めて柊也と一夜を明かした美生の目覚めは、スッキリとしていた。

ーー柊也・・・・大好き・・・・。

小さなシングルベッドの中、生まれたままの姿の2人。

美生の身体を包み込むようにして眠っている柊也の体温が、

とても心地いい。

ーーずっと、このままでいたい・・・。

しばらく、その無垢な寝顔を、間近で眺めていた美生。

ーー柊也のまつ毛って、なんて長いんだろう。

   それに、よく見ると唇の形も可愛い・・・。

そっとキスをしたい衝動に駆られ、彼の唇に、自分の唇を重ねようとしたが、

その瞬間、

「 う~~ん・・・美生・・・・・。 」

寝返りを打つと、柊也が目を覚ました。

「 おはよう・・・柊也。 」

頬を染め、恥じらう美生。

「 おはよう。

  目が覚めると、すぐ傍に美生がいる。

  なんだか夢みたい。 」

「 夢なんかじゃないよ。 」

美生は微笑むと、柊也にキスをした。

「 美生・・・。 」

「 可愛い寝顔に、沢山、キスしようと思ったのに!!

  柊也ったら、目を覚ましちゃうんだもん。 」

少しだけ頬を膨らませてみせた後、美生は微笑み、

「 ・・・私・・・今、とても幸せだよ・・・柊也。 」

「 オレも・・・。 」

2人は微笑み合うと、どちらからともなく自然に唇を重ね合わせた。





それぞれにシャワーを浴びた後、美生の作ったサンドイッチを食べながら、

2人の会話は、いつもよりも一層に弾んでいた。

それは柊也と美生、それぞれの別々だった過去が一つの線でつながり、

お互いの過去の穴を受け入れ合い、

2人で一緒に埋めることができたことへの喜び、

そして2人の絆の強さを、改めて実感できたことが、

愛を一層に深める結果になったからであろう。

そんな和やかな食卓の中、突然、美生がクスッと笑った。

「 なんだよ、美生。

  どうした?

  一人で楽しんで、ズルイぞ! 」

「 ”昨日のこと” ・・・思い出したの・・・。 」

「 昨日のことって・・・もしかして・・・ ”昨夜のこと” ?

  ごめん・・・オレ・・昨夜は・・・そのぅ・・。

  美生が・・眩しいくらいに綺麗だったから・・・。

  ・・・かなりドキドキしていて・・・だから・・オレ・・・・。 」

昨夜のことを、照れ臭そうに謝る柊也に、美生は恥ずかしそうに頬を染めると、

「 やだっ・・・柊也、違うってば・・・。 」

「 えっ?

  昨夜のことじゃないの?

  あぁぁぁぁぁぁ~オレって男は~~!!! 」

目をギュッと瞑り、耳まで赤くして、バツが悪そうにする柊也。

「 ごめんね、柊也。

  私の言葉が足らなかったね。

  昨日のことって、赤ちゃんの・・ ”あの子” の名前のこと・・・。 」

「 そうか・・・そのことだったのかぁ。

  あれは・・・絶対に偶然とかじゃないよな? 」

「 うん・・・私も、そう思った。 」

美生は遠くを見るような優しい目をした。





~~~

涼の3年間の話しを、全部、聞き終え、

今の涼が新しい夢に向って、歩き始めていることに、心から安堵し、

彼を励ました柊也と美生は、最後に手を合わせ、黙祷しようと、

水子地蔵たちの前に来ていた。

もちろん涼も一緒だ。

自分の子の水子地蔵を前にして、美生が言った。

「 涼・・・私ね。

  昨日、柊也と一緒に赤ちゃんの名前を考えたの。

  もっと早く名付けてあげられたら、よかったとは思うんだけど、

  それをすることで、亡くしてしまった悲しみに、

  繋がってしまいそうで、今まで怖くって出来ずにいたの。

  でも柊也が名前を考えてあげようと言ってくれて、

  やっと私も踏み切ることが出来た。

  もちろん父親の涼のことを、頭の中に入れて、考えた名前なの。 」

「 ミウッペ・・・・オレからも、今、言おうって思ってたんだけど・・・。

  実はオレも、こっそり赤ちゃんに名前を付けていたんだよ。 」

「 えっ? 」

驚く美生に、更に涼は、

「 もちろんミウッペのことも考えて名付けた。 」

「 なら、どうしよう・・・。 」

助けを求めるように、美生が柊也を見つめると、彼は微笑みながら、

「 まだ涼と美生は、お互いに名付けた名前を教え合っていないじゃないか。

  どちらの名前に決めるかは、そこからだろう? 」

「 あっ・・・そうだよな。 」

涼も笑って納得し、

「 それなら、せ~ので、お互いに考えた名前を言わない? 」

「 うん・・・いいよ。 」

美生も承知をした。

「 それじゃあ・・・・・・せ~~の!! 」

柊也の掛け声で、涼と美生は、ほとんど同時に我が子に付けた名前を叫んだ。

2人が叫んだ名前は ”ゆう” 。

「 えっ??? 」

「 えぇぇぇ? 」

「 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~? 」

涼、美生、柊也が、それぞれに驚きの声をあげたのも無理もない。

「 ねぇ涼!

  涼が付けた ”ゆう” は、漢字で書くの? 」

「 あぁ・・・漢字にすると ”結生” と書くよ。 」

「 えっ・・・嘘? 

  私たちが付けた ”ゆう” も漢字名に変えると ”結生” なの。

  これって、いったい? 」

思い掛けないことに、興奮が修まらない2人に、柊也は笑ってみせると、

「 いいじゃん!!

  それなら問題なしだ。

  ”結生” で決まりじゃん!!

  ”この子” も気に入ってくれているような気がする。

  父親と母親が愛情を込めて付けてくれた名前なんだから・・・。 」

3人は ”結生” が眠る水子地蔵を愛おしげに見つめていた。

