ダッフィー 登場人物 ダッフィー


ミッキー 山下美生 ・・・ K音大3年生 ピアノ専攻

             背が高く スタイルが良い 童顔

             努力家 花が好き 料理上手


ミッキー 森田柊也 ・・・ 同大学3年生 バイオリン専攻

             4歳の頃、母親・響子を亡くす

             祖父母に育てられる


ミッキー 中垣(立石)忠雄 ・・・ 柊也の父親

                 昔、プロのピアニスト兼K音大ピアノ講師

                 コーヒー好き



ミッキー 森田響子 ・・・ 柊也の母親

             当時、K音大の学生

             子供っぽさと大人っぽい安心感を持つ


ミッキー 立石ソヨ子 ・・・ 忠雄の元・妻

              K音大教授・立石一郎の一人娘




デールダッフィー 今までのお話し デールダッフィー


「プロローグ」


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中垣が、妻・ソヨ子には男がいたことや悪事のことを話すと、

「 その9年前の悪事のことを、あれから中垣さんは調べたんですね? 」

柊也が身を乗り出して聞いてきた。

「 あぁ・・・調べたよ。

  ソヨ子の悪事については、いろんなことを想定して、広い範囲で調べた。

  それにボクは、その当時のソヨ子の年齢を考え、或る推測を立てた。

  父親の立石も絡んでいることといったら・・・・と考えたら、

  その或る推測に辿り着いたんだ。

  でも何も出てこなかった・・・。

  きっと父親の立石が、何も証拠が残らないようにと、

  揉み消したんだと思った。 」

中垣は肩を落とすと更に、

「 ボクと響子とのことは、ソヨ子には薄々感づかれているとわかったし、

  バレてしまうのも、時間の問題・・・。

  だからボクは覚悟をした上で、大きな賭けをしようと決めた。

  ボクは、その時がくるのを、じっと待っていた・・・。 」

中垣は、あれから・・・のことを話し始めた。

~~~

それは・・・・・・。

忠雄と響子が、お互いの気持ちを知り、恋人として付き合い始めた2ヶ月後に、

ソヨ子に男がいたことがわかった上、

彼女には何かしらな悪事があることを知ってから、

更に2ヶ月が経過した年明けの3月の末。

忠雄が自宅の居間のソファーに座り、新聞を読んでいると、

妻のソヨ子が彼の隣に座り、詰問する口調で問いただしてきた。

「 忠雄・・・。

  忠雄は何か、私に隠していることはない? 」

ーーとうとう、この日がきたか・・・。

忠雄は心の中で身構えると、平静を装って、

「 どうしたんだ?

  ボクがソヨ子に隠していることなんて、何もない。

  それはソヨ子が常日頃、

  ボクのことを厳重にチェックしてくれている通りだ・・・。 」

彼が皮肉混じりに言葉を返すと、

バンッ・・・・・・。

ソファーテーブルを激しく叩いたソヨ子は目を血走らせ、

「 なら・・・これは何よ? 」

ヒステリックに叫ぶと数枚の写真をバラ撒いた。

そのバラ撒かれた写真を見た途端、忠雄は凍りついた。

それは忠雄と響子が、ただならぬ関係だと一目でわかる写真ばかりだった。

しかも響子が一人で住んでいるアパートの部屋から出てくる忠雄も写っている。

「 この女はK音大の2年生・森田響子、20歳。

  あなたの受け持ちの学生ではないけれど、

  カフェ・クレッシェンドとかいう陳腐な名前の喫茶店で、

  ウエイトレス兼ピアノを弾く女。

  あなたが、その陳腐な喫茶店に時々、行くことはわかっていたわ。

  でもあなたにも自由になれる場所があってもいいかなって、

  私にしては珍しく仏心を出して、泳がせてはいたけど、

  忠雄は、この女と深い関係になって、

