ダッフィー 登場人物 ダッフィー


ミッキー 山下美生 ・・・ K音大3年生 ピアノ専攻 21歳

             背が高い 童顔

             料理上手 負けず嫌い


ミッキー 森田柊也 ・・・ 同大学3年生 バイオリン専攻 22歳になる

             自然体 天真爛漫


ミッキー 工藤涼 ・・・ 美生の高校時代の同級生 元カレ

            子供向けの詩集、絵本作家を目指す



デールダッフィー 今までのお話し デールダッフィー


「プロローグ」


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午後5時半。

寺院を後にして、柊也の運転する車の中、

助手席に座る美生の心は、とても満たされていた。

ーー私たちが寺院を出る時の涼の満面の笑顔が忘れられない。

   よかったんだ・・・本当に涼と私が自分の思いを吐き出し合えたこと。

   涼の過ごした3年間は、過酷なものだったけど、

   それが涼の立ち直るきっかけになったことを知ることもできた。

   柊也のお陰だ。

   柊也がいなかったら、私は、涼と会う勇気が持てなかった。

   私も・・・、涼も・・・、心の中に穴を抱えたまま、生きていたかもしれない。

「 柊也、ありがとう・・・。 」

美生は、柊也の横顔を見つめた。

「 オレがお礼を言われる筋合いはないよ。

  ・・・・美生が頑張ったんだ・・・それに涼だって・・・。

  よかったな・・・美生。 」

「 うううん・・・柊也のお陰だってば! 」

「 オレは何もしてないよ。

  美生・・・もっと自信持てよ! 」

「 柊也・・・。 」

涙声になる美生に、気付いた柊也は、

「 こらっ、泣くな!

  もう夕飯時だし、美生の心が晴れたお祝いに、

  何か美味しいものでも食べに連れて行こうって思っていたのに、

  泣いていたら、それも台無しだぞ!! 」

「 ・・だって・・・嬉しいんだもん。

  でも・・もう・・泣かない!! 」

笑顔を向けた美生の頭を、柊也はクシャクシャに撫でた。





いつもよりも少しだけリッチな洋食屋で、お喋りをし、夕飯を済ませると、

柊也と美生は、また車に乗り込んだ。

「 ねぇ、柊也・・・。

  これから柊也のアパートに寄ってもいい? 」

やけに緊張の面持ちの美生を、柊也は不思議に思うと、

「 えっ?

  でも学生寮の門限の10時まで、3時間弱だし、

  アパートに着くまでの時間の経過も考えると、

  あんまり、ゆっくりできないぞ。 」

「 それでもいい・・・。 」

「 どうした?美生?

  何か話したいことでもあるの? 」

「 うううん。

  ただ・・まだ柊也と一緒にいたいなぁって思っただけ・・・。

  いいでしょ? 」

「 いいけどさ。

  ・・・なんか・・オレ・・なんでだろう・・緊張してる・・・。

  変だね・・・・オレって・・・。 」

そう呟くと、柊也はハンドルを握った。





アパートに到着し、部屋の中に入り、灯りを点け、暖をとると、

柊也は壁に掛けてある時計を見た。

ーーもうすぐ8時半。

   美生の門限まで、あんまり時間がないけど・・・。

冷え切っている部屋の中、2人はストーブの近くに座り、しばらく身体を暖めていたが、

沈黙が続いた後、やっと美生が口を開いた。

「 さっき柊也は ”オレは何もしていないよ” って言ってたけど、

  違うよ・・・柊也がいたから、私は涼と向き合うことが出来たんだよ。

  柊也の存在は、私にとって、誰よりも大きくなったの。

  私・・・・柊也が好き・・・。

  柊也は、私にとって、とても大切な人なの。 」

「 美生・・・。 」

「 でも・・でも・・・柊也は変わらないで・・・。 

  過去の涼やカイトみたいに変わってしまったら嫌!!!

  ずっと私の大好きな柊也でいて・・・。 」

涙をボロボロと流す美生を、柊也は優しく抱きしめると、

「 心配すんな。

  オレ・・・変わらない・・・・変わりたくない。

  それは・・・・・今の自分が好きだから・・・・。

  こんな単細胞で、バカなオレではあるけど、オレは自分が好きだ。

  好きだからこそ、変わりたくない・・・自分を嫌いになりたくない。

  単純な答えで、ごめん。

  でも・・・これでいいとは満足はしない。

  もっと、もっと自分を好きになれるように、沢山の努力をする。

  涼のように、人に役立つことだってしたい。

  人にではなく、自分自身に恥ずかしくない生き方をしていきたいから・・・。

  だからこそ人間って胸を張って生きられるんじゃないかって思うんだ。

  自身の善悪を一番、判別できるのは自分だろう?

  それがオレのポリシー・・・。 」

「 なんだか柊也らしい。

  柊也は自分を好きで、恥ずかしくない生き方をしようと努力しているからこそ、

  揺らぎがないのかもしれないね。 」

美生の言葉に、柊也は嬉しそうに微笑んだ後、急に真面目な顔をし、

「 オレのこと、好きだって言ってくれた美生のためにも、

  一生懸命に頑張るから・・・。

  美生は今の自分が好きか? 」

「 ・・・うん・・・好きだよ。

  今までの自分の中で、一番、好き・・・。 」

「 よかった・・・・。

  オレも、美生が好きだ。 」

「 柊也が、私を変えてくれた・・・。 」

「 美生・・・。 」

柊也は美生の両頬を優しく包み込むように触ると、キスをした。

そのキスは、今までの中で、情熱的だと、美生には感じられ、

彼女の ”決心” を強くした。

「 ・・・・柊也・・・・私を・・抱いて・・・。 」

「 ・・・美・・・・生・・・・。 」

「 柊也と相思相愛になって、こうして一緒にいられて、

  心の内を打ち明けられる関係になれたこと・・・すごく嬉しかった。

  涼とのことが原因で、男の子が怖かったはずの私が・・・・って、

  信じられない思いだったの。

  ありがとう、柊也。

  でも・・・一つだけ、踏み切れなかった・・・一線を越えるということ・・・。

  柊也も私に気を遣ってくれていることも、痛いほどに、わかってた。 」

「 ・・いいんだ・・・オレ・・・待つよ。

  だから無理すんな。 」

「 うううん・・・違う。

  私・・・・無理なんかしてない。

  昨日の夜から、決めていたの・・・。

  柊也になら・・・・私・・・・。

  安心して、全てを委ねられるって、心から思ったの・・・。 」

「 美生・・・・・。 」

「 一線を越えることができたら、私・・・何のワダカマリもなく、

  柊也を愛することができる・・・。

  完全に男性不信を卒業できるような気がするの。 」

「 ・・・美生・・・・・・・・・・・。 」

涙で潤んだ瞳で見つめてくる美生に、

「 オレも、美生を・・・・・・抱きたい・・・。

  オレだけの美生にしたい・・・。

  これからも大切にする・・・・好きだ。 」

美生をキッパリと受け入れた柊也だったが、我に返ったかのように慌てだすと、

「 あっ・・・門限!!!

  そんな場合じゃないよ。

  もう時間、ないじゃないか!!

  美生は寮に帰らなきゃ。 」

「 ・・・いいの・・・もう昨日のうちに、寮には外泊届けを出した。

  お泊りの用意もしてある。 」

美生は部屋の隅に置いた、大きめのトートバッグに視線を移した。

「 美生!!!

  あれって、着替えが入ってたの?

  寺院にまで、持ち歩いていて、大変だっただろう? 」

「 だって、車の中に置きっぱなしにするのも不自然に思ったから・・・。 」

「 美生って、可愛い・・・。 」

2人は顔を見合わせると、思わず吹き出した。

「 明日の朝、私が淹れたモーニングコーヒーを飲んでくれる? 」

「 あぁ!!

  もちろん!!! 」

そして柊也と美生は・・・いつもより長めのキスをした。


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