デールダッフィー 今までのお話し デールダッフィー


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妊娠を告げた美生に対し、しばらく黙っていた涼は、

苦渋の表情で笑いながら、やっとのこと口を開いた。

「 オレがパパって?

  嘘だろ?

  エイプリールフールでもないのに・・・・。

  冗談だよな?

  こんな冗談、性質悪くね?ミウッペ。 」

彼の反応に多少のショックを受けた美生だったが、

高校生である自分たちに、赤ちゃんができたという驚きや戸惑いで、

誰でも見せる反応なんだと思い直すと、

「 うううん・・・冗談なんかじゃないよ。

  今、4ヶ月に入ったばかりなの。

  涼・・・私、産みたい。

  涼と私の赤ちゃんなんだよ。 」

「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。 」

再び黙りこくる涼に、美生は更に、

「 高2の時に涼は言ったよね?

  卒業したら、オレんとこに来いよって・・・。

  S海のことはあったけど、乗り越えることもできたし・・・。

  私たち、付き合い始めて長いし、

  涼も私も、お互いの良いとこ、悪いとこを知り尽くしても、

  まだ好き合ってる。

  だから、いずれは・・・・・。 」

「 チッ・・・。 」

美生が最後まで言い終わらないうちに、涼はあからさまに舌打ちをし、

苛立ちを表すと、思いっきりテーブルを叩いた。

途端にテーブルの上に広げた教科書やノートが、一瞬、軽く浮き上がり、

筆記用具のシャープペンシルが、あっけない音を立てて、畳の上に落ちた。

まるで、そのあっけない音が、自分と涼の関係が崩れる音のように、

美生には感じられた。

「 いずれは・・・って何?

  オレ・・・いつお前に結婚の約束をした? 」

「 それは・・・・。 」

「 お前・・オレのバンドに傷を付けるつもりか?

  オレの夢の妨害をするのか? 」

次第に涼の口調は、キツクなっていった。

「 傷なんて・・・妨害だなんて・・・そんなこと思ったこともない!

  涼のために、迷惑を掛けないようにはするつもりだよ。 」

「 ほらっ、また言った・・・・。

  そのさぁ~ ”涼のために” っていう台詞。

  口癖なのかよ?

  今まで何度も聞くたびに、すんげぇ~うぜぇって思ってたんだよ。

  それに長い付き合いなんだから、少しは学習してほしかったな。

  オレ・・・ガキって苦手なんだけど・・・・。

  うるさいし、すぐ泣くし、悪戯はするし・・・・。

  ここまで言えば、オレが言わんとしていること、わかってるよな?

  ガキは始末しろ

  中絶が難しい時期だなんて嘘なんだろう?

  それとも妊娠自体が嘘とか?

  いや?

  オレのガキっていうのが、嘘なんじゃね?

  お前・・・結構、男にモテるからな。

  オレのクラスにも、お前に気のあるヤツを何人か知ってるし・・・。

  お前、そういうヤツらを誘って寝たんじゃねぇ? 」

パシリッ・・・・美生は涼の頬を平手打ちしていた。

「 痛ってぇぇぇぇぇ。

  何すんだよ!! 」

「 私が涼以外の男の子と、どうにかなる訳ないじゃん!!

  ひどいよ!!!

  涼のことだけが、ずっと好きなんだよ。

  じゃあ・・・私は涼の何なの?

  私は涼のカノジョじゃないの?

  答えて!!

  答えてよ!!! 」

「 ・・・最初は超可愛くって、オレ好みの女だなって思ってた。

  俗に言う、ひと目惚れってヤツ?

  気がついたら、お前を好きになっていたって感じ?

  だから傍にいてほしくって、キーボードに空きができたことをいいことに、

  ピアノが弾ける、お前をバンドに誘った。

  付き合い始めて、最初はオレも妙に浮き足だっちゃって、

  確かにお前のことを、もっともっと意識して、夢中にもなってたよ。

  けどさ・・・お前って・・・重い。

  口を開けば ”涼のために” ってさ。

  女房気取りで、オレのこと、日陰で支えているつもりになってたの?

  そんなお前を見ているうちに、オレ・・・気持ちが冷めてったよ。

  100年の恋も冷めるって言うだろ?

  冷め始めたのは、バンドが順調な波に乗ってきた時期だったかな。

  早く見切りつけて、別れておけばよかったんだけど、

  学校内でセンコーにまで、公認になっちまったからには、別れられなくって・・・。

  その上、お前は献身的だったし、オレの身の回りのことなんかも、

  率先してやっていただろう。

  ”涼のために” なぁんて言っている、お前だったから、

  もっとオレのために、いろいろとやってもらっちゃおうか・・・って、

  利用させてもらってたよ。

  ”便利な女” だったよ・・・お前って・・・。

  お前、高2の時に文化祭でコスプレしてただろう?

