登場人物 ![]()
山下美生 ・・・ K音大3年生 ピアノ専攻
背が高い 料理上手
高校時代は軽音部のキーボード
森田柊也 ・・・ 同大学3年生 バイオリン専攻
好奇心旺盛 少年のような、あどけなさも持つ
美生とは、アンサンブルのパートナーでもある
工藤涼 ・・・ 美生と同級生であり、彼氏だった
軽音部の自分のバンドでは、ボーカル
学校内で一目置かれる存在
山下レン ・・・ 美生の父親
どちらかというと無口な部類に入る
言うべき時には、筋の通ったことを言う
山下ミオ ・・・ 美生の母親
夫のレンを支えながら、設計事務所で一緒に働く
美生と容姿が似ている
今までのお話し ![]()
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涼と2人だけで誕生日を過ごした美生は自宅マンションに戻ってきた。
ーー帰る予定の時間よりも、遅くなっちゃった。
涼と一緒だと、つい時間を忘れてしまう。
パパとママには、また何か言われそう・・・。
でも今日は素直に謝ろう。
約束を破ったのは私なんだもん・・・。
マンションのエレベーターに一人乗ると、
彼女は、涼との甘い時間を思い出し、頬を赤らめた。
ーー涼とバースディーケーキのロウソクを一緒に吹き消した。
ツーショットの写メを、いっぱい撮った。
ピザを食べながら会話が、とても弾んだ。
その会話の内容だって、いつもするバンドの話しではなくって、
どこにでもあるような、たわいもない話題が中心で、私には嬉しかった。
私は、こんな話題を涼と、いっぱいお喋りしたかったのかも・・・。
ピザやケーキを食べると、一緒にレンタルショップに行った。
”ミウッペを連れて歩いていると、
他の野郎がミウッペに見惚れているから、
一緒にいるオレは鼻が高い” って、涼は言ってた。
レンタルショップで、私が観たかった恋愛映画のDVDを借りてきて、
一緒に観た。
そのあと・・・涼は、いつもよりも、もっと優しく私を愛してくれた。
時々 ”美生、綺麗だ、愛してる” って、囁きながら・・・。
その幸せな時間が、いつもより彼女の心を穏やかにしていた。
美生は、ふと自分の右手薬指に視線を落とした。
右手薬指には、彼からプレゼントされたファッションリングが、
照明の光を受けて、輝いて見えた。
まるで先々の2人の恋愛を、形にしたかのように美生には思え、
たとえ、そのリングが安物のイミテーションでも、彼女の心を満たした。
ーー私は涼に愛されてる・・・。
ところが自宅の玄関を抜けて、リビングに入った途端、
美生の姿を目にした母親のミオの驚きに似た声と怒声が、
彼女の耳に飛び込んだ。
「 美生!!
友達と誕生パーティーをやるって言って、出掛けたのはいいけど、
今、何時だと思ってるの?
11時過ぎなんて、高校生の女の子が帰って来るような時間じゃないでしょ?
友達と・・・だなんて嘘でしょ?
本当は男の子と一緒だったんじゃない?
美生の薬指に付けている、その指輪・・・お母さん、初めて見た。 」
ミオの言葉に、美生は無言で右手の薬指を、左手の平で隠した。
「 それに何?
その髪型や格好は?
肌を露出し過ぎるようなもの、着るのはやめなさい!!
お化粧までしてるね。
夏休みに入ったからって、あんまりにも派手過ぎなんじゃない?
もっと歳相応なお洒落があるでしょ!!
今度、仕事が休みの日、一緒に美容院に行こう。
お母さん、美生の、そんな姿なんか見たくない!! 」
ミオの傍では、父親のレンが黙って美生を見ている。
彼は美生と目が合っても、微塵も逸らすことなく、
彼女を怖い目でジッと見据えていた。
2人の様子に、素直に謝ろうと思っていた美生の思いは大きな音を立てて崩れた。
「 なによ・・・パパも、ママも!!!
お兄ちゃんの時は甘かったクセに!
私が、どこで、誰と一緒だって、パパやママには関係ないでしょ?
女の子だからという理由で、なんで拘束されなくちゃいけないの?
それに髪型や着るものに、いちいち文句つけないでよ!!
もう私だって子供じゃないんだよ。
それともパパとママの思い通りになる人形になって、
ジッとしていれば気が済むっていうの? 」
「 確かに礼司の時は甘かったかもしれない。
でも礼司は小さい頃から、ちゃんと自分の管理が出来ていた子だったから、
私たちは黙って見守る形をとっていたの。
お兄ちゃんと比べると、美生・・・あなたは女の子だし、
どこか危なっかしく見えるの。
だから私も、お父さんも、美生が心配でならないの!
