デールダッフィー 今までのお話し デールダッフィー


「プロローグ」


「1」  「2」  「3」  「4」  「5」  「6」  「7」  「8」  「9」  「10」


「11」  「12」  「13」  「14」  「15」  「16」  「17」  「18」  「19」  「20」


「21」  「22」  「23」  「24」  「25」  「26」  「27」  「28」  「29」  「30」


「31」  「32」  「33」  「34」  「35」  「36」  「37」  「38」  「39」  「40」


「41」  「42」  「43」  「44」  「45」  「46」  「47」  「48」  「49」  「50」


「51」  「52」  「53」  「54」  「55」  「56」  「57」  「58」  「59」  「60」


「61」  「62」  「63」  「64」  「65」  「66」  「67」  「68」  「69」  「70」


「71」  「72」  「73」  「74」  「75」  「76」  「77」  「78」  「79」  「80」


「81」  「82」  「83」  「84」  「85」  「86」  「87」  「88」  「89」  「90」


「91」  「92」  「93」  「94」  「95」  「96」  「97」  「98」  「99」  「100」


「101」  「102」  「103」  「104」  「105」  「106」  「107」  「108」  「109」  「110」


「111」  「112」  「113」  「114」  「115」  「116」  「117」  「118」  「119」  「120」


「121」  「122」  「123」  「124」  「125」  「126」  「127」  「128」  「129」  「130」


「131」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


~~~

柚葉が泣き止み、落ち着きを取り戻した後、涼は彼女を労わるように、

「 柚葉と磯崎の結婚が破談になっていたこと・・・この前、知ったよ。

  もう8月に、とっくに報道されていたことだったのに、

  オレ・・・修行僧で、テレビのない生活をしていたから、

  なかなか情報が得られなくって・・・。

  柚葉は、磯崎と結婚して、幸せに暮らしているって思っていたのに・・・。 」

Dプロダクション社長・磯崎が暴力団とつながっていた事実が原因で、

柚葉と磯崎の結婚が破談になり、彼女がプロダクションを移籍した後、

苦労が重なっていることを、涼は想像していた。

それは現実に涼を目の前にして、泣き崩れた彼女を見ていて、

察しがついたのだった。

「 磯崎が暴力団とつながっていたことは、ショックだった。

  とても紳士的な人だったのに・・・人間って、わからないって思ったわ。

  カイトは覚せい剤、磯崎は暴力団・・・。

  私は自分の男運のなさを呪った。

  ・・・あっさりと見切りをつけた私は結婚をやめ、

  磯崎と、つながっていたくなくって、Dプロダクションから、

  Aプロダクションに移籍したわ。

  Aプロダクションは、私の移籍を歓迎してくれたけれど、

  世間の目は厳しくって、婚約者だった私は磯崎と同様の目で見られ、

  ファン層も減った。

  その上、今までチヤホヤしてきた周りの連中にも、

  私は手の平を返された。

  いい仕事が来なくなって、今まで主役を張っていた私には、

  悪役や殺される役がくるようになり、

  挙句の果てには三流カメラマンから、ヌード写真集の依頼までくる始末・・・。

  週刊誌にも ”悪女・柚葉” ”男をダメにする女・夏樹柚葉” と書き立てられ、

  カイトのことも、磯崎のことも、私のせいだという意味合いで書かれた。

  どうして?

  私が何をしたっていうの・・・・?

  何度も、そう叫びたくなった。

  それからというもの私は殺到する脇役や悪役の仕事を、

  容赦なく断るようになった。

  味方になってくれていたAプロダクションの社長にも、愛想を尽かされたわ。

  その上、Aプロダクションに所属する女優たちから、

  密かに私はニックネームを付けられていた。

