登場人物 ![]()
山下美生 ・・・ K音大3年生 ピアノ専攻
高校時代は軽音部のキーボードを担当
背が高く、スタイルがいい
森田柊也 ・・・ 同大学3年生 バイオリン専攻
裏表のない性格
意外と手先が器用
工藤涼 ・・・ 美生の高校時代の同級生であり、彼氏だった
学校内で評判の軽音部のボーカル
堂々としている風格ではあるが
意外とシャイな面も持つ
今までのお話し ![]()
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T高校2年生の秋、山下美生の学校生活は華やぎ始めていた。
今まで憧れていた男子・工藤涼が所属する軽音部に途中入部してからというもの、
美生が彼と恋人同士の関係になることに、時間が掛かることはなかったが、
バンドでは花形、長身な上に甘いルックスの持ち主の涼は、
女の子たちからモテモテなせいか、美生にとって彼と付き合うことは、
最初は苦難だった。
涼を好きな女の子たちは、美生が涼のカノジョになったことを、
決して面白くは思わない。
当然、美生は彼女たちからの嫉妬と意地悪という名の攻撃を受けた。
そのような状況の中、涼は美生のことを庇い続け、
彼の気持ちが本気だと知ると、美生に対する彼女たちの攻撃は次第に減っていき、
涼と美生は校内で公認のカップルになった。
それは周りの生徒たちばかりでなく、教師たちからまでも、
”美男美女の大物カップル” だと、冷やかされるほどに、
2人の関係は、T高校での大きな名物そのものになっていった。
そんな日々の中、放課後、部活が終った後の部室で、
美生と2人っきりになると、涼は、その時を待っていたかのように、彼女を誘った。
「 ミウッペ!
今日から、Mドナルドで、
期間限定のバーガーメニューが出ているらしいからさぁ。
これから行かねぇ? 」
「 うん!いいよ!!
もっちろん!
涼、お腹がペコペコなんじゃないかなぁ・・・とか、
ハンバーガーが食べたいんじゃないかなぁって、
今、想像していたところだったの。
案の定、誘ってきたね! 」
「 そういうのって、以心伝心っていうのかなぁ。
なんかオレ、すっごく照れる。
ミウッペとオレって、深くつながってるんだなって・・・。 」
涼は照れて、嬉しそうに頬を緩ませると、急に真面目な顔をし、
「 あっ・・・オレから誘っておいて、こんなこと言うのもなんだけど、
太らない程度に食べろよ!
太ったミウッペなんか、オレ、想像したくねぇ。 」
「 わかってる!
もちろん気をつけてるもん! 」
「 けど、あんまし極端に食べないのも、身体に悪いかぁ。
元気のないミウッペは嫌だし・・・。
で・・・結局、体型維持は、食べる質ってとこかな。
そこまで言ったら話しは早い!
ミウッペの分のポテトを半分、オレが引き受ける!!
ポテトって、油っぽいだろう?
その代わり、サラダだったら、沢山、食べていいぞ!!
ミウッペ、サラダが大好物だろ? 」
涼が悪戯っぽく笑うと、
「 あ~初めっから、ポテト狙いだったんでしょ? 」
「 ギクッ・・・バレたかぁ~! 」
少しだけ長めのストレートの髪を、派手な茶髪に染めている涼は、
一見、ワイルド系で、アウトロー気取りな男の子に見えるが、
本来、シャイな面も持っている。
だからなのか、人前では美生とベタベタしたりしない。
むしろクールであった。
でも美生と2人っきりの時だけ、涼はお茶目ぶりを見せる。
そんな彼を美生は自分の父親のレンと重ねていた。
ーーパパとママの恋愛って、こんな感じだったのかな・・・。
女の子が好きになる男の子って、自分の父親に似た人だって、
聞いた事はあったけど、本当なのかも・・・。
涼はパパに、部分的に性質が似ている気がする。
でも・・・涼のことは、超好きなはずなのに、
パパなんかに、どこかしら似ていることは、正直に嫌・・・。
涼も将来、あんな説教オヤジになっちゃうのかな?
そんなの絶対に嫌!!!
そうは思ってはいても美生は、大恋愛して結ばれた両親のレンとミオの恋愛を、
自分たちの恋愛に重ね合わせた。
彼女は両親の恋愛だけには憧れを持っていたのだったが、
2人に対してはというと、うんざりしている気持ちの方が強かった。
それは彼女が中学3年生ぐらいから始まった遅めの反抗期だった。
父親のレンとは、用がある時以外は、いっさい口を聞こうともしない。
母親のミオとは、ちょっとした会話はするが、
美生にはミオの言っていることが疎ましくもなっていったし、
同性の親子だということもあり、気兼ねのないため、
お互いにハッキリとしたモノの言い方をし過ぎて、
喧嘩に発展してしまうことが多くなった。
そのせいか以前は、ほぼ毎日手伝っていた夕飯の食事作りの手伝いも、
この頃はあまりしなくなっていた。
ーー私は2人の恋愛には、悔しいほどに憧れているけど、
私に対する、2人の態度は嫌!!
