ダッフィー 登場人物 ダッフィー


ミッキー 山下美生 ・・・ K音大3年生 ピアノ専攻 21歳

             背が高い 童顔


ミッキー 森田柊也 ・・・ 同大学3年生 バイオリン専攻 もうすぐ22歳

             天真爛漫


ミッキー 工藤涼 ・・・ 美生の高校時代の同級生 元カレ 20歳

            ボーカリストを目指していた


ミッキー 夏樹柚葉 ・・・ 若手人気女優 23歳

             Dプロの社長との結婚が破談


ミッキー カイト(種橋海斗) ・・・ 元ボーカリスト 23歳

                  覚せい剤依存症のため、芸能界を引退



デールダッフィー 今までのお話し デールダッフィー


「プロローグ」


「1」  「2」  「3」  「4」  「5」  「6」  「7」  「8」  「9」  「10」


「11」  「12」  「13」  「14」  「15」  「16」  「17」  「18」  「19」  「20」


「21」  「22」  「23」  「24」  「25」  「26」  「27」  「28」  「29」  「30」


「31」  「32」  「33」  「34」  「35」  「36」  「37」  「38」  「39」  「40」


「41」  「42」  「43」  「44」  「45」  「46」  「47」  「48」  「49」  「50」


「51」  「52」  「53」  「54」  「55」  「56」  「57」  「58」  「59」  「60」


「61」  「62」  「63」  「64」  「65」  「66」  「67」  「68」  「69」  「70」


「71」  「72」  「73」  「74」  「75」  「76」  「77」  「78」  「79」  「80」


「81」  「82」  「83」  「84」  「85」  「86」  「87」  「88」  「89」  「90」


「91」  「92」  「93」  「94」  「95」  「96」  「97」  「98」  「99」  「100」


「101」  「102」  「103」  「104」  「105」  「106」  「107」  「108」  「109」  「110」


「111」  「112」  「113」  「114」  「115」  「116」  「117」  「118」  「119」  「120」


「121」  「122」  「123」  「124」  「125」  「126」  「127」  「128」  「129」  「130」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


~~~
涼と柚葉は、お互いに、どう言葉を掛けていいのかさえもわからずに、

しばらく立ち尽くし、沈黙したままだったが、

先に言葉を掛けたのは涼の方だった。

「 久しぶり・・・柚葉・・・。

  カイト先輩に会ってきたんだね? 」

「 会ってきたわ。

  それにしても本当に・・・涼なの?

  まるで別人みたい。 」

柚葉が驚くのも無理もない。

ハンチング帽を被っているとはいえ、彼が頭を丸めていることは、

一目瞭然だった。

「 オレだよ・・・涼だよ・・柚葉。

  今、或る寺院で修行僧として、お世話になっているんだ。 」

「 涼が自分の子の埋葬されている寺院で修行僧をしていることは、

  さっきカイトから聞いたわ。

  でも・・・頭まで丸めているだなんて・・・。

  涼の気持ちは半端ではないのね。 」

驚きの表情を隠せない柚葉・・・。

涼の記憶の中では、柚葉は掴み所のない女というイメージがあったが、

再会した彼女に違和感を感じた涼は思い切るように、

「 ねぇ・・・時間ある?

  少し話しがしたいんだ。 」

「 ・・・いいわ。

  私も涼と話しがしたいと思ってたの。 」

「 なら、療養所の裏庭に行かない?

  あそこなら、塀が高いから、外部からも目に付かないし、

  柚葉にも、その方がいいだろう? 」

「 ありがとう・・・涼。 」

柚葉は携帯を出し、

療養所の門の外の車の中で待機しているであろうマネージャーに、

遅れる旨を連絡すると、

「 行きましょう。 」 と微笑んだ。

2人は裏庭に出ると、ベンチに腰掛けた。