  ”窓際の女王さま” ・・・。

  どんな意味だか、わかる?

  選り好みし過ぎて、結局、全く仕事が無くなり、

  隅に追いやられた我が儘な女優っていう意味よ。

  そう言われても仕方がないとは、わかってはいても、

  私のプライドはズタズタになった。 」

「 ・・・柚葉・・・。 」

「 ・・私は自暴自棄になったわ。

  世間や芸能界で、悪いレッテルを貼られた私は、もう終わりだと思い、

  女優を引退しようと思った。

  でも女優は、私の愛した仕事・・・未練はある。

  私の頭の中で、モデルから女優に転身した頃から、現在までのことが、

  コマ落としのように映像化されて甦った・・・。

  懸命に努力して主役を勝ち取った頃のこと、

  妥協せずに、とことん役作りに専念していた頃・・・。

  自分の実力が、世間や芸能界で認められた時の喜び・・・・。

  挙句の果てに・・・・自分を ”特別な人間” だと勘違いし、

  私は・・・・少しずつ嫌な女に変わっていった・・・・。

  それに・・・・ ”柚葉は、人を利用して心が痛まなかったの?” 。

  涼に投げ掛けられた言葉・・・。

  自分を見つめ直すことができたと同時に、

  ずっと忘れられなかった、その言葉も私の目を覚まさせる、きっかけになった。

  私は今まで、何をやってきたんだろう?

  そしたら・・・その時、涼とカイトに無償に会いたくなった。

  2人が、私のことを憎んでいたって、構わないと思った。

  でもリゾートホテルで別れた以来、涼は居場所がわからなかったし、

  携帯にかけても、ずっと通信が不可能な状態だったから、

  私は、療養所にいるカイトに会おうと思ったの。

  カイトも芸能界を引退している。

  どんな思いで、引退したんだろうと想像したら、

  今の自分と重なって胸が苦しくなった。

  だから療養所で未だに頑張っているカイトを励ましたくなった。

  私がカイトを見捨ててしまったことは事実。

  励ますことで、私はカイトに謝りたかったのかも・・・。

  そう決めたら、なんだか気持ちが楽になってた。

  こんな私にも純なとこが、まだ残っていることに、ホッとした。

  ここでカイトに会って、早く社会復帰できるように励まし、勇気づけたら、

  芸能界引退のことを社長に話すつもりだった。 」

「 そうだったのか・・・。

  それでカイト先輩に会いに・・・。 」

「 カイトは覚せい剤依存で、未だに苦しんでいるのね・・・。

  でも・・・涼が毎月、ここに来て励ましてくれるから、

  ここから逃げ出さずに、頑張っているんだと言っていた。

  また芸能界に復帰して、生まれ変わったつもりで、

  一からやりたい・・・歌いたいって言っていたわ。 」

「 そうだよ。

  カイト先輩は頑張っている。

  覚せい剤依存は、想像を超える辛さだとは思うのに、

  カイト先輩は自分の弱さに負けずに、ここで自分と闘ってる。 」

「 そうよね・・・カイトは闘っているのよね。

  そんなカイトのことを、私は ”弱い男” だなんて言っていたのね。

  自分が恥ずかしい・・・・。

  私は、復帰に向けて頑張っているカイトの姿を見て、涙が出た。

  女優・夏樹柚葉を離れた、一人の女として泣いていた。

  カイトは、さっきの涼のように、私を思いっきり泣かせてくれたわ。

  おまけに今の私の置かれている立場を知っているらしくって・・・。

  ”オレや涼と一緒に頑張らないか?

   女優として、役に成りきっている夏樹柚葉も、オレは好きだ。

   ずっと柚葉には輝いていてほしい” って・・・。

  すごく嬉しかった・・・その半面、罪悪感もあった。

  私はカイトを裏切り、見捨てて、涼と関係を持った上、

  今度は涼を裏切り、お金や地位がある磯崎と結婚しようとした女。

  私はカイトに憎まれ、軽蔑されていても、当然だって思っていたのに・・・。

  カイトは、それを全部、承知の上で、誰にでも間違いがあるさと、

  私を励ましてくれた。

  カイトを励ますつもりで、ここに来たのに、

  私ったら、逆にカイトに励まされていた。

  カイトだって、自分のことで苦しんでいるのに・・・。 」

「 柚葉・・・オレ、全部、話したんだ。

  柚葉とオレとのことも・・・・全部・・・カイト先輩に・・・。