この気持ちは、わかってほしい・・・。 」
懇願混じりにミオが言うと、
「 わかった・・・よ~くわかった。
ママは、いっつもお兄ちゃんと私を比べていたってこと・・・。
何でも出来る優秀なお兄ちゃんは心配がいらなくって可愛いけど、
出来の悪い私は心配だって言うよりも、信用できないってことでしょ?
言わせてもらうけど、私が、こんな子になったのは、
パパとママの育て方が悪かったから・・・。
いつもママはお兄ちゃんばかりにエコヒイキして、
私のことは二の次だったでしょ。
パパだって同じだよ!
仕事ばかりのせいにして、あまり私とは関わってくれなかった・・・。
たまの休みに私と一緒にショッピングに行く事すら、パパは渋々だった。
でもお兄ちゃんには違ってた。
お兄ちゃんが高校生だった時、パパとお兄ちゃんは、2人だけで、
ママの実家に出掛けたことがあったよね?
その時の出掛けた理由が、どうであっても、
どんなに私が寂しかったか、わかる?
パパやママにとっては、お兄ちゃんだけ特別なんだよ!
もしも・・・もしも・・お兄ちゃんみたいに優秀になったら、
パパやママも、私のことをちゃんと見てくれるかなと思って、
私は、いろんなことを努力してきた。
それでも・・・あまり変わらなかった。
ねぇ・・・今まで私が、仕事で忙しくしているパパとママに、
一度でも我が儘を言った事があった?
ずっと我慢していたんだよ。
パパとママは仕事で大変なんだって、自分に言い聞かせて、
理解している振りをしてきたんだよ。
本当は寂しくって、孤独で、自分が押し潰されそうな思いをしてた。
私・・・パパとママの子に生まれなければよかった!!
私なんか、いなくってもよかったんでしょ?
子供はお兄ちゃんだけで充分なんでしょ? 」
言い過ぎだと感じながらも、今まで心の中に蓄積されたものが、
言葉になって吐き出され始めたら、自分では制御できないくらいに、
とめどなく美生の口から、どんどん溢れ出ていた。
泣くのを堪えながら、怒気のこもった声で、彼女が言い放つと同時に、
今まで黙っていたレンが勢いよく立ち上がり、
彼女の傍に行くと、その頬を平手打ちした。
パシリッ・・・・・・。
その凄まじい音に、一瞬、リビング内の空気が固まったかのようになった。
美生の目からは、涙が後から後から流れた。
「 今まで美生との関わりを、あまり持てなかった事は、悪かったと思う。
今更、言い訳もできない。
でも、いつ?美生がいない方がいいと言った?
礼司のことだけ、特別扱いした覚えもない。
父さんと母さんが、お前のことを、どれだけ心配し大切に思っているのか、
わからないのか!!! 」
彼女を叩いたレンの手と声は震え、目には薄っすらと涙が浮かんでいた。
「 わからないよ!!! 」
そのまま頬を押さえると、美生は泣きながら自分の部屋に駆け込み、鍵を掛けた。
~~~
そこまで話した美生の声が震えているのに気付き、柊也は優しく言葉を掛けた。
「 そうか・・・そんなことがあったんだね。
美生は、さっきも水子地蔵の前で自分の気持ちを話してくれたけど、
今は、お父さんとお母さんのことを理解できていると思うし、
その頃の美生はまだ子供だったんだ。 」
「 ・・・うん・・そうかもしれない・・・。 」
美生は悲しそうに目を伏せると、
「 パパが私を引っ叩いたのは、あの時が初めてだったの。
叩いた後のパパの手や声が、すごく震えていた。
きっと心の中で泣いていたんじゃないかって思う。
それに・・・ママだって・・・すごく辛そうだった。
その時の私の涙の理由は、頬を打たれた痛みと悔しさ、
自分への嫌悪感はもちろんのこと、
パパとママへの嫌悪感に、2人の心の痛みが伝わってくる感覚が、
混ざっていたと思う。
でも私は素直になれなかったから、それには気付かない振りをして、
もっと荒れて、パパとママを苦しめた・・・。 」
「 美生・・・。 」
柊也が傍に寄ると、美生は彼の胸を借りて、号泣したのだった。
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< なん作家のつぶやき >
お互いを大切に感じる思いは、同じはずなのに、
激しく衝突し合った、美生と両親のレンとミオ。
美生にも、両親の思いが通じているはずなのに、
若さ故に、意固地になってしまいましたね (x_x;)
でも 「 雨降って 地固まる 」 ように、
その波乱も、無くてはならないものなのかもしれません。
雨が降るからこそ、晴れた日が、一層に気分爽快になるように、
美生の心も、晴れやかになる時が、きっと来るでしょう ・・・。
たまには、いいこと言うでしょ
なん作家も (≧▽≦) ![]()
次回は、翌朝になってから、美生は ・・・・・・・・・・・・ ![]()
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今日もご愛読、ありがとうです m(_ _ )m
なん作家 Yu