  メイドの格好!!

  メイドって、お前にビンゴだなぁって、つくづく関心してたよ。

  今に ”ご主人様” なんてオレを呼ぶんじゃないかって、

  想像したら、可笑しくって・・・。

  まっ、お前みたいな ”見た目だけ” いい女が 

  ”カノジョ” だっていうだけでも、

  オレに箔(はく)がつくし、ビジュアル的にバンドの評判も上がって、

  お前と付き合っていることも、その他諸々、得ではあったけどな。 」

最後はニヤッと笑った涼の言ったことを信じたくないがために美生は、

目を固くつぶり、首を横に振ると、

「 でも・・涼は海で私がナンパされていたら、ヤキモチを妬いて、

  追い払ってくれた。 」

「 あぁぁ・・・アレ?

  本当に妬いていたと思ってたの?

  お前みたいな、いい女の彼氏だって、ナンパ男たちに示すことで、

  内心、優越感に浸っていただけ! 」

「 でも・・・でも海で溺れていた私を助けてくれたでしょ?

  ライフセーバーでもないのに、普通、なかなか出来ることじゃないと思う。

  涼は私の命の恩人なんだよ。

  それに私のことを大切だって、失いたくないって言ってくれたじゃん。

  その言葉は嘘だったの?

  違うよね?・・・ねぇ・・違うよね? 」

「 フッ・・・・ははははははっっっ・・・・。

  大切?

  失いたくない?

  オレもよく、そんなクセー言葉を吐いたよな。

  その理由は、さっきも言った通り、お前が ”便利な女” だから・・・。

  まだまだ使うだけ、使わないと、損だしな。

  それにお前は、自分を助けたのが、オレだったと思い込んでたみたいだけど、

  本当はオレじゃないんだ!! 」

「 えっ・・・・・・嘘?!?!?! 」

彼の言葉に美生がショックを受け、絶句すると、

「 けど・・・・お前が、そう思い込んでいるのなら、

  そう思わせといても、まっいいかって思ったよ。

  言い換えると、ただお前の希望に沿ってやったんだ。

  オレが助けたんだってことにしておけば、お前だって本望だったろう?

  騙されたなんて思うなよ・・・あれってオレの ”優しい嘘” !

  お陰で、オレも校内で英雄にしてもらって、

  また一段と箔(はく)が上がったし・・・・。

  お前の勘違いに、感謝ってとこだな。

  そりゃあ~間に合えば本当に助けてやったかも・・だけど、

  オレ・・・ステージで歌ってたんだぜ。

  超人でない限り、ステージから海までワープできねぇし! 」

「 なら・・・溺れていた私を助けてくれたのは誰なの?

  ライフセーバーは不在だったって聞いたから、

  やっぱり一般の人だったの? 」

「 本当にお前を助けたヤツのこと知りたい?

  ・・・・あっ・・や~めた!

  ヤツに手柄を持たせたくない。

  あの野郎、ちょっとばかし救護の知識があるからって、

  偉そうにしやがって・・・・

  やけに正義感ぶった虫唾の走る生意気な男だったよ。

  あん時、やっぱり殴っておけばよかった・・・・。

  ヤツの話しなんかしたくもねぇ!! 」

涼は吐き捨てるように言い、舌打ちをすると、

「 けどよぉ~どうして ”カノジョはいません” って言っただけで、

  死のうなんて思うかな?

  オレがバンドのためを思うがために、

  公けの場で嘘を言ったって理解できなかったの?

  オレにマジ惚れしてんなら、そんなことぐれぇ気付けよ、馬鹿!

  お前ってホント、見た目だけの馬鹿女だ!!

  自殺なんて、超迷惑だったよ!!

  やっぱ、お前って重い。 」

「 涼に迷惑を掛けてしまったことは、悪かったって思ってる。

  でも・・・私にとっては涼の方が、バンドよりも大切なの。

  それはわかって!!