パパは腫れ物に触るように、私のことを見る。
普段は仕事のせいにして、私との関わりを避けているクセして、
時々、一緒に夕飯を食べている時に、晩酌しているお酒の匂いを、
プンプンさせながら、最もらしい綺麗ごとなんか言って、
しまいには、それが説教染みたものに変わっていく。
私が聞いている振りをして頷いていると、
自分の思い通りにできたと勘違いして、
いい父親になっているつもりになるのか、自己満に浸っている。
バッカじゃない?って思う。
パパの言ってることなんて、つまんないから、右から左なのに・・・。
ママは、すごく口うるさくなった。
パパよりも、ママの方がウザイ!!!
お兄ちゃんが高校生の時だって、あんなに口うるさくはなかったのに・・・。
ママは、私がやる全てのことに、いちいち口を挟んでくる。
特に着るものに対しては、すごくムカついてる。
私が新しい洋服を着ているのを見ると、
ママはすぐにケチをつける言い方をして、
”背伸びをせず、もっと歳相応のものを着なさい” とか、
”肌を露出し過ぎじゃない?” とか、
”美生らしさが出るものの方がいいんだよ” とか・・・。
挙句の果てには、私好みではない洋服を、勝手に買ってきて、
おしつけようとする。
私が拒否って、着ないと断言すると、すごく怒る。
あんな趣味の悪いダサい洋服、私が喜んで着るとでも思っているの?
ママのファッションの感覚を疑う。
うううん・・・きっとママは私に綺麗になってほしくないんだ。
年老いていく自分に比べて、私が女っぽくなっていくことに、
ママは嫉妬してるんだ。
早く大人になって、あんな家、出て行きたい!
高校生になってからの美生の頭の中は、そればかりだった。
「 ミウッペ、どうした? 」
心配そうに顔を覗き込む涼に、美生は笑顔を作って言った。
「 パパとママのことを考えてたら、ウザイって思って・・・。
早く大人になりたいなって思ったの。 」
「 いいじゃん!!
気兼ねなく、文句が言える肉親がいることって・・・。 」
「 あっ・・・涼、ごめんね。
こんなこと言っちゃって。
涼から見たら、私って贅沢だよね。
涼の気持ち、考えなかった・・・ごめんね。 」
涼の両親は、小学3年生だった彼を残して自殺していた。
理由は借金苦からだった。
彼は父親の兄である伯父夫婦に引き取られたが、高校生になるのと同時に、
家賃が安めのアパートを借りてもらい、一人で暮らしていた。
「 いいよ、そんなに気を遣わなくっても・・・。
両親のいるミウッペには、ミウッペにしかわからない悩みがあるんだし。 」
そう言って、彼は笑ってみせると、
「 両親に自殺されて、親戚に引き取られてからのオレは、
嫌われたり、見捨てられたりするのが怖くって、
いつも ”いい子” にしていなくっちゃって思ってた。
確かに ”いい子” にしていることで、
オレを引き取ってくれた伯父さんたちには可愛がってもらえたけど、
それでも・・オレ、寂しかった。
どんな理由があったとしても、オレは結局、両親に捨てられたんだ。
だから強くならなければ、その寂しさに、
自分が押し流されてしまいそうな気がしてた。
”オレは強いんだ” って、自分に言い聞かせて、
人に弱さを絶対に見せないようにしてた。
そうしなければ、オレ・・・生きていけなかったから・・・。 」
「 涼・・・。 」
「 オレ・・・時々思うんだけど、
ミウッペと一緒にいると、すごくホッとして、
素のオレになれているって気がするんだ。
だから誰にも言えなかった、両親のことを、ミウッペには話せたのかも・・・。
ミウッペは、今まで付き合ってきた女の子たちとは違う。
もしも高校を卒業しても、まだ付き合ってたら、
オレんとこに来いよ。 」
「 うん・・・。 」
「 ミウッペ・・・大好きだよ。 」
2人は、しばらく見つめ合うと、
美生が目を閉じたのが先か、涼の顔が近付いてきたのが先か、
わからないくらいに、自然に唇を重ね合わせていた。
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美生の話しを聞いていた柊也は、
「 ”強くならなければ、寂しさに自分が押し流されてしまいそう・・・” か・・・。
アイツの・・・涼の考える ”強さ” の裏には、
そんな理由が隠されていたんだね・・・。 」
ーー柊也・・・。
涼のことを思い、深く溜息を吐いた、優しい彼を、
美生は複雑な思いで見つめていた。
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< なん作家のつぶやき >
交際が始まってから、とても楽しそうな美生と涼。
意外にも涼には、両親の自殺という、辛い過去がありました (ノ_-。)
そこに涼という男の子を形成していく原点があったように思います。
「 いい子 」 を演じること。
「 自分は強いんだ 」 と思い込むこと。
そうしていなければ、周りから嫌われ、見捨てられてしまうんじゃないかという、
恐怖に似た思い ・・・。
そんな思いを、美生に告げた涼こそ、本来の涼だと思います。
「 いい子 」 「 強い自分 」 という、鎧を身にまとった涼は、
その鎧を、ずっと身に着けていられるのか![]()
次回は、月日が経ち、高校3年生の夏を迎えた、美生と涼を書いています。
今日もご愛読してもらって、ありがとうございました m(_ _ )m
なん作家 Yu