涼は柚葉に対して・・・、柚葉は涼に対して・・・、お互いの疑問がある。

涼の疑問は、どうして柚葉が、カイトに面会する気になったのか・・・だった。

ところが問い掛けようと息を吸い込んだ時、先に彼女が問い掛けてきた。

「 涼は、どうして修行僧になったの? 」

ほんのタッチの差で、出遅れたと感じた涼だったが、

彼は優しく微笑んで見せると、

柚葉に騙され、利用されたとわかった、あの日、自殺を決心したが、

何かやり残していることがあるように強く感じ、死ぬことができなかったこと。

その、やり残したことが、

未だに一度も自分がしていなかった、殺めてしまった我が子への謝罪、

そして元カノや家族への謝罪だったと気付いたこと。

だが元カノや家族には会う勇気がなく、

我が子に対してだけでも謝罪してから死のうと決心し、水子寺院に向ったこと。

寺院の住職の慈悲深さに心を打たれ、自分の罪を悔い改め、

また生きていこうと決心し直したことなどの、これまでの経緯を柚葉に話した。

すると彼女は涙目で涼を見つめ、

「 ・・・ごめんなさい・・・涼・・・。

  涼を、そこまで追い込んでしまった私は、本当に嫌な女だった。

  私・・・涼が、あの時に言った言葉が、ずっと忘れられなかったの。

  ”利用して、心が痛まなかったの?”

  ”命まで利用する材料に使うの?”

  私は純粋に自分を愛してくれた涼を、命を材料にして利用した。

  自分のことしか考えていなかった。

  ・・・今になって、私は何様だったんだろうって思う。

  ごめんなさい・・・。 」

「 柚葉・・・。 」

プライドが高いはずの柚葉が素直に自分の非を認めたことに、

涼は驚きながらも、笑顔になると、

「 あの時は、もう死ぬことしか、頭になかったのは確かだった。

  けど・・オレ・・今、生きてる。

  生きていて、よかった。

  生きてるからこそ、やり直すことが出来たし、

  また柚葉に会えた。 」

「 涼・・・。

  どうして?

  私を憎んでいるんじゃないの? 」

「 憎んだことなんて、一度もなかったよ。

  柚葉だって、いろいろと辛かったんじゃないか? 」

優しい眼差しで、じっと見つめる涼の視線のあたたかさに、

堪えられなくなった柚葉は泣き出した。

~~~





涼は、柊也と美生を見つめると、

「 柚葉の涙は、決して演技でも、嘘でもなかった。

  思い存分に泣いた後、柚葉は、こう言ったんだ。

  ”私・・・生き方を間違えてしまってた。

   モデルから、女優に転身したばかりの時、純粋に嬉しくって、

   与えられた仕事を、どんな役柄でも、一生懸命にやっていたはずだったのに、

   人気が上がっていき、周りからチヤホヤされ、

   ゴールデンタイムのドラマや、

   話題の作家の原作した映画の主演になったりするうちに、

   いつの間にか、自分を特別な人間だと勘違いするようになった。

   挙句の果てには、自分の地位、名誉を不動にしたいがために、

   人を踏み台にして、自分のグレードを上げることや、

   保身することばかりを考える女になっていた。

   自分にとって利益が得られそうな人を利用したり、

   ライバルの女優を巧妙な手で罠にハメて、蹴落としたり・・・。

   そうやって人を利用したり、踏み台にすることを、今まで何度も繰り返してきて、

   最初のうちは罪悪感があったはずだったのに、

   それを、なんとも思わなくなってしまうなんて・・・。

   感覚が麻痺することって怖いこと。

   涼が言った言葉が、ずっと頭の中に残っていて、

   私の目を覚まさせてくれたように思う。

   それに今まで女優・夏樹柚葉のイメージを抱えて、

   生きていかなければならなかったから、

   仕事以外の時間でも、私は自分を演じるようになっていた。

   感情のない人形みたいな生き方をしていた” ・・・って・・・。

  なんだか柚葉は、子供の頃のオレと、どこか似ているって、

  その時、初めて思った。

  オレも ”いい子” を演じて生きてきたから・・・。

  だから女優・夏樹柚葉を演じてきた柚葉の苦しみが、よくわかった・・・。 」

穏やかに、そうつぶやくと、更に彼はつづきを話し始めた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