登場人物 ![]()
工藤涼 ・・・ 美生の高校時代の同級生 元カレ
ボーカリストになる夢を持っていた
夏樹柚葉 ・・・ 若手人気女優 カイトの恋人
涼とも関係を持ち、妊娠
磯崎 ・・・ 柚葉の所属するDプロの社長
年齢は30代前半 都会的
高松 ・・・ 柚葉のマネージャー
ガッシリとした体格 武道家
カイト(種橋カイト) ・・・ 涼の中学時代の2年先輩
プロのボーカリスト
覚せい剤依存症
今までのストーリー ![]()
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1106号室から顔を出した、20代後半ぐらいのスーツ姿の、
武道家だと思えるような、ガッシリとした体格の男は、涼を見ると笑顔で、
「 工藤涼くんだね? 」
「 ・・・はい・・。 」
「 中で柚葉が待っている。
さっ・・・入って。 」
涼に部屋の中に入るようにと、男は促すと、
「 ボクは、柚葉のマネージャーの高松だ。
キミには、いい話しがあるんだよ。 」
ーー柚葉ひとりではなかった・・・。
自分が想像していたシチュエーションとの違いに、涼はガックリと肩を落とした。
そしてマネージャーの高松の後について、涼が部屋の中に通されると、
「 涼・・・お久しぶり! 」
笑顔で彼を迎えた柚葉。
そして彼女の座るソファーの隣には、30代前半ぐらいの男が座っている。
マネージャーの高松と同様に、その男もスーツに身を包んでいるが、
スーツの着こなしが、都会的でスマートだ。
その男は好感触を示している表情で、涼の容姿をマジマジと見ていた。
見つめられ戸惑う涼の様子に、柚葉は笑ってみせると、
「 涼・・・こちらは私の所属しているプロダクションの磯崎社長よ。
先日、涼のことや、あなたがボーカリストを目指していることを話したの。
そしたら・・・涼に会いたいって、ここをセッティングしてくれたのよ。 」
「 ・・・初めまして・・・工藤涼です・・・。 」
驚きを隠せないままに涼が挨拶をすると、
柚葉の隣に座っている、磯崎社長はスッと立ち上がり、
「 涼くん、初めまして!!
Dプロダクションの磯崎といいます。
さぁ・・・ここに座って。 」
「 ・・・・・・・失礼します・・・。 」
涼が、柚葉と磯崎社長の向いのソファーに座ると、磯崎社長も再び座った。
それを見届けたマネージャーの高松は、敏速に3人分のコーヒーを出すと、
柚葉の後方に直立不動の姿勢で立った。
未だに緊張が解れない涼を見て、磯崎社長はフッと笑うと、
「 そう硬くならないで・・・と言っても、無理かな?
いきなりプロダクションの社長を目の前にしたら、誰だって緊張するね。
柚葉からキミの話しを聞いてから、興味を持ったワタシは、
3年前にS海で行われた ”Cool” の一日限定ライブの、
VTRを探し、取り寄せて、カイトの弟分として、
ゲストでステージに上がった高校生の頃のキミを観た。
そのあと、もっとキミのことを知りたくなって、
同じく高校生の頃のキミが、地元のライブハウスで歌っていた秘蔵の映像も、
極秘で入手して、実力も見せてもらった。
キミは、今までワタシが探し求めていたルックス、男臭い雰囲気、
優れた歌唱力を持っている。
もっと早くキミを見つけることが出来ていたら・・・と、
後悔が大きかったよ。
ここまで言えば、話しはわかるね?
涼くんのことを、ワタシは育ててみたい。 」
笑顔で、そこまで言うと、急に磯崎社長は顔をしかめ、
「 今までキミは、カイトには、いろいろと手を焼いてきたんだろう?
そのことも柚葉から聞いた。
よく堪えてきたと思う・・・立派だ。
あんな不祥事を起こしたカイトはクズも同然。
あの男はもう終わりだ。
その上、キミは、カイトの曲作りのゴーストまでやっていたんだろう?
大ヒットした ”紅に燃える想い” も、キミが作ったんだってね? 」
ゴーストのことまで、柚葉が磯崎社長に話してしまったことは、涼にも察しがついた。
そのことに対し、涼がうな垂れ、観念したように、黙って頷いて、認めると、
更に磯崎社長は、こう提案してきた。
「 10代から苦労を重ね、強い意思を持って、
これまでやってきた、キミはカイトとは違う。
キミなら芸能界の中に潜む甘い誘惑や罠に打ち勝てると信じる。
だからワタシに、涼くんの全てを委ねてくれないか?
カイトが作った曲として、世に出していた曲は、
本当はキミが作った曲だということも、記者会見を開いて、
証拠を交えて告発し、キミの曲として、また世に売り出し直すんだ。
キミは間違いなく、カイトよりも、大ブレイクする。 」
再び笑顔になって、プロになることを勧める磯崎社長に対し、涼はきっぱりと言った。
「 申し訳ないのですが・・・・お断りさせてもらいます。
今の話し、オレにとって、とてもいい話しだってことは、わかっています。
断ってしまったら、もう二度と、オレには巡ってこない話しだということも、
理解しているつもりです。
でも・・・オレ・・・カイト先輩を踏み台みたいに扱うつもりはありません。
それにオレはカイト先輩のゴーストをやっていたとは思ってません。
カイト先輩には、昔からの恩があります。
だから、その恩返しのつもりで、曲を提供していただけです。
いつかカイト先輩がスランプから抜け出してくれることを祈りながら・・・。
オレも承知の上で、カイト先輩の作った曲として、
世に出してもらっていたんです。
ソロ・デビューのお祝いにとプレゼントした ”紅に燃える想い” を含めた、
あの曲たちは、既にカイト先輩のものです。 」
あからさまに呆気にとられたような表情をする磯崎社長。
そして柚葉も、
「 涼・・・どうして?
ボーカリストになることは、子供の頃からの、
あなたの夢だったはずでしょう? 」
珍しく取り乱す彼女を見て、涼は、
「 オレ・・・もうボーカリストにはなりたいとは思ってないし、
未練もない。
オレには合わない世界だと、嫌になるくらいに痛感した。
せっかく社長さんにまで話してくれたのに、柚葉、ごめん・・・。
でも・・・オレにはボーカリストになることよりも、大切なものを見つけた。
柚葉・・・お前だ。
柚葉を幸せにしたい。
産まれてくるお腹の中の子と一緒に・・・。 」
「 フフッ・・・・やだっ・・・・。
まだ、そんなことを信じているの、涼は?
・・・・フフフッ・・・・・。 」
「 えっ?! 」
笑いだした柚葉を見た涼は、自分の目や耳を疑った。
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