ダッフィー 登場人物 ダッフィー


ミッキー 山下美生 ・・・ K音大3年生 ピアノ専攻

             長身の童顔

             料理上手 花が好き 努力家


ミッキー 森田柊也 ・・・ 同大学3年生 バイオリン専攻

             整った顔立ち 

             軽く見えるが、内側には熱いものを持っている


ミッキー 中垣(立石)忠雄 ・・・ 柊也の父親

                 昔、如月柊也という名でプロのピアニスト兼

                 K音大のピアノの講師を勤める

                 基本、物静か


ミッキー 森田響子 ・・・ 柊也の母親

             当時、20歳のK音大2年生

             天真爛漫 大人っぽさと子供っぽさが同居する


ミッキー マスター ・・・ カフェ・クレッシェンドを経営する

            話し好き 大らか 独身

            コーヒーを淹れること、ラテアートが上手


ミッキー 中山康史 ・・・ 忠雄と同期、同年齢のピアノ講師

             大らか ユーモラスな面を持つ


ミッキー 立石ソヨ子 ・・・ 忠雄の元妻

              夫の忠雄を束縛する

              独身時代に恋人に裏切られた



デールダッフィー 今まで の お話し デールダッフィー


「プロローグ」


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「 あの日、初めてカフェ・クレッシェンドに来店してから、

  ボクが再び来店したのは、その2週間後だった。

  妻のソヨ子に怪しまれることで、

  せっかくの ”自分の居場所” がバレてしまうのが嫌だったから・・・。

  それほどにボクには ”ここ” が大切な場所になった。

  その来店しなかった2週間の間に、

  音大のキャンパスで響子とすれ違うことも何度かあったけど、

  すれ違うたびに、ボクを見て彼女は、

  はにかんだ笑顔で笑い掛け、頭を下げるだけで、

  早く店に来て欲しいなどという、催促を一切しなかった。

  そんな響子を見ていて、可愛くって・・・いじらしくって・・・。

  最初はあつかましい女だなんて思っていた自分が、恥ずかしくなったよ。

  響子という女の子に、ボクは興味が湧いて、

  キャンパスで、偶然に顔を会わすことが、だんだん楽しみになっていった。

  同僚講師の中山さんとの会話でも ”ここ” の話題を出してみては、

  響子のことを遠回しに聞いていた。 」

中垣は、その頃に戻ったかのように瞳を輝かせた。

「 そうだったんですか・・・。

  無理なのはわかっているけど、

  オレも、その頃の母さんに会ってみたくなりました。

  ”森田響子” という女の子に・・・。 」

そう呟く柊也を見ていて、美生は密かに響子に対して嫉妬心を抱いたが、

「 2週間後に来店した時には、

  響子さんの好きな ”夜想曲” を弾いてあげたんですね? 」

彼女は自分の嫉妬心を隠すように、笑顔で中垣に訊ねた。

「 あぁ・・・約束をしていたからね! 」

中垣は遠くを見るように微笑み、グランドピアノの方に目を向けると、

「 あそこのグランドピアノで、ボクが約束どおりに ”夜想曲” を弾くと、

  響子はカウンター席の近くに姿勢を正して立ち、ボクの方に目を向け、

  集中して聴こうという姿勢をとってくれた。

  その真剣な眼差しが、今でも忘れられないよ。

  最後まで弾き終えると、響子は目を潤ませながら、

  ”こんな完璧で人間味のあるピアノ演奏は、初めてでした。

   勇気を出して、お願いしてみてよかった!”