  影で ”楽しいこと” してたのね。

  ついでに・・・忠雄も知っているとは思うけど、

  この女の家庭や素性を明かすと、

  両親は楽器を扱っている小さな会社を経営しているわ。

  この女は、その一人娘であり、一応は社長令嬢とも言うのかしら?

  忠雄好みの貞淑っぽい女・・・。

  容姿は美形であることは認めるけど、私よりは下ね。

  こんな女、私から見たら、下品な泥棒猫にしか見えないわ。

  ここのところ、ずっと忠雄の様子がおかしいって思っていたの。

  あなたは平静を装っているつもりでも、どこか違って見えた。

  女の直感っていうのかしら?

  あなたのことでお金を掛けることは嫌だったけど、

  思い切って興信所で調べさせたの。

  証拠の写真だってあるし、出任せは言えないのよ!! 」

更に勝ち誇ったようにソヨ子は叫んだ後、

煙草に火を点け、大きく吸い込み、

小馬鹿にしたように煙を忠雄に向けて吐くと、急に優しい声になり、

「 忠雄・・・。

  今なら許してあげる。

  どうせ、こんな20歳の女となんて、遊びのつもりだったのよね?

  忠雄は洋食に飽きて、ただ気まぐれに和食が食べたくなっただけ・・・。

  和食を食べ飽きたら、また洋食が恋しくなる。

  忠雄は元々、洋食の方が好きな人だし・・・フフフフフッ。 」

煙草をふかしながら、忠雄、響子、自分の三角関係を食べ物の嗜好に例えて、

一人笑うソヨ子。

その様子を見た忠雄は、自分のズボンのポケットに手を入れて俯いた後、

「 ・・・別れよう。 」

声を振り絞って、別れを告げた。

「 あなた、本気なの?

  忠雄は、この小娘に惑わされているだけ・・・。

  この女は、本当は悪い女なのよ。

  自分が音楽界に、のし上がるために、

  忠雄の地位を利用しようとしているだけ!!

  早く目を覚ましなさいよ! 」

「 目を覚まさなければならないのは、ソヨ子の方だ。

  ソヨ子は過去に恋人から裏切られたことを 

  ”忘れられない” のではなく、”忘れたくない” んだ。

  キミは、その恋人への憎しみを、都合よくボクにぶつけているだけだ。

  そうだろう?

  図星だろう? 」

意外な忠雄の反撃に、ソヨ子が何も言えずにいると、

「 ボクは響子を愛している。

  響子は悪い女なんかじゃない!!

  ソヨ子にとっては、20歳の泥棒猫に過ぎなくっても、

  ボクにとっての彼女は、出来たいい女だ。 」

ソヨ子は真剣な表情をする忠雄を鼻で笑い、

写真の中の響子の顔に煙草を押し付けて燃やすと、灰皿に投げ込み、

「 ・・・仕方ないわね。

  もう少しだけ、忠雄を虐めて楽しんでから・・・と思っていたけど、

  別れてあげる。

  その代わり、あなたに不倫をされた妻として、慰謝料は沢山頂くわ。

  それに私は父に、”あなたの女遊び” のことを知らせるわ。

  そうなったらあなたもプロのピアニストとしての生命が終わりになることは、

  承知しているはずでしょ?

  私の父は、音楽界では恐れられている人間よ。

  マスコミの上層とも強く繋がっている。

  いくらでも事実でないことまで、でっちあげて、

  忠雄なんか音楽界どころか社会からも抹殺できるのよ!! 」

「 ボクにとって、そんなこと・・・もうどうでもいい。

  ボクが守るべきものは、そんなものじゃない。

  響子に出会って気付いたよ。

  それに・・・ボクには切り札がある・・・。

  もしも・・・その切り札を、あらゆる手段を経て社会にボクが告発したら、

  困るのはソヨ子と立石教授だ。

  ボクには法律家の友人がいる。 」

忠雄が ”切り札” として出したのは、

もちろんソヨ子の9年前の悪事のこと・・・。

だがソヨ子の9年前の悪事の内容を知らない忠雄は、

知っているという振りをすることで、賭けに出た。

「 切り札って?