  私の気持ちだって、理解してほしかったの・・・。 」

「 そういうのが重いって~の。 」

涼の心無い言葉の数々に、美生は傷付き、押し黙った。

ーー涼のことはS海で死のうとした時にも、ハッキリと気付いていたのに、

   もう一度、涼を信じて、やり直したいと思った私は馬鹿だった。

   ・・・・・もう遅い・・・・。

ボロボロと涙を流す彼女を見た涼は、冷めた表情をすると、

「 オレたち、潮時なんだよ。

  もうオレは、とっくの昔に冷めてるけど、

  お前にゾッコンな振りをして、お情けで付き合ってやったんだ。

  まっ・・・その代わり、たっぷり利用させてもらったよ

  モデルの兄貴は役立たずだったけどよぉ~!

  お前はご主人様のために、よく働く優秀なメイドだったよ。

  あ~んなことも、こ~んなことも、いろいろと世話になったしな。

  プッフフフ・・。 」

含み笑いをすると、すぐに涼は真顔になり、吐き出すように言った。

「 将来、ビッグになるオレが、今まで付き合ってやったんだ、感謝しろ!

  卒業と同時に別れるつもりだったけど、

  ちょっとばかし早くなっただけだ。

  いい機会だ・・別れようぜ・・・オレたち・・・。

  もう限界。

  オレまで重い男になりそう!!

  バンドも辞めてくんねぇ?

  キーボードの代わりなんて、いくらでもいるしよぉ。

  それと・・・絶対にガキは始末しておけよ。

  ガキなんて、オレにとっては邪魔なだけだ!!

  オレは一流のボーカリストになって、

  そんなオレに見合った一流のいい女と一緒になるんだ。

  お前は、その間の、ただのツマミ程度の女だ。

  自分の立場ってもんを弁えておくんだな。

  オレの夢の邪魔をすんな!! 」

「 嫌!!

  嫌だ!!!

  赤ちゃんを失うことだけは嫌!!

  涼には迷惑を掛けない。

  私、一人で産んで、育てる!!! 」

美生は懇願するように、涼の胸にすがりついた。

「 やめろ!!!

  うぜぇんだよ、お前は!!! 」

彼は畳の上に、美生を突き飛ばした。

それでもすがりつこうとする美生の身体を、また引き剥がし、

彼は思いっきり彼女の身体を蹴った。

「 痛いっ・・・痛いよ・・・涼・・・・!!!

  やめて!!!

  赤ちゃんが死んじゃう・・・嫌・・・嫌だ・・・。

  涼は、おかしいよ!!!

  どうして、そんなに変わってしまったの? 」

お腹を庇いながらも必死で訴える美生を睨みつけた涼は、

「 何がおかしいだよ?

  オレは何も変わっちゃいねぇ!!

  それとも・・・お前も、オレのことを ”弱い男” だって言いたいのか?

  そうだろう?・・・・そうなんだろう!!!

  なんでオレが弱い男なんだよ?

  意味わかんねぇ!!!

  オレは弱い男なんかじゃねぇ!!

  逃げるんじゃねぇ・・・こらっ! 」

恐怖を感じて、ヨロヨロしながらも、涼から逃げようと、

部屋を出ようとする美生の着ているチュニックを掴み、

涼は自分に引き寄せると、今度は力任せに彼女の頬を殴った。

その勢いで、彼女が畳みの上に転がると、

彼は歪んだ形相で、仁王立ちをし、それを見下ろした姿勢で、

「 オレは強いんだ!

  弱いなんて言うヤツは許さねぇ!! 」

そう叫びながら、何かに取り憑かれたかのように涼は再び、

美生の身体を何度も何度も力任せに蹴った。

~~~


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< なん作家のつぶやき >

美生が妊娠を告げたことで、涼の中で何かが爆発したかのように、

彼は心の中の本音を、さらけ出し、ぶつけてきました ヾ(。`Д´。)ノ

それは美生には、聞きたくなかったことばかり ・・・。

涼にとって、美生は、ただのメイドでしかなかったのでしょうかはてなマーク

最初は恋愛感情を持っていたはずだったのに、

バンドの活動が波に乗ってきたのと同時に、目先のことばかりに捉われ、

自分を徐々に失い、エゴイストの塊りとなった涼は、

確かに弱い男であり、憐れな男なのかもしれません。

次回は、美生の身体に異変が ・・・・・・・・・・・。

今日もご愛読、ありがとうございました m(_ _ )m


※ 今日の小説の本文に、乱暴な、不快な表現があったかと思われますが、

   登場人物(特に涼)の、心の動きや模写に、リアル感を付けたく、

   書いているうちに、ヒートしてしまいました。

   ご了承して頂けるものならば、頂きたく思います。

   それでも堪えるに、堪えられないものと感じさせたのなら、

   非常に申し訳なく思っています m(_ _ )m


                              なん作家 Yu