  響子の言っていることは、決してお世辞ではなかった。

  本心から言っていると感じられて、

  ボク自身も心を打たれ、内心、嬉しかったよ。

  同時に響子のピアノに対しての、熱意も感じた。

  だからボクは、ここに時々、来店した時には、

  将来のある彼女のために、少しでも手助けしたくって、

  マスターにもお願いをして、店に客足の無い時を見計らっては、

  ピアノのアドバイスをしていたよ。

  響子は呑み込みが早かった。

  ボクが教えたことを、どんどん吸収して、自分のモノにしていった。

  今の美生ちゃんみたいに、とても教えがいがあったよ。 」

中垣は美生を見て微笑み頷くと、

「 ここで何回か響子にピアノを教えているうちに、

  いつの間にか響子は、ボクのことを ”立石講師” ではなく、

  ”先生” と呼ぶようになった。

  目を輝かせながら、真っ直ぐにボクを見て 

  ”先生” と呼ぶ響子が可愛くって・・・。

  ボクも響子のことを、この場所でだけは ”響子ちゃん” と呼んだ。

  そのうち響子に対して、特別な感情が、ボクには芽生えていた。

  でも・・・あの当時、20歳だった響子から見ると、

  29歳だったボクは ”おじさん” だ。

  その上、ボクは既婚者・・・。

  ボクだって、一応、自分の身を弁えた。

  20歳の女の子に対して、こんな感情を抱いてはいけないと、

  何度も自分を戒めた。

  この感情は、ずっと胸の中にしまっておくつもりだった。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・。

  あとは、さっき柊也くんから読ませてもらった響子の手紙の通りだ。 」

そのあと中垣は響子の手紙の内容を、なぞるように話し出した。

~~~

忠雄がカフェ・クレッシェンドに、

初めて来店してから、2ヶ月が経とうとしていた、11月末。

すっかりマスターとも打ち解けて、店の馴染みの顔になった忠雄は、

夕方、いつものカウンター席で、

マスターの淹れてくれたコーヒーを飲んでいた。

その日は客足が少なく、先程まで長居していた常連客も帰っていき、

いつもの中年のウエイトレスの女性も休んでいたので、

店内には、忠雄と響子とマスターの3人だけになった。

「 響子ちゃん・・・。

  今日はもう店を閉めよう。

  実はね・・・昼頃から、ちょっと具合が悪いんだ。

  風邪をひいたんだな・・・たぶん・・・ちょっと熱っぽい。 」

マスターの顔色は、確かにあまり良くない。

「 いいですよ。

  ここんところ忙しかったし、

  マスターも疲れから具合が悪くなってしまったんでしょうね。

  今日はもう休んでください。

  あとの片付けは、私がやっておきますから!

  あっ、今、臨時休業の札をドアに掛けてきますね。

  看板の照明も消します。 」

「 申し訳ない・・・。

  今日は甘えて、そうさせてもらうよ。

  出る時は戸締り、頼んだよ。 」

「 はい! 」

快く響子が答え、ドアに ”臨時休業” の札を掛けに行ってしまうと、

マスターは忠雄に向き直り、

「 立石さんも、せっかく来てくれたのに、すまないね・・・。

  あっ・・・店はもう臨時で閉めるから、ピアノを思い存分に使ってもいい。

  キミは、いつも限られた時間内で、響子ちゃんに教えていたし・・・。

  でも今日は時間があるから、ゆっくり教えられる。 」

「 ありがとうございます。

  マスターも、今日はゆっくり休んでください。

  マスターは話し好きで、いつもはよく喋るのに、

  今日は口数が少なかったから、

  体調でも悪いんじゃないかって心配していたんです。

  なんだか、あまり喋らないマスターは、

  マスターではないような気がして・・・ 」

忠雄も心配そうに言うと、

「 あははっ・・・。

  立石さんも言うようになったね!

  ここに馴染んでくれた証拠だね。

  嬉しいよ・・・ありがとう。 」

マスターが帰っていった後、忠雄と響子だけが、店内に残された。

~~~





そこまで話すと中垣は溜息を吐き、

「 あの日、マスターが帰ってしまい、2人っきりになった時、

  響子はボクに自分の気持ちを告げてくれたんだ。

  まさか響子も、ボクと同じ気持ちだったなんて・・・。 」

中垣は、そう呟くと、その時のことを頭の中で再現させているのか、

しばらく黙り込んでいた。


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