  まさか・・・?! 」

ソヨ子の顔色が、みるみるうちに変わっていくのを見た忠雄は、

「 そう・・・その9年前の、あのこと・・・だよ。 」

「 あんなこと、あんなこと、昔の話しじゃない?

  もう時効も同然よ。

  今更、何よ!!

  忠雄は私が9年前、

  K音大に不正入学していた証拠を掴んでいるっていうの?

  あれは父が証拠を、綺麗に揉み消したはずよ!!

  それに私・・・、あの大学はすぐに辞めちゃったし・・・。 」

「 やっぱりボクの推測通りだったのか・・・。

  ソヨ子・・・とうとう尻尾を出したね。 」

忠雄は再び、自分のズボンのポケットに手を入れると、

「 証拠は、ここだ。 」

小型のボイスレコーダーを出した。

「 さっきからのソヨ子との会話が、ここに録音されている。

  ボクを社会から抹殺することに対しての汚い手口や、

  ソヨ子の不正入学のこと・・・。

  バッチリ、録音させてもらった。

  ソヨ子・・・もうボクたちは夫婦として、やっていけない。

  別れよう。

  それに・・・キミには男がいるね?

  自分のことは棚に上げ、ボクと響子のことを調べて、あること、ないことを

  父親の手を借りて、世間にでっち上げ、ボクを社会的に抹殺する上に、

  ソヨ子は表向きは ”悲劇の妻” を演じ、

  ボクと別れた後、多額の慰謝料を請求し、

  その ”コウ” という男と一緒になろうと考えてるんだろう? 」

「 どうしてコウのことを知っているの?

  いつからよ?

  コウは、あなたのことを騙し切れていると、

  言っていたはずなのに・・・。 」

訳のわからないことを呟き、取り乱すソヨ子に対し、

忠雄はその理由には答えずに、

「 ボクのことを責められるのか?

  お互い様じゃないか? 

  ボクは今から、ここを出て行く。

  もちろん離婚はソヨ子も同意の上だと考えている。

  それでいいんだよね? 」

「 待って・・・忠雄!!

  もちろん離婚の条件は呑むわ。

  もう慰謝料だって請求することは考えない。

  だから9年前のことだけは、黙っていて・・・お願い!!

  そのボイスレコーダーを、私に渡して!! 」

ソヨ子の声も虚しく、無言のまま忠雄は既にまとめてあった荷物を、

寝室の洋服ダンスの奥から出すと、

「 告発をするつもりはない・・・。

  ボクはただ・・自由になりたかっただけ・・・。

  でも、このボイスレコーダーは、”もしもの時の保険” として、

  ボクが持っている。

  ソヨ子・・・短い間だったけど、こんな生活ができていたのも、

  ソヨ子や立石教授のお陰だったのかもしれない。

  今までありがとう・・・。

  でも、もう、こんな優雅な生活は望んではいない。

  ボクには安らぎを与えてくれる響子がいるだけで充分だ。 」

そう言い残すと、忠雄は立石邸を出て行った。

~~~

そこまで話し終えると、中垣は既に冷めてしまったコーヒーを、全部飲み干し、

「 ソヨ子に対して、今まで自分の心に溜まっていたものを吐き出した時、

  とてもスッキリしたよ。

  ボクはソヨ子に9年前の悪事があるということを知ってから、

  常に小型ボイスレコーダーを肌身離さずに持参していた。

  ボクと響子とのことがバレた時に、

  ソヨ子が攻撃をしてくることを待ちながら・・・。

  ボクの仕掛けたカマに、ソヨ子はうまく掛かって、

  自分の罪を告白した・・・。

  慰謝料も無しに離婚を承諾させた。

  ボクには、それだけで充分だった。

  だから最初からソヨ子の罪を、本当に告発する気持ちはなかった。 」

「 それでも・・・事件は起こってしまった・・・。 」

悲痛な表情で呟いた柊也を見て、美生の目にも涙が、じんわりと浮かんでいた。


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