~~~





食後のお茶を一口、飲むと美生は言った。

「 それに ”結生” と名付けた理由も、ほとんど同じだったよね。

  涼も、私たちも・・・・。 」

「 そうだな。 」

美生の淹れたブラックコーヒーの香りを楽しみながら、柊也も頷くと、

「 オレたちは ”結生” という名に、

  涼と美生が、どんな形であろうと、父親、母親としてつながっていること。

  いつか涼の・・・、美生の・・・、我が子を思う気持ちが一つに、

  結ばれるように・・・・。

  それぞれの心の中で我が子が成長し、生きているようにと願い、

  ”美生” の名前から ”生” をもらった。

  涼だって、ほとんどオレたちと同じ理由、思いを込めて、

  我が子に ”結生” と名付けてた。

  きっと偶然なんかじゃ片付けられないさ!!

  それにさ・・・ ”結生” って、

  ”ゆい” とか ”ゆき” ”ゆうき” とかとも、読めるじゃん。

  読み方、一つで名前の印象が変わるっていうか・・・。

  美生の決断で ”ゆう” と読むように決めたけれど、

  涼も ”ゆう” と読むように名付けてたこと、すごいことだと感じた。

  もう涼と美生の、父親、母親として、我が子を思う気持ちが、

  既に一つになっていたっていう証拠なんだって思う。 」

ーー読み方、一つで名前の印象が変わる・・・・。

その言葉に美生は自分の脳が、何かに刺激された感覚を覚えた。

すると更に柊也は、

「 それと涼は、こう言っていたじゃないか。

  美生みたいな女の子になることを想像して、

  美生の名前から ”生” の字を取ったと・・・。

  オレさ・・・涼の気持ちがわかるような気がしたんだ。

  女の子は母親に似て欲しいという思い・・・・。

  世の男、全部が同じなのかは、わからない。

  けど・・オレは、自分が結婚して、生まれた子供が女の子なら、

  愛する妻に、全て生き写しの女の子であってほしいって願うと思う。

  涼は ”生” の字に、その思いを込めたんじゃないかな。 」

彼の言っていることに感動し、目を潤ませると、震える声で美生は言った。

「 柊也や涼の気持ち、理解できた。

  それに柊也の話しを聞いている時に、もう一つ、わかったの・・・。

  私は ”とても愛されて生まれた娘” だってことが・・・。 」

頭の片隅で、今までモヤモヤしていたことへの ”答え” が、

美生には徐々に見えてきていた。

「 えっ? 」

訳のわからない表情をする柊也に、涙を拭いながら美生は微笑むと、

「 今から話すと、時間が無くなりそうだから、

  お昼に学食で、ゆっくり話すね。 」

そして一呼吸置き、美生は柊也を熱く見つめると、

「 ・・・ ”昨夜の柊也” とても凛々しくって、男らしかった。 」

「 ・・・あっ・・・・えっ・・・・・・・・。 」

思い掛けない直球攻撃に、何も答えられない彼を見て、悪戯っぽく笑った美生は、

「 さぁ~早く支度しないと、

  お目当ての時間帯の練習室の予約取れなくなっちゃう。

  急いで!!

  急いで!!! 」

何事もなかったかのように、食べ終わっている食器を、手早く片付け始めた。


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