ダッフィー 登場人物 ダッフィー


ミッキー 山下美生 ・・・ K音大3年生 ピアノ専攻 21歳

             料理上手 負けず嫌い


ミッキー 森田柊也 ・・・ 同大学3年生 バイオリン専攻 22歳になる

             天真爛漫 自然体


ミッキー 工藤涼 ・・・ 美生の高校時代の同級生 元カレ 20歳

            ボーカリストを目指してた

            修行僧をしている



デールダッフィー 今までのお話し デールダッフィー


「プロローグ」


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「 オレの今の夢はね・・・。 」

軽く息を吸い込むと、涼は言った。

「 子供向けの絵本や詩集の作家になることなんだ。 」

「 絵本や詩集の作家?

  すごい!!!

  文系や芸術が得意な涼には、ピッタリだね。

  涼は詩を書くことや、作文が得意だったし、

  絵画だって、美術の先生に勧められて、何度もコンクールに出品して、

  入賞したものだってあったものね。

  理数系女子だった私には真似できなくって、

  実は私・・・涼の才能が羨ましかったんだよ! 」

美生が目を輝かせた。

「 そうか!!

  やっぱり、そういう関係の夢だったのか! 」

涼の夢に感動した柊也は、彼の部屋の卓上机の上に置いてある、辞典、

筆記用具、ノート、スケッチブック、水彩絵の具に視線を移し、

「 実は、この部屋の中に入ってから、卓上机の上にあるものが、

  気になってはいたんだ! 」

「 それは・・・私もだよ。 」

「 はっはっはっはっはっ・・・。 」

2人の様子に、初めて涼は声を立てて笑ってみせると、

「 そうだよな。

  絵の具やら、辞典やら、修行僧には、かけ離れている物ばかりだし・・・。

  そもそも夢の、きっかけになったのは、絵手紙だったんだ。

  一ヶ月に一度の割合で住職さんが、施設の子供達に、

  絵手紙を送っていてね・・・。 」

絵手紙とは・・・身の回りにあるもの、果物、野菜、花などをモチーフにし、

官製ハガキの裏に墨汁で、モチーフにしたものの輪郭を描き、色を塗った後、

自分の感じたままの言葉を、墨汁で書き添えるものである。

たとえば、果物のブドウを絵にしたならば、そのブドウの絵の傍に、

”甘さ たっぷり みずみずしい” などの言葉を書き添えたりする・・・。

「 オレ・・・最初、住職さんがハガキに、

  ホウレン草をモチーフにした絵を描いているのを見て、

  風情を感じて、見入ってしまっていたよ。

  それが絵手紙というものだと、初めて知った。

  目から鱗(うろこ)が落ちたような感覚だった。

  こんな芸術もあるんだなって・・・。

  しばらくオレが興味深く眺めていたら ”あなたもやりませんか” と、

  住職さんが描くことを勧めてくれたんだ。

  オレは勧められたままに、筆を持ち、ジャガイモの絵を描いてみた。

  そしたら住職さん、褒めてくれたんだ。

  ”あなたは絵を描くことが得意でしょ?” って・・・。

  オレがジャガイモの陰影や、立体感まで描いていたので、

  住職さんは驚いたみたいだった。

  でも・・・困ったのは、そのジャガイモの絵に添える言葉だった。

  オレが、しばらく考え込んでいると、住職さんは言ったんだ。

  ”あなたが、そのジャガイモを見て、

   自然に・・・感じたままを言葉にするだけでいいんです” と・・・・。

  オレは、ちょっぴり恥ずかしくなったけど、

  先程からジャガイモに感じていた思いを言葉にした。

  ”ゴツゴツのニキビ顔 プチン 痛い” ・・・。 」

柊也、美生、涼・・・3人の間に、笑い声があがった。

「 住職さんも笑ってた。

  ”きっと、そのユーモアさも、本来の涼くんなんですね” って・・・。

  オレは、その日から、住職さんの手伝いで、

  施設の子供達に向けて、絵手紙を描き始めた。

  不思議なことに、絵に添える言葉も、泉が湧くみたいな感覚で、

  自然に浮かび上がった。

  オレ・・・すごく楽しかった。

  自分の感じたことを、そのまま文字にしていくのが・・・。

  うううん・・・それだけじゃなかった。

  住職さんから聞いたんだけどね。

  オレの絵手紙、子供達に評判が良かったらしい。

  だからオレ、すごく嬉しくなって!

  調子にのってしまったっていうか・・・。 」

涼は、バツが悪そうに、照れて笑うと、

「 もっと子供達に喜んでもらいたくなって、

  夜なべして、自分で話しを考えた紙芝居を作って、贈ったんだ。

  そしたら子供達一人一人からの、お礼の手紙が届いて・・・。

  オレ、もっと嬉しくなって!!

  可笑しいだろう?

  子供が嫌いだったはずのオレが、身も知らない子供達のために、

  何かをしているだなんて・・・。

  人に喜んでもらえることをするのって、なんて素晴らしいんだろうって思った。

  残念ながら、過去にボーカリストを目指していたオレは、

  聴いてくれる民衆に喜んで欲しいだなんて、微塵も考えなかった。

  あの頃のオレはボーカリストになることで、

  好きな歌を思い存分に歌い、脚光を浴び、

  名声や人気、地位を得ることしか考えていなかったと思う。

  子供達のお陰で目が覚めた思いだった。

  オレは子供向けの絵本や詩集を作る仕事をしてみたくなった。

  代償なんていらない。

  子供達が喜んでくれるだけで、オレには充分に感じた。

  それに・・・そうなることで殺めてしまった ”あの子” への供養に、

  少しでもなってくれたらって思う・・・・・・・・。

  それでね!!

  自作の絵本を出版社に出したんだ。

  そしたら子供向けの絵本ばかりを集めて出版している月間雑誌に、

  オレの絵本が載せてもらえたんだよ。

  出版社の編集者の人にもさ。

  ”これからも良かったら、キミの作品を見たい” と、

  言ってもらえたんだ。 」

涼は卓上机の上にあるスケッチブックの下の雑誌を取り出し、ページを開くと、

柊也と美生に見せた。

そのページには、夢の国を思わせる幻想的な絵があり、

子供向けにと簡単な物語が書かれてあった。

ページ数は、4ページではあるが、その4ページの中の物語の世界は、

とても輝いていた。

そして作者名には ”くどうりょう” と平仮名の名前・・・。

「 すごいよ・・・涼!!!

  涼は本当にやりがいのあることを見つけたんだね!!

  人に喜んでもらい、自分も喜びを貰う・・・。

  なんて素敵なことなんだろうって、私も思う。

  ・・・・きっと ”あの子” だって喜んでくれる・・・・。

  これからも応援しているよ!! 」

感激して、涼を励ます美生、そして柊也も、

「 涼みたいな才能、残念ながらオレには無いよ。

  絵や物語を考えたり、詩を書いたりすることなんて・・・。

  オレの苦手分野・・・。

  本当に、すごいことだって思う。

  自分が出来なかったことでもあったし、

  オレも、涼のことを応援するよ。 」

「 ありがとう!!

  カイト先輩、柚葉だけでなく、ミウッペ、柊也にも、

  応援してもらえること、すごく有難い。

  オレ・・・頑張るよ!!!

  実は来年の春、ここを出る。

  住職さんにも話しをしたら、とても喜んでくれて、

  ”行ってきなさい” と言ってもらえたよ。

  でも・・ ”あの子” の月命日には、毎月、ここに来る。

  それと・・・今日、ミウッペに謝罪をした後、決心がついた。

  ここを出たら・・ミウッペの家族にも謝罪する。

  今更、遅いと思われてしまうかもしれないけど、謝罪はもちろんのこと、

  オレに命の重さを問うてきたミウッペのお父さんにも言いたいんだ。

  ”もう命の重さを軽視したりしません” と・・・・。 」

「 涼・・・・ありがとう。

  きっとパパたちだって、うううん・・・お兄ちゃんだって、

  涼の思いを受け止めてくれると思う。

  私の家族はみんな、涼がまっとうに生きることを望んでいた人たちだから、

  涼のことを、絶対に理解してくれる。 」

「 ミウッペ・・・。 」

微笑み合う涼と美生に、柊也は、ほんの少しのヤキモチと安堵感を覚えた。


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