  そしたらカイト先輩 ”涼は悪くない” と言い、

  オレを責めようともしなかった。

  柚葉のことだって ”柚葉に、そんな行動をさせたのはオレだ” と言って、

  今でも、ずっと柚葉のことを心配している。

  カイト先輩が一番の柚葉のファンだと、オレは思う。 」

「 カイトが・・・・今まで私を・・・心配・・・してくれてた・・・。 」

涼の言葉に、再び柚葉は涙ぐむと、

「 でも女優の仕事を続けるのなら、

  女優・夏樹柚葉として、私は、また自分を演じ続けなければならない。

  私は、もう自分を演じることに疲れていた。

  そしたらカイトは、こう言ってくれたの。

  ”演じるのは、ドラマや映画の中だけでいいじゃないか。

   女優・夏樹柚葉は、本来の柚葉でいいんだ。

   気を張ろうとするな、気取らなくっていい。

   自分の気を抜ける場を持つんだ”

  私・・・カイトの言葉に、肩の力が抜けていく感覚を覚えたわ。

  それに今日、涼にも会えたこと・・・なんだか奇跡みたい・・・。

  あなたの純粋な気持ちにも、私は励まされた・・・ありがとう・・・。

  私は、カイトと涼に助けられたのね。

  私、女優を続ける。

  カイトからは頑張る力をもらい、涼からは背中を押された。

  涼だって、死のうと思うほどに追い詰められていたのに、

  やり直すことができた。

  だから・・・だから・・私も心を入れ替えて、一から出直す。

  辛いことは、まだまだ続くかもしれないけど、覚悟をしているわ。

  どんな役の仕事でも、私だけにしか出来ない役作りをして、

  また女優としての格を、自分の実力で上げてみせる!! 」

「 そう・・・・よかった。

  それでこそ柚葉だ。

  柚葉とカイト先輩・・・それにオレ・・・。

  抱えている夢は、それぞれに違うけれど、

  3人で頑張ろうよ。

  オレだって、仲間が増えて、張り合いがある。

  ・・・・そうか・・・仲間なんだ、オレたち。 」

「 そうね・・・仲間なのかもね!! 」

ハンカチで涙を拭きながら、初めて柚葉が声をあげて笑った。

カイトと涼、カイトと柚葉、涼と柚葉・・・。

先輩後輩、男と女の関係を持っていた過去よりも、

つながりの深い、あたたかい関係が築けたことを、2人は実感していた。

それは、きっとカイトも同じなのかもしれない。

「 ところで涼の今の夢って何?

  カイトに聞いてもね、涼の許可を得なければ話せない。

  男と男の友情の中のことだから・・・って、話してくれなかったのよ。 」

ーー”男と男の友情” か・・・・カイト先輩・・・・。

カイトの言っていた言葉に涼は、ジワジワと喜びを感じながらも、

「 それはね・・・。 」

彼も、はにかんで、なかなか話そうとしない。

「 早く、言いなさいよ!! 」

しびれを切らしたかのように、柚葉が笑って、涼の腕を掴み、引っ張った。

ーーこんな柚葉、初めて見た!!

「 その前にメイクを直したら?

  メイクが崩れても、柚葉は綺麗だけどね。 」

「 もう!!

  はぐらかさないで!!! 」

コンパクトを手にし、笑う彼女の笑顔が、等身大の23歳の女の子の輝き、

美しさに、涼には見えていた。

~~~





柊也、美生、涼の間に、爽やかな空気が流れた。

「 あのあと柚葉と別れてから、カイト先輩と面会をしたんだ。

  カイト先輩の表情は明るかった。

  柚葉とのことを、嬉しそうに、オレに話してくれた。

  だからオレも、先程、柚葉と会えたことをカイト先輩に、包み隠さずに話したよ。

  その日、オレは、柚葉とカイト先輩から、元気をもらえた。

  オレも2人には負けられない、また頑張ろうって・・・。 」

「 カイトとも、柚葉さんとも、いい関係を築けて、

  よかったね・・・涼・・・。

  涼が一生懸命に生きている、ご褒美だって、私には思えるの。

  真っ直ぐに生きているからこそだよ・・・涼!!

  あっ・・・そうそう・・・ところで・・・涼の今の夢って? 」

「 うんうん・・・オレも、それが気になる。

  涼!!

  勿体ぶらずに、早く話せ!! 」

2人に突っ込まれた涼は、目を輝かせながら、

自分の夢について、やっと話